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業績の伸び悩みで、約300人の人員削減案も報じられた米ツイッター。しかし本国の動きはなんのその、日本法人は従業員も増やし、日本独自の新しいサービス「ツイッターニュース」も好調だ。「特に日本は広告が好調だ」と話すツイッタージャパン(東京・中央)の笹本裕代表。「日本のツイッター」の収益モデルや独特な働き方などについて聞いた。

ネーティブ広告が収益を支える

――日本でのツイッターの収益の柱は何ですか。

「ツイッターの収益の大半は広告です。日本では特に広告の伸びがいい。我々にとっての第2四半期、売り上げのシェアが初めてグローバル全体で10%を上回りました。米国に次いで2番目の売り上げです。実質的な利用者数を表す『月間アクティブユーザー』は全世界で3億1300万人に上りますが、日本は3500万人です。広告もほぼ比例しています」

「インターネット広告はこの20年、バナーなどの『ディスプレー広告』から、検索連動型など多様化が進んでいます。ツイッターの場合、フォローしている人のツイートを見られるタイムライン上で、ツイートと同じフォーマットで広告を配信できます。今はこうした、(記事などと溶け込む形で掲載する)『ネーティブ広告』の売り上げが大きいですね」

「もう1つがデータビジネスです。ツイートされた個人の趣味や思考のビッグデータを解析して最近のトレンドなどを分析したものを販売しています。また、日本ではツイッターを使った検索が活発なので、新商品の反応などをユーザーが書き込み、それをまたチェックする動きがさかんです。調査会社のニールセンによると、10歳代がグーグルの次に検索として使っているのはツイッターだそうです。我々からすると、ユーザーの興味が分かります。データ解析の分野は、まだまだ大きくなると思いますね」

日本でツイッターが人気の理由

――競合企業が提供するサービスでは、全世界のうち日本での事業が占める割合は高くありません。一方、ツイッターは日本でのプレゼンスが高い。なぜでしょうか。

ツイッタージャパン 笹本裕代表取締役

ツイッタージャパン 笹本裕代表取締役

「東日本大震災のとき、連絡を取り合うためのインフラとして認知されたことは大きかったと思います。加えて、オリンピックやワールドカップ(W杯)など、イベントとの親和性が非常に高い。前回、ブラジルのサッカーW杯では、日本は決勝トーナメントにいかなかったのに、ツイートは一番多かったんです。スタジオジブリの映画『天空の城ラピュタ』がテレビ放送されるときに、場面にあわせて『滅びの言葉』である『バルス』を一斉に書き込むこともそうです」

――日本でこれだけ人気があるなか、米本社の業績が伸び悩んでいます。なぜコストがこれほどかさんでいるのですか。

「やはりサーバーコストの増大ですね。ツイッターでビデオコンテンツを配信する利用者が非常に増えましたが、映像コンテンツの配信はコストがかかります。しかし、これは先行投資です。映像広告の市場が世界的に伸びていますから、そこは投資をしていかなければならない」

日本で先行する「ツイッターのニュース機能」

――日本で先行して実験していることはありますか。

「我々の課題は、10歳代、20歳代の利用者が多い一方で30歳代以上のユーザーが少ないことです。調査をしたら、年齢が高ければ高いほど、『ツイートすることがないからツイッターはしない』ということがわかりました。こういう人たちにも利用してほしい、と去年の7月から始めたのが『ニュース機能』です」

「ツイッターの最大の特徴は、今何が起きているか、ライブでわかることです。電車の遅延情報や、地震情報がすぐにわかる。この特性を考え、情報を消費することに対するニーズはあるのではないか、と考えたのです。ニュース機能は日本独自のサービスです。『ニュース』というタブをクリックすると、アルゴリズム(計算手法)を使ってコメントが多かったり、属性などの様々な数値などを解析し、ツイッターで情報発信しているメディアのニュースを一覧化しています。このサービスにより30歳代以上のユーザーが徐々に増えてきました」

――ユーザーはどんな種類のニュースを求めていますか。やはり交通や災害情報などでしょうか。

「それだけではありません。事件や事故、芸能関係の話題もありますし、新商品の発表もあります。今はアルゴリズムでユーザーが反応するニュースを一覧化しているので、多様化しています。若い人が反応する芸能ニュースも、米大統領選のニュースもです。興味のあるニュースがどれかわかるだけではなく、皆さんの反応がどうなっているかもあわせてチェックできます」

――既存のメディア大手も、いかにツイッターを使って読者にコンテンツを届けるかは悩みどころです。どのような記事が拡散するのですか。

「一言でいうと『共感』です。私は決して悪いことばかりが広がるとは思っていません。悪口が出ると、同時に否定する力も働くんです。バランスが取れている。いい話が流れると、涙腺に響くような、共感も広がります。喜怒哀楽がこれほど集約された場所はないと思いますね。これはツイッターが匿名性で使えることが大きい理由です。どうしても本名だといいことを言いがちです。匿名だから、本音がより出やすくなる。この10年でツイッターにたまった『喜怒哀楽』は大変な量だと思います」

経営陣にもの申す 木曜日の「ティータイム」

――ツイッターならではのユニークな勤務体系はありますか。

「私もいくつかの会社を経験しましたが、ツイッターほどオープンで上下関係のない会社も珍しい。デジタルの世界で働いていますから、当然、在宅勤務も推奨していますし、上長との相談の上ではありますが、例えば、1週間、家で働いていてもいい。ミーティングもパソコンを通して可能です。私も今朝、自宅からTシャツ、短パンでミーティングに臨みました。社外の方とは物理的に会うことになりますが、社内のミーティングであれば、職場にいる必要はありません。会議に入ればいいのです。社内は男女がおよそ半々ですが、働くお母さんも、子供の送り迎えがある男性社員もいます。ワークライフバランス(仕事と生活の調和)が取りやすい環境にあるかと思います」

「上下関係のなさは、米国ともそうです。毎週、本社のあるサンフランシスコ時間の木曜日に、『ティータイム』という社員からの質問に経営陣が答える場が設けられます。時間の制約もあるので、全員の質問に答えられません。ですから、経営陣に質問したい内容を全社員から募集した上で事前に公開して、そのなかから答えてほしい質問に世界にいる約4000人の社員が投票するのです。もちろん英語で、という条件つきですが、日本法人の一番の若手でも質問できます。経営陣が答えたい質問だけに答えることは許されません」

「だからこそ、本社は米国だ、日本は子会社だ、とかそういったことを感じることはあまりない。以前、ある国の社員が『日本がここまで好調なのはなぜなのか』と質問したことがありました。日本人が日本の事業に質問することは当然ですが、オープンな環境だからこそ、違う国の状況のこともよく見ている。非常に民主的なしくみを持っている会社ですね」

笹本裕氏(ささもと・ゆう)
1964年タイ・バンコク生まれ。米ニューヨーク大学経営修士(MBA)修了。MTVジャパン社長兼最高経営責任者(CEO)、日本マイクロソフト常務などを経て2014年から現職。

(松本千恵 代慶達也)

「キャリアコラム」は随時掲載です

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