CM好感度 「三太郎」のauが22カ月連続1位の快挙
2016年9月 CM好感度月間ランキング
■当月オンエアCM:全2722銘柄
■同商品の複数作品にオンエア・好感反応がある場合、代表作品は最もCM好感度の高い作品
■企業・銘柄名・作品名はCM総合研究所の登録名称であり、正式名称と異なる場合がある
9月度のCM好感度ランキングの1位はKDDIの『au』。これで2014年12月度以来22カ月連続での1位となり、『SoftBank』が持っていた21カ月連続1位を抜いて、新記録を達成した。松田翔太、桐谷健太、濱田岳ら若手俳優が桃太郎、浦島太郎、金太郎といった昔話の主人公を演じる「三太郎」シリーズの圧倒的な人気をあらためて証明した格好だ。
9月度にはシリーズ中の9作品がオンエアされたが、9月6日からは51話目となる新作「三太郎の出会い」編がスタート。幼少時代の桃太郎がいじめられているシーンから始まり、3人の出会いのエピソードが桃太郎の回想の形で描かれる。ほほえましくも、涙を誘う感動的なCMとなっている。旬のキャストが登場するのも話題の同シリーズとあって、子どもの桃太郎を人気子役の寺田心が演じている。
CM好感度調査は、東京キー5局でオンエアされたすべてのCMを対象に、関東在住の男女モニター3000人に、好きなCM・印象に残ったCMをヒントなしに自己記述してもらい、その得票数を足し上げたもの。9月度は1114社が2722銘柄のCMをオンエアした。同調査を実施しているCM総合研究所の関根心太郎代表は、『au』の強さについて「得票数で2位を大きく離しての1位で独走状態。これまでかぐや姫など登場人物を増やしてきたが、今回は幼少期を回想するという切り口を変えてきたのが、新鮮に受け止められたのではないでしょうか。シリーズが始まって2年近くたち、原点に立ち返ろうという狙いが感じられます」と言う。
■ロバート秋山の熱唱がヒット
2位のNTTドコモ『NTT DOCOMO』は「得ダネを追え!」シリーズの新作で、お笑いトリオ、ロバートの秋山竜次がドコモショップの店員にふんして、初めてスマホに買い替える女性客に「♪ありがとう さようなら 携帯~」と熱唱する作品がヒット。支持層の特徴は、「成人女性層からの得票が多く、主婦層に受けています」(関根代表)。秋山は、架空のクリエイターになりきってインタビューに答える『クリエイターズ・ファイル』というウェブ動画のシリーズが、女性を中心に人気を呼んでいる。そのターゲットが、CMにも敏感に反応しているようだ。
3位のソフトバンク『SoftBank』は、「白戸家」シリーズにアヤ(上戸彩)の弟つよし(佐藤健)が初登場。今年10年目を迎えた白戸家シリーズの新展開として、今まで動きが速すぎて見えなかった弟という設定で、今後も様々な場面で登場するという。
4位の日清食品『カップヌードル』はビートたけしが学長を務める架空の大学「OBAKA's大学」シリーズ。小林幸子が教授にふんして、09年の『NHK紅白歌合戦』で登場したメガ幸子の衣裳を超えるテラ幸子の製作に取り組む。5位の三井不動産リアルティ『三井のリハウス』は相続した祖母の家を手放すことになった家族を描く。孫(田辺桃子)にだけ祖母(樹木希林)の姿が見え、言葉を交わせるというファンタジックな作風だ。6位の住友生命の『1UP(ワンアップ)』は、働けなくなるリスクに備える新しい生活保険。サラリーマンのちょっとした成長をユーモラスに描き、商品名の認知を促すシリーズCM。会社員役の瑛太が、海外出張で入国審査官に滞在期間を尋ねられて「スリーデイズ」の発音にこだわる内容だ。
■遠藤憲一の演技が笑いを誘う
7位のホクトのプレミアムきのこ『霜降りひらたけ』は、遠藤憲一が松茸(まつたけ)狩り歴28年の名人にふんしてコミカルな演技を披露する。テレビ番組の取材で、遠藤が会得した松茸の新しい採り方を披露するという設定。遠藤が木の根元に向かって「ホクトプレミアム!」と声をかけると、松茸が土の中から次々と顔を出し、驚いているレポーターに「松茸も焦ってるんだと思うんだよね」と遠藤が得意げに話す。
映画やドラマなどで様々な役をこなすことで有名な遠藤だが、このCMでもベテランの松茸狩り名人になりきって、ちょっとした表情や仕草や間の取り方で見る者を笑わせる。「こういうおじさん本当にいるよね、と演技のうまさが評判になっています」(関根代表)。トップ10の銘柄のうち放送回数は155回と最も少ないが(最多は1位『au』の1230回)、CM好感度の総合順位では7位、好感要因のユーモラスの項目でも3位に食い込むなど、インパクトは大きかったようだ。
この商品は、品質を高めた新しいプレミアムきのこだが、ホクトではCMの続編をウェブムービーとして流した後、完結編のムービーをきのこ売り場に設置されたモニターで公開。テレビ、ウェブ、店頭を組み合わせた新しいプロモーションにも取り組んでいる。
8位のオリエンタルランド『東京ディズニーランド』は毎年人気のハロウィーン・イベントの告知。9位の日野自動車『日野デュトロ』は堤真一とリリー・フランキーが「ヒノノニトン」とリズミカルに連呼するシリーズ。10位のリクルート『リクナビNEXT』は転職サイトのCMで、大泉洋が自転車に乗ってウルフルズの『笑えれば』を歌いながら、転職に悩む女性の横を通り過ぎてエールを送る。
■五感に訴えるCMが主流に
全体を見ると、コミカルなCMの人気が高い。携帯電話会社のシリーズCMがトップ3を占め、6位の『1UP(ワンアップ)』、7位の『霜降りひらたけ』が自己最高順位を記録するなど、笑いをうまく取り込んでCM好感度を高めている。また、幼少時代(1位『au』)や祖母との思い出(5位『三井のリハウス』)を切り口にした、心がなごむタッチのCMも高く支持された。クスッとさせたり、ホロッとさせてサービスや商品を認知させる、五感に訴えるCMが今の主流といえそうだ。
(日経エンタテインメント!小川仁志)
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