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「どこでもオフィス」ヤフーが働き方改革を急ぐわけ

2016/10/23

ヤフーの宮坂学社長は「働き方改革」を推し進めている

 ヤフーが働き方改革に乗り出している。今秋、社員がオフィスのどこに座るか、決まっていない「フリーアドレス制」を導入したほか、週休3日制導入も検討。新卒の一括採用をやめ、30歳以下なら応募できる制度に改め、通年採用にした。ソフトバンクグループ社長の孫正義氏が立ち上げて20年。ヤフーは連結ベースで従業員1万人に迫る大企業に成長したが、なぜ今、働き方改革にまい進するのか。

■オフィスは「情報の交差点」

ヤフー本社が入居する超高層ビル「紀尾井タワー」(東京・千代田)

 東京・紀尾井町の赤坂プリンスホテル跡地に誕生した超高層ビル「紀尾井タワー」。10月1日付でヤフーは本社を六本木からここに移転した。地上36階建てビルの実に20フロアを占め、オフィス空間は一気に拡大。移転を機にオフィスづくりを一新、社員の机をジグザグに配置したほか、座席を自由に選べる「フリーアドレス制」を導入した。

 「我々は『情報の交差点』と呼んでいます。毎日、隣に座る人が違う。話す人が変わると、そこからイノベーションが起こるかもしれないでしょ」。ヤフーの人事担当執行役員、本間浩輔氏は狙いをこう語る。

 社員同士のコミュニケーションツールはパソコンからスマートフォン(スマホ)にシフトした。スマホを持っていれば、決まった机に縛られておく必要はない。ただ、導入にあたっては「私物が置けない」「部下を管理しづらい」などと、社内には反発の声もあった。結果、「実際のところ、隣同士で仕事したほうが効率的な部署は同じような場所にいます。その辺は自由なんです」(本間氏)という。

■出社に及ばず「どこでもオフィス」

 ヤフーはこの新本社ビルからも社員を解き放とうしている。同社には自宅などオフィス以外の場所での勤務を認める制度「どこでもオフィス」がある。

 「別にオフィスにいる必要はありません。ファミリーレストランやカフェで仕事したほうが集中できる人はそこでやればいい。最近は台風被害も多いですが、ずぶぬれになって会社に来なくてもいいじゃないですか。嵐が来たら頑張って会社に来るより、自宅で仕事をした方が効率的だ。そんな発想で生まれたのが『どこでもオフィス』という働き方なのです」。本間氏は導入の背景をこう説明する。

ヤフーの人事担当執行役員、本間浩輔氏

 ヤフーは「どこでもオフィス」を拡充、今月から月2日を5日に増やした。その延長線上には週休3日制を見据える。本間氏は「我々が求めているのは何時間働くかではなく、成果です」と力を込める。

 「労働生産性」――。ヤフーの宮坂学社長は近ごろ、何かにつけて二言目にはこう口にする。ヤフーでは、急速な事業の拡大に伴い、従業員数も大幅に増やしてきた。単独ベースでみると、2012年時点で4000人弱だった社員は現在5800人を突破、連結ベースだと1万人弱となった。

■どんどん増える従業員 しかし利益は…

 ただ、従業員がどんどん増えるのに比べて、利益が伸びているといえない。2016年4~6月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比6%増の355億円。堅調といえるが、売上高は持ち分法適用会社だったアスクルや一休を子会社化したため、85%増の2042億円と大幅に伸びている。

 広告部門が堅調なものの、電子商取引(EC)部門の先行投資が増加しているためでもあるが、宮坂社長は労働生産性が向上していないとみている。創業者の孫氏は海外を飛び回り、「私の時間の90%はアームなど海外事業に充てる」とヤフーなど国内事業はそれぞれの社長に任せている。しかし、数字には厳しい。

 ヤフーが働き方改革を急ぐ背景には、グーグルなどライバルの存在もあるとも指摘される。人材紹介サービス会社などの転職人気先ランキング調査で、1位など上位に必ず入るのがグーグル日本法人だ。「米国本社と同様に働きやすく、報酬もいい」(グーグル幹部)と評する人は少なくない。

 「最高のポータルサイトを手に入れた」と20年前に孫氏が小躍りして、日本でスタートしたヤフー。ただ、ポータルサイト市場も国内では成熟期を迎えている。ヤフーは働き方改革を断行し、1人でも多くの有能な人材を獲得、成果を上げ続けてゆけるのか。新たな挑戦がスタートした。

(代慶達也)

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