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得々家計

家バリアフリー化に介護保険 最高18万円給付

2016/11/3

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 親が高齢で介護を受けているという家庭にとって関心事の一つが、家のバリアフリー化だろう。床の段差をなくしたり、手すりを取り付けたりすれば、転倒などによるケガの防止につながる。そうしたリフォームの費用を助成してくれる制度が公的介護保険にあり、活用すれば費用負担を減らせる。制度の利用法を紹介しよう。

 東京消防庁によると、高齢者(65歳以上)を救急搬送した際の事故原因で最も多かったのが転倒(81%)で、うち転んだ場所が住居だった例は57%にのぼる(2015年)。寒くなるこれからの季節は特に、入浴中の事故や、年末年始の飲酒に起因する転倒が増えやすい。

 高齢者が長年住み慣れた家で暮らし続けられるよう、公的介護保険には住宅改修費用を援助する制度がある。対象者は要介護または要支援と認定され、在宅で暮らす人。要介護区分とは関係なく給付を受けられる。

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 1人につき申請できるのは、改修に要した費用でみて20万円(限度基準額)まで。費用の原則9割が介護保険から給付される仕組みで、最高18万円を受け取ることができる。例えば改修費用がちょうど20万円なら18万円が給付され、自己負担は2万円で済む。

 費用が20万円に達するまで何度でも申請できる。20万円を超えたときは超過分は全額自己負担。例えば30万円かかれば、超過分10万円に先述の2万円を加え、合計の自己負担額は12万円となる。助成を活用しない場合と比べると節約効果は大きい。

 改修の対象は、介護保険被保険者証に記されている住所地の建物で、賃貸住宅も含まれる。改修工事の種類や場所は多岐にわたる。家の状況に応じて必要な改修を組み合わせて利用することができる(表A)。

 例えば手すりは、廊下や便所、浴室、玄関などに設置できる。扉の形式を開き戸からアコーディオンカーテンに変えたり、便器を和式から洋式に取り換えたりする改修も対象。床を、滑りにくい材質の板材に張り替えることも可能だ。

 どんな改修をすればいいのか、まずは担当のケアマネージャーや地域包括支援センターに相談しよう。本人の心身の状態を考慮しながら、必要な工事内容を考えてくれる。施工事業者との打ち合わせを含め、いろいろな相談に乗ってくれる。

 申請窓口は市区町村だ。表Bのように、改修工事に先立ち、「事前申請」をする必要がある。申請前に着工した改修は給付対象とならないので注意したい。工事完了後、「事後申請」をして認められてはじめて給付に至る点も確認しておこう。

 給付金の受け取り方には2種類ある。工事費をいったん全額支払ってから給付分を受け取る方法(償還払い)と、施工業者に自己負担分だけを支払う方法(受領委任払い)だ。それぞれ必要な書類の内容に多少違いがある。後者を選びたいなら、施工事業者がこの方法に対応しているかどうか確認が必要だ。

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 前述したように、給付対象の改修は1人あたり20万円(限度基準額)までと定められている。だが、給付金を上乗せで受け取れるケースがあることを知っておくといい。

 ひとつは、本人の要介護の状態が重くなるケース。要介護状態が初めての改修で着工した日と比べて3段階以上あがると、もう一度、20万円の給付枠が設けられる仕組みだ。1回のみ可能だ。

 もうひとつは後で転居したケースだ。転居前に給付を受けていても、引っ越した先で新たに20万円の給付枠が設定されるので、改めて改修をすればいい。

 公的介護保険で要介護・要支援と認定されている人は6月末で約625万人。65歳以上の第1号被保険者の2割弱だ。介護認定で非該当(自立)とされた人は住宅改修の給付を受けられないが、一部の自治体は独自に助成事業に取り組んでいるので、居住地に制度があるかを確認してみよう。

 例えば東京都は介護保険給付の対象外部分について、高齢社会対策区市町村包括補助事業により、各区市町村に対して費用の一部を補助する。自宅で介護を受けながらも、自立してケガなく生活を送るために、住まいの改善は大事なポイントだ。

(生活経済研究所長野 宇田川 京子)

[日経プラスワン2016年10月29日付]

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