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使わなきゃ損! 個人型DC iDeCo

これを読めば全部わかる 個人型DC総まとめ 編集委員 田村正之

 

2016/10/24

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 個人が毎月掛け金を出し、運用次第で老後の年金の額が変わる個人型確定拠出年金(DC)。掛け金を出すと税金が還付されるなど大きな節税効果があり、老後資金づくりに積極的に活用したい仕組みだ。現在は自営業者や企業年金のない会社員などしか加入できないが、法改正で来年からは現役世代の大半の人が使えるようになる。

■最大のメリットは節税効果

 個人型DCを一言で説明すると「老後資金を積み立てながら現在の税金を軽減してくれる」というお得な制度だ。16日には普及促進のための愛称が、英文表記の一部を使った「iDeCo(イデコ)」に決まった。

 掛け金は全額、所得税や住民税の計算対象から除外される。企業年金のない会社員の掛け金の上限額は毎月2万3000円、年間で27万6000円。この人の所得税・住民税の合計税率が20%(復興税を除く)だった場合、27万6000円分にかかるはずだった20%分の税金、5万5200円が節税でき、年末調整などで返ってくる。

 自分で銀行、証券、保険会社などに申し込み、掛け金を運用する。運用期間中は運用益に課税されないので、課税口座より資金を増やしやすい。

 受給は原則60歳から。一時金・年金・その併用が選択できる。一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除という税制優遇があり、受給時も税金がかからないか少額ですむことが多い。

 制度の導入は2001年で、現在も企業年金のない会社員や自営業者など約4100万人が入れる。しかし制度がほとんど知られていなかったために利用は低調。加入者はまだ27万人(6月末)と対象者の1%未満だ。

 来年から新たに対象になるのは企業年金のある会社員、公務員、主婦など計2600万人。それぞれに掛け金の上限額が定められている。ただ原則的に会社が掛け金を出す企業型DCの導入企業では、企業型DCの掛け金を一定以下にする規約変更をしないと個人型DCは利用できない。

 厚生年金・国民年金など公的年金は、財政難から実質減額が見込まれている。法改正は、国民が個人型DCを通じて自助努力で老後資金を増やすことを促す狙いがある。

 米国にも個人型DCと類似した個人退職勘定(IRA)という仕組みがある。当初は加入対象が限られていたためなかなか普及しなかったが、1981年に原則誰でも入れるようにした後で急速に広がり、現在は老後資金の要になっている。

(※)退職所得控除 個人型DCを一時金でもらう場合は退職所得控除の対象になる。加入期間に応じて20年までは1年に40万円ずつ、その後は1年に70万円ずつ控除の枠が拡大する。30年加入すれば1500万円まで非課税で受け取れる。所得のない主婦は掛け金に対する節税効果は得られないが、退職所得控除を生かして運用益を非課税で受け取れるメリットがある。年金で受け取る場合も一定額(年齢で異なる)まで非課税になる公的年金等控除の対象にできる。

■掛け金は月5000円から

 掛け金の最低額は月5000円。年に1度変更できるので、教育費がかさむ時期や、住宅ローン返済を優先したい時期などは減らすことも可能だ。ただし節税効果を高めるためには、上限額の範囲内でできるだけ大きな金額で活用したい。

 税制優遇の大きな運用の仕組みにはほかに少額投資非課税制度(NISA)もあるが、NISAは預貯金は対象外。個人型DCは投信、保険のほか預貯金も選べる。運用で損が出るのが怖いなら、預貯金を選べば値下がりリスクなしで節税効果が得られる。

 しかし運用期間中も運用益が非課税という点を最大限に生かすには、なるべく期待利回りの高い資産での運用が有利だ。

 例えば掛け金を毎月2万円払い続け、利回り3%で運用できた場合、資産は10年後に約280万円、20年後に約660万円、30年後に約1170万円になる(金融商品のコストは考慮せず)。月々2万円でも老後資金を大きく上積みできる。

