元KARAの知英(ジヨン) 歌と演技で山口百恵めざす
近年、演技と歌の両輪で活躍を見せる人はあまり多くない。そんななか、女優でも歌手でも成果を出しているのが知英(ジヨン)だ。2016年、女優としては、ヒット映画『暗殺教室~卒業編~』に出演し、7月公開の映画『片想いスパイラル』では主演を務めた。「JY」名義での歌手活動では、月9ドラマの主題歌になったセカンドシングル『好きな人がいること』がオリコンチャートでベストテン入りを果たしている。
演技も歌も大きな違いは感じません。どっちも「何かを表現する」ってことは一緒ですから。女優になってから言い続けてきたのは、「ひとつの枠にとらわれない、カメレオンみたいな女優になりたい」ということ。歌もやっぱり同じで、いろんな色を自分から出していきたいですね。「知英」と「JY」と、名前を変えてやっていることも新鮮な気持ちになれます。
2014年4月にK-POPグループ「KARA」を脱退した知英は、同年8月から日本での女優活動をスタート。以降、ドラマ『民王』では父親と中身が入れ替わる日本人の女子大生役、映画『暗殺教室』では金髪のセクシー美女"ビッチ先生"など、一癖も二癖もある難役にも挑戦してきた。
これまでで一番難しかったのは、ドラマ「民王」のオヤジ役。草刈正雄さんが演じる父親と私が演じる娘の中身が入れ替わっちゃう設定で、声も低く落とさなくちゃいけないし、仕草もオヤジっぽくしなくちゃいけない。"ビッチ先生"は、原作のキャラクターに近づかなくちゃいけないけど、そのままだと自分のお芝居じゃない。「知英が演じる"ビッチ先生"はどんな感じだろう」と楽しんでもらえるといいなと思いながら演じました。新しいことに挑戦するのが好きで、周りの人に「できないだろう」って言われても「やってやる!」と思う。これからも、どんな役が来ても怖くないです。
最近は、日本語のイントネーションも早く直せるようになったかなあ。でも、日本語での感情の込め方や言葉のニュアンスはまだ難しいです。もっと勉強していかないとな、と思っています。
JYとしての歌手活動は、2016年3月発売のシングル『最後のサヨナラ』でスタートした。
KARAの時は、グループとして「どうかっこよく見せるか」「どうかわいく見えるか」というパフォーマンスが中心。1人ではそれはできないので、最初は不安もあったけれど、「お芝居のように表現しながら歌う」って気づいたんですよね。歌の主人公を演じることで、「歌もこんなに表現できるんだな」って気づきました。
初ミュージカルでさらに成長
そんな知英が、「歌と演技の経験が生きた」と語るのが、今年9月に挑戦したミュージカル『スウィート・チャリティ』だ。ミュージカル初出演にして初主演、しかも2時間半近くほぼ出ずっぱり。岡幸二郎や平方元基ら、舞台経験豊富な俳優たちを相手に演じきった。
ミュージカルはずっとやりたかったんです。自分の好きな"歌"と"お芝居"が、盛りだくさんですから。でも、まさかこんな早くできるとは思ってなかったです。
今回の役は、ソロ曲がとても多かったし、しかも本当によくしゃべる女の子なのでセリフも多くて(笑)。心配だったんですけど、愛に向けて自分を一生懸命表現する役は、初めての役によかったと思いましたね。今まで歌手としてステージに立たせていただいたので、舞台に慣れていることが役立ちました。もちろん緊張もしましたが、楽しみながらやろうと。
取材日がミュージカルの閉幕から数日後だったこともあり、「終わっちゃって、さみしいです」と話す知英。だが、今回のミュージカルを通して歌と芝居、それぞれで今後生かしていける大きなものを得たという。
舞台は本番が始まったら、役者だけでストーリーを進めなくちゃいけない。舞台の上で信じられるのは目の前にいる役者さんだけ。相手のことをもっと理解して芝居するようになりました。呼吸やタイミングをよく見て、相手と息を合わせるお芝居の経験は今後に生かせるんじゃないかと思います。
歌では、発声方法が変わりました。ミュージカルの発声は、歌手とはまったく違って。先日レコーディングした時、ソロデビュー曲から曲をつくっていただいている山本加津彦さんに、「声が伸びるようになった」って言ってもらいました。
この先も知英は、芝居と歌の2軸での挑戦を続けていく。まず、12月7日にはシングル2枚を同時リリース。「違った色を見せたい」という言葉通り、情熱的なタンゴ調の『フェイク』と、キュートでアップテンポなクリスマスソング『恋をしていたこと』というまったく異なる2曲を発表する。女優としても、17年に複数の主演映画の公開が控えているという。
歌手をやりながら女優もやった山口百恵さんにすごく憧れているんですよ。昔の映像をたくさん見させていただいて、本当に素晴らしいと思いました。特に、曲ごとに異なる女性を、演じるように歌う姿が衝撃で、私もこういう風になりたいと思いました。百恵さんみたいにはなれないと思うんですけど、そういう心を持って歌やお芝居に取り組みたいなって思います。
私が生きている感じがするのは、歌とお芝居をやっているとき。これからもこの2つを離さずに頑張っていきたいです。
(ライター 横田直子)
[日経エンタテインメント!女優Special2017の記事を再構成]
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