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アボリジニと食事、得た度胸 石黒賢さん

食の履歴書

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NIKKEI STYLE

子どもの頃は月曜日に少しだけ寂しくなった。家族でステーキを食べに行ったよ、と教室で級友から週末の報告が聞こえてくると、いいなとうらやんだ。父・修さんは日本を代表する元プロテニス選手。テニススクールの仕事で平日も土日も多忙で、食卓を囲んだ記憶はあまりない。

「せめてもの罪滅ぼしみたいなところがあったんでしょうね」。月に1、2度、父は家族を東京・奥沢の寿司店「京すし」に連れていってくれた。7、8歳の頃からの恒例行事だった。

カウンターに座り、食べたいネタを注文。「初めは淡泊な魚から食べるのが通だと言う。でもそんなことは知らないから、いつもマグロから食べ始めていた」

「これからの時期はそろそろコハダだね」。父と京すしの大将の会話から「旬」を知った。季節ごとに薦められるネタを楽しみに通った。食べ盛りの時期は10貫や20貫ではおなかが満たされない。丼を食べた後に一通りの握りを平らげた。

父に教わった本物

味覚は一朝一夕には身につかない。「父は食べたいだけすしを食べさせてくれた。いくら払ってきたんだろう。すごい金額だと思いますよ」。今は閉店してしまった京すしでの時間は、多忙な父が用意してくれた本物の味を知る経験だった。

そんな食生活は17歳、高校3年で俳優の道に入ってから変わった。撮影時に食べる「ロケ弁」漬けになったのだ。大学のテニス部が舞台の連続テレビドラマ「青が散る」。父の知人を通じて、テニスに打ち込む主人公の役が舞い込んだ。父の後を追うように幼少期からテニスの腕を磨いていたことが役柄につながった。

デビュー作で主演。初めての仕事は過酷を極めた。1回1時間のドラマを撮影するのに5日間を要し、朝の5時ごろ家を出て、深夜2時ごろ帰宅した。食生活も驚きの連続。朝、昼、晩、夜食と1日4食、週に20食のロケ弁を食べる生活が毎週続いた。

「どういうものを食べているの」と心配する母。家で食事ができる貴重な休みには、母が作った味噌汁と色の濃い野菜がたっぷりの料理で体調を整えた。俳優の世界の現実を、演技だけでなく食生活を通じても思い知った。

虫も食べるし減量だって、それが仕事

デビューして5年ほどたった22歳の頃。鮮烈な衝撃を受ける食体験があった。オーストラリアの先住民、アボリジニと共に生活するドキュメンタリーの番組に出演したときのことだ。

先住民の食事として出されたアマガエルやトカゲは焼いて、何とか食べた。最後に差し出されたのは、木の根から掘り出されたカブトムシのような大きな幼虫。通常は生で食べると言われ、さすがに気後れした。

先住民の人々は、たんぱく源として食べている。「食べないのは失礼だし、番組として成立しないだろう」。そんな使命感に駆られて口に入れた。動く幼虫を噛み、とろっと出たのをすぐに飲み込んだ。

アボリジニの人々とは仲良くなり、後日放送を見た友人からは「見直したよ」と言われた。「火を通せば何でも食べられる」と思えるようになった。「プロ根性なんて感じたことはない」と謙遜するが、プロとしての矜持(きょうじ)を周囲に感じさせた出来事だった。

体で表現に全力

俳優にとって、肉体づくりは何より大切と考える。

「来週からがんになるから、よろしく」。27歳で連続テレビドラマ「振り返れば奴がいる」に織田裕二さんとW主演し、がんを患う医師を演じた。監督に突然こう告げられ、驚いた。

主人公ががんになる劇的な展開は終盤が常道だが、三谷幸喜さんの脚本では第4話から。進行度の高いスキルス胃がんの設定だった。1週間後までにやせなければと焦った。

自分なりに考え、ゆでたこんにゃく1枚と、1/4丁の冷ややっこを1日に1回、夜の休憩時間に食べた。箸を使うとすぐ食べ終わるため、つまようじでちびちびつまむ。「不思議なもので20分もかけて食べると満腹になった」

その結果、1週間で5キロやせた。ただ急激な減量に睡眠不足が重なり、髪の毛はパサつき、肌はざらついた。何より気持ちがいらだった。織田さんと対立する役柄だったため「イライラするぐらいでちょうどいいね、と冗談を言い合った」。

撮影後は焼き肉を食べると意気込んだが、胃が小食に慣れてしまったのか、ざるそば1人前すら食べきれなかった。体は意外と単純にできていると実感した。

50歳を迎えた今も若い頃のスタイルを維持する。「アボリジニと食を共にして仲良くなったように、撮影の現場でもスタッフと同じロケ弁を食べるのが重要」。現場でスタッフとの調和を図りつつ、カロリーの高い揚げ物は少し控えるなど、太らないための努力も欠かさない。

見てくれる人を喜ばせ、感動させるために、体で表現できることを最大限努めるのが俳優という仕事だと考える。「それが当たり前ですから」。さわやかな笑顔で、さらりと言ってのけた。

鍋囲み、友人とわいわい

寒くなり鍋が食べたくなった時に訪れるのが、新橋演舞場からほど近い、東京・東銀座の「相撲茶屋 佐賀昇」(電話03・3545・1233)だ。

一番のおすすめは「塩ちゃんこ鍋」(1人前3240円、写真は3人前)。たっぷりの昆布とカツオでだしをとった澄んだスープは、8種類の野菜と鶏肉、豚肉などが煮込まれてうまみが染み出し、飽きがこない。鶏肉のつみれは刻んだキクラゲのコリコリした食感が楽しい。

ゆずの風味が豊かに香る、特製のゆずこしょうを少し付けて食べるのが石黒さんのお気に入り。しめには煮崩れないように特注されたうどんが付く。スープのうまみを吸いつつ、しっかりした歯応えがある。

学生時代の友人同士と来店し、鍋を囲んでたわいもない話をする。「昔から知るやつと過ごすのは気楽な時間なんですよ」という。

最後の晩餐

白米を食べたい。運動をしていた高校、大学時代は、1日4合ぐらい食べるほどの大飯食らいだった。ロケ弁は毎食2つか3つ食べていた。今も白米だけでも食べられるくらい好き。体重を絞らなきゃいけない時はとても辛かった。最後は硬めで、炊きたてのごはんを食べられたら最高だね。

(小柳優太)

〔日経プラスワン2016年10月29日付〕

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