 長期で大きな上昇を期待できる資産の代表格が株式だ。グラフの「世界株」は世界の株価の推移を示す「MSCI WORLD」指数。2008年のリーマン危機時などには急落したが、長期では大きく上昇している。

 株式投資でもバブル崩壊後の日本などのように、特定の国だけに投資していたのでは長期でも報われないことがある。世界全体に幅広く投資するほうが確実性が高いことを覚えておきたい。個人型DCでは個別株には通常は投資できないので、株式を対象とした投信を使うことになる。

 株式投信を100%にした場合の大きな価格変動が嫌なら、何割かを株より値動きの小さい債券投信や預貯金に配分して変動を抑える手もある。グラフの「国内外の株と債券の4資産均等」は世界株に比べて値動きの幅が小さいのがわかる。

 60歳が近くなったときに株価の急落局面があって資産を大きく減らすと、挽回が難しい。年齢が高くなるにつれ、原則的には株式の比率を下げていくのがセオリーだ。

 自分の決めた株式の比率が、その後の株価変動などで変わってしまうと資産全体の値動きの大きさが想定よりぶれてしまう。年に1度くらいは資産状況を見直し、当初想定した比率に戻すことも検討しよう。リバランスと呼ばれる手法だ。

 個人型DCの大きな利点の一つが、投信の売買手数料が通常かからないこと。市場の環境などに応じて、積みあがった資産のうち株式の一部を売って債券などを買う「スイッチング」も基本的に無料でできる。

■金融機関は玉石混交

 個人型DCの口座管理費用や取扱商品は金融機関によって大きく異なる。例えば口座管理費用は楽天証券(24日から受け付け、資産10万円以上の場合)、SBI証券(資産50万円以上)、スルガ銀行では年間2004円で済むが、6000~7000円台の金融機関も結構、多い。

 サービス内容も金融機関によって様々だ。コールセンターでしか対応しない金融機関も多いが、りそな銀行や三井住友銀行などは全国の多くの店舗で加入手続きができるうえ、運用などの相談も可能だ。

 口座管理費用が高いところがサービスも高水準というわけでは必ずしもないので注意しよう。

 投資信託の品ぞろえも大きく異なる。投信の保有コスト(信託報酬)は長期になるほど運用成績に大きな影響を与える。まずは日本株・日本債券・外国株・外国債券という主要4資産で、低コストのインデックス(指数連動)型投信がそろっているかチェックしよう。

 日経平均株価に連動するインデックス型投信でも、金融機関によって信託報酬が年0.1%台のものから0.7%台のものまで混在している。低コストのインデックス型投信の品ぞろえが多いのは、現在のところ楽天証券、野村証券、SBI証券、りそな銀行、三井住友銀行などだ。

 ほとんど預貯金で運用するつもりなら口座管理費用が低い金融機関を、投信での運用が大半なら低コスト投信が多い金融機関を選ぶのが基本。運用方針をまず決め、それに適した金融機関を選ぶことが大事だ。

 金融機関は変更可能だが、記録の引き継ぎなどで2カ月程度の時間がかかるため、簡単ではない。できれば最初から慎重に選びたい。

 個人型DCは郵送・ネットでの手続きが中心。コールセンターに問い合わせできるので、地元の金融機関を選ぶ必要性はあまりない。遠方の金融機関やネット専業証券でもほとんど不便はない。

 金融機関の口座管理費用、投信の品ぞろえやコストなどは、確定拠出年金教育協会のサイト「個人型確定拠出年金ナビ」で詳しく調べられる。

 ただ来年1月からの対象拡大をにらんで、様々な金融機関が、口座管理費用や投信の品ぞろえを現在見直し中だ。まだ始めていない人は各金融機関の見直し結果を待つ選択肢もある。

[日本経済新聞朝刊2016年9月23日付]

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