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「災害食」舌鼓打つおいしさ 非常食との違いは?

キーワードは「条件緩和」

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NIKKEI STYLE

今年は熊本地震や鳥取地震、台風も立て続けに襲来した。最近では多くの家庭で防災グッズを常備しているのではないだろうか。そんな中で、備蓄食品の進化がめざましい。乾パンに代表されるように「食べられれば十分」というのは昔の話で、今は「舌鼓を打つ」レベル。窮屈な避難所暮らしだったとしても、少しは表情が緩みそう。それにしても、なぜここまでうまくなったのか。実食しつつ調べてみると、意外な理由があった。キーワードは「条件緩和」。

雰囲気は小料理店

今夏、東京ビッグサイトで「日本災害食大賞」が開かれた。備蓄食品を「非常食」や「保存食」ではなく「災害食」と表現した。保存がきくレトルト食品など92製品がエントリーされ「美味しさ部門」「機能性部門」「新製品部門」の3部門で選考された。

まずは「美味しさ部門」で最高賞のグランプリをとった「IZAMESHI Deli 名古屋コーチン入りつくねと野菜の和風煮」を食べてみた。レトルト包装のデザインからして、すでにこれまでの保存食とは比べものにならないハイセンス。

手に取ると、レトルト包装の底面が広がって自立するように工夫されていることに気づく。お皿がなくても食べられるように、レトルト包装された多くの災害食が、自立できるように工夫されている。とはいうものの、やはりレトルト包装のままだと味気ないので、お皿に移して実食した。

温めなくても食べられる。つくねやごぼう、こんにゃくといった具材にニンジンで彩りのバランスをとる。器がもっと上品なら、見た目はもはや小料理店。

名古屋コーチンのつくねを口に入れてかんでみると、ふわっとした食感とともに、だしがにじみ出る。薄めの上品な味わい。ニンジンにも、しっかりとだしが染み込んでいる。全体的に食材が柔らかいと感じながら味わっていると、ゴボウのしっかりとした歯応えにうなる。あっという間に平らげてしまった。

販売する杉田エース(東京・墨田)は建築関連資材の卸会社。「資材の卸売りをしていて、扱っていた非常食が売れていたから、自社でも手がけようと考えた」と同社担当者。「せっかくならおいしくて、日本人になじみがあるようなおかずをつくってみよう」と構想から開発まで1年という短期間で作り上げてしまったという。

次に「美味しさ部門」で3位になったハウス食品の「温めずにおいしいカレー」。以前から、夏用として温めなくても食べられるカレーを扱っていたが、賞味期限を従来の1年から3年にした。「原材料の見直しや配合で、延ばすことができた」と同社。

ご飯にかけると、意外と水っぽい印象。ただ、味はカレーそのもの。スパイスがきき、ほどよい辛さ。あっさりとしていて食べやすく、スプーンがとまらない。冷めていてもカレーがおいしく食べられることを知った。

最後に2位だった食肉加工品製造の沖縄ホーメル(沖縄県中城村)の「軟骨ソーキ煮付」を試した。豚バラ肉は長時間煮込まれて甘しょっぱく、とにかく柔らかい。口の中に入れた瞬間にとろける。クセになってしまいそう。白米と一緒に食べると、箸が止まらない。2パックを一気に完食してしまった。個人的には3品の中で、最も好みだった。

ただ、難点は温めなくてはいけない点。同社担当者に聞いてみると、「もともと備蓄食品として作ったわけではないので」と答えが返ってきた。考えてみれば、ハウス食品のカレーもご飯がなくては、少ししんどい。

温め必要でも災害食?

「これが災害食のコンペで入賞してよいのか?」。コンペに携わった一般社団法人の防災安全協会(東京・世田谷)に疑問をぶつけると、「実は災害食のハードルは低いんです」。

「災害食」は2015年に日本災害食学会が認証を始めたもの。確かに「非常食」や「保存食」と比べると、聞き慣れない単語。基準を確認すると、けっこう驚く。まず、賞味期限は6カ月以上。意外と短い気がする。そして、温めたり、お湯を注いだりする必要がある食品でも災害食の対象になりうるという。禁じ手とも思えるような温め行為も許容されている。

日本災害食学会で理事を務める新潟大学の藤村忍准教授(栄養制御学)に質問した。「避難所や自宅で被災生活をする高齢者や乳幼児、アレルギーがある人でも食べられて日常食の延長線上という考え方」が災害食という。保存期間6カ月も「日常生活で消費しながら新たに補充していけるようにした」という。備蓄食品を普段の食事で消費しながら、更新するという発想。

気になる温め行為については「温かい食べ物は被災した人たちのストレスを緩和してくれる。被災から時間が経過するにつれてお湯が使えるようになるなど、避難生活の状況は日ごとに変わる」という。被災直後は確かにお湯を使えないため、温める食品は食べられない。ただ、避難所などで少しずつ火やお湯が使えるようになることは多い。ならば、少しでも心に余裕を与えてくれるような温める食品も災害食に含まれてもいいのでは、ということ。

対象が広いため、「軟骨ソーキ煮付」のように備蓄専用ではない食品も災害食に含まれ、杉田エースのような異業種も参入できる。大手の食品メーカーも続々と製品を投入しやすくなった。このような状況の変化が、備蓄食品市場で競争を生み、質を一気に押し上げた。

行き場を失う期限切れの備蓄食品

防災安全協会の斎藤実理事長は「備蓄食品が劣化しない包装の技術も進んだ」と話す。今回の災害食大賞の機能性部門でグランプリを受賞した「12年保存水」は硬質の素材で、ボトル内に空気をまったく含まないように作られている。製造元の浅川自然食品工業(高知県室戸市)は「社内に13年前からストックしていた保存水を試験したら飲料水としての適正を満たしていた」と説明。記者も購入してみたが、12年経過しないと実力を測れないため、今のところ、自宅で保管してある。

レトルト包装も「酸素を吸収したり、通さなかったり、時間をかけて進化して賞味期限が延びてきた」(大日本印刷)。藤村准教授は「災害食と非常食は分けて考える必要がある。保存が長期でできる非常食は自治体などがストックする備蓄食品」と線を引く。

備蓄食品について取材を進めると、気づくのが非常食の廃棄コストの問題。東日本大震災から5年が経過した。震災後に自治体などが買いに走った非常食は買い替えの時期を迎えた。通常は防災関連商品を納入する会社が不要になった非常食を買い替え時に廃棄品として引き取るという。しかし「あまりにも量が多くて、引き取りを制限する会社が目立っている」(防災安全協会)。期限切れの非常食は産業廃棄物になる。自治体などが自ら負担して処理できればいいが、資金に余裕がないところも多い。防災安全協会の斎藤理事長は「更新時期を迎えても倉庫に積まれたままの非常食が大量にある」と話す。

保存水を開発した浅川自然食品工業の担当者は、すかさず「買い替えが12年ごとなので、廃棄コストがかからない」と商品説明に加えた。防災安全協会では期限が半年以上残っている非常食について無償で引き取り、福祉施設などへ提供している。

備えあれば、憂いなし――。災害食のように日常生活で消費しながら買い替えていくという発想ならば、無理せずに備えはできそう。ただ、自治体にとってみれば、備えすぎが、憂いになることもあるようで、悩ましさもある。

(商品部 筒井恒)

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