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実績豊富なエグゼクティブ・ビジネスパーソンであっても、転職がうまく運ぶとはかぎりません。転職活動時、そして入社後、成功する人とそうでない人の違いはどこにあるのでしょうか。エグゼクティブの転職支援を手がけているコンサルタントの声も交えてお話しします。

成否のカギは「やりたいことにフォーカスしているか」

まず、転職活動がうまく運び、自分が望む会社に採用されるためには、「本当にやりたいこと」を見据えられているかどうかが重要です。

コンサルタントの山室広幸さんは「仕事や役割以外の部分に細かくこだわる人は、結果的にうまくいかない」といいます。

「労働時間や休日、手当など、仕事よりも条件面にこだわる人は、転職成功に至らないケースが多く見られます。逆に、そうした点にこだわらない人は、仕事そのものにフォーカスし、『やりたい』『自分ならできる』と思っている。その自信と意欲が相手企業にも伝わり、期待感を抱かせるのでしょう」(山室さん)

自身が適切なタイミングで適切な決断をするためにも、やりたいことを明確にしておくことは大切です。「自分の目標やテーマが明確であれば、チャンスを見逃さない」と話すのは久乗健次さんです。

「自分の経験やスキルを買ってくれる会社がどこかにないだろうか……と受け身の姿勢で待つのではなく、自身がチャレンジしたいテーマを明確に意識しておくと、身近にチャンスが来たときにすっと手を出してつかむことができます。さらに、機会があるごとに、自分がやりたいことをいろいろな人に発信しておくと、向こうからチャンスがやってきます。ネクストバッターズサークルでしゃがんでいるのではなく、常にバッターボックスに立っている気持ちで臨めば、転職成功の確度が高まるでしょう」(久乗さん)

このほか、「転職がうまくいかない人とは」という問いに、「他責の人」と即答したのが中村一正さんです。「他責」とは言うまでもなく、うまくいかないことや失敗したことを他の人、あるいは市況や環境といったもののせいにすることです。

「他責だけでなく自責もあればまだいいのですが、会社が悪い、チームがダメだ、上司がデキない……といった他責に終始する人は転職しないほうがいいですね。そういう人は新しい会社でもやはり他責にしてしまうので、新しいメンバーと関係構築するのが難しい。結局、組織になじめず居場所を失ってしまう傾向が見られます」(中村さん)

こうした「他責」の方は、そもそも相手企業との面談時に、今(前)の会社への不満や批判を語ってしまいがちです。当然ながら心証は良くないため、採用を見送られるケースも多々あります。

これまでの不振の原因が会社や上司、市況などにあるのが事実だったとしても、転職に向かうにあたっては視点を切り替えることが重要。「自責」の部分を振り返って今後への糧とするとともに、「これから力を入れて取り組みたいこと」「実現したい目標」にフォーカスして考えてみてください。

「現場」に降りようとしない人は成果を出しにくい

では、エグゼクティブクラスの方々が転職を実現したとしても、入社後に活躍できる人、活躍できない人の差はどこにあるのでしょうか。

中村さんが、活躍できない人の典型として挙げるのは「わかった気になってしまう人」です。

「その会社の特徴や強み・弱みなんて、そんなに簡単につかめるものではありません。しかし、データだけ見て状況や解決策がわかった気になってしまう方は実際にいらっしゃいますね。日本の企業は組織の構造や事情が複雑であるケースが多い。ボタンを押したときにすぐ上のランプがつくわけではなく、まったく別の場所のランプがついたりする。特に、外資系企業から日系企業に移り、それで苦悩するエグゼクティブは少なくないようです。コンサルティングファームやMBAで学んだとおりのロジックで動く組織はなかなかないのです」

「その点、現場まで足を運び、現場でどんな問題が起きているかを自分の目で確かめるという行動をとれる方は、的確に課題をつかんで結果を出しています。売り上げ1兆円から2兆円規模の会社のトップを務めるなら別ですが、数百億円から数千億円規模の企業経営なら、現場感覚がある人でなければ務まらないものだと感じています」(ともに中村さん)

中村さんも指摘するとおり、エグゼクティブクラスであっても、自ら「現場」に降りている方は、優れた実績を挙げているケースが見受けられます。

これは実際の事例ですが、国内消費財メーカーで海外での売り上げを伸ばした実績を持つ方が、国内食品メーカーに転職して海外市場開拓を任された際、「マーケティングとはこうするんだ」と、メンバーを現地のスーパーマーケットに連れて行ったそうです。そして、店内に何時間も滞在し、買い物客がカゴにどんなものを、どれだけの量入れているかの観察を続けたのです。その観察力・分析力にメンバーは納得し、その人への信頼感を強くしたといいます。

組織の状況を見極め、自分の「役回り」をつかめるか

渡部洋子さんは、担当職務そのものだけでなく、組織の一員としての自分の役回りをつかんだことで活躍できている事例を目の当たりにしたそうです。

「あるメーカーの管理部門に、副部長として転職した女性がいらっしゃいました。その部署の部長も女性で、しかも非常にキャラクターが強い人物。周囲の人は2人がぶつかりはしないかと当初心配したそうです。しかし、副部長として入った女性は、メンバーが部長を恐れて言いたいことを言えない状況にあることを察し、自身が橋渡し役を務めるようにしたのです。その結果、部署全体が円滑に回るようになり、その女性はその部署になくてはならない人材として高く評価されました」

「このように、入社後にビジネススキルを発揮することも大切ですが、組織のキーパーソンとメンバーの関係性をつかみ、それぞれとどうコミュニケーションをとっていくべきかを見極めることも大切なのです。入社してすぐパワー全開で走り出すよりも、組織の状態と自身の役回りをつかむことに注力するほうが、うまく着地できるといえるでしょう」(ともに渡部さん)

――エグゼクティブといえども、自身の経験や実績を過信しないこと、転職先企業について時間と手間をかけてでも理解する姿勢が欠かせないのです。

 「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は10月28日の予定です。
 連載は3人が交代で担当します。
 *黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント
 *森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント
 *波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント社長
波戸内啓介(はとうち・けいすけ)
リクルートエグゼクティブエージェント社長
1989年リクルート入社。営業部門、企画部門責任者を経て、リクルートHRマーケティング関西など、リクルートグループの社長を歴任。2011年リクルートエグゼクティブエージェント社長に就任。
 リクルートエグゼクティブエージェント(http://www.recruit-ex.co.jp/)

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