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使わなきゃ損! 個人型DC iDeCo

確定拠出年金はどう受け取るのが得なのか 経済コラムニスト 大江英樹

2016/10/20

 最近、個人型確定拠出年金(DC)がよく話題に上ります。これまで対象は自営業者や企業年金のない会社の従業員に限っていましたが、来年1月からは主婦や公務員が加わり、実質的に誰でもこの制度に加入することができるようになったからです。

 会社に既に企業型DCの制度があるサラリーマン、特に定年間際のシニア層は年金の受け取りが気になっている人もいるでしょう。企業型DCは制度が始まって約15年たっています。発足当初から加入している人はスタート時に40歳でも今は55歳、あと5年で年金を受け取れる年齢になります。

 いうまでもなく年金で一番大切なのは受け取るときです。60歳になった時点で受け取ることを「老齢給付」といいますが、これは一度にまとめて受け取る「一時金」、あるいは毎年少しずつ受け取る「年金」、そして「併給」といってその両方を組み合わせて受け取ることが可能です。

 そこで議論となるのが「一時金で受け取る方が得か、年金で受け取る方が得か」という話です。一概には言えませんが、一般的には「一時金」の方が税制上は有利だとされています。実際に一時金で受け取る人は8割近くになるようです。

 一時金で受け取った方が得だといわれる理由は「退職所得控除」が適用されるからです。仮に勤続年数が30年の場合、退職所得控除の額は1500万円になりますから、給付額が1500万円を超えるまでは所得税がかからないということになります。

 これに対して年金で受け取った場合は「雑所得」として課税されます。もちろん「公的年金等控除」という仕組みがあるので少額の場合は税金がかからないこともありますが、DCだけに限らず、公的年金で受け取る金額も合算されますから、まったく税金がかからないという例はほとんどないと言っていいでしょう。

 この税制面だけを見て一時金で受け取った方が有利だと考える人が多いのでしょうが、実はそれだけで判断するのは早計です。なぜならサラリーマンは、退職時にDC以外の「退職一時金」などを受け取る場合が多いため、それらを合算した金額で退職所得控除の額が計算されるからです。通常は退職金を受け取るのは定年退職時であることが多いでしょうから、DCを一時金で受け取る場合は合算すると退職所得控除の額をオーバーして課税されることもあり得ます。

 さきほど、「一概には言えない」と言ったのは、このように退職金などの状況によって計算が変わってくるからです。

 一時金ではなく年金で受け取っても損とはいえないケースもあります。例えばサラリーマンが60歳で定年退職したとしましょう。今後は公的年金の支給が65歳からとなりますから、65歳までの5年間は全く年金のない期間となります。退職金を生活費に回しながら、DCの受け取り額を年間70万円以内にしておけばこの分は無税となるため、年金での受け取りも非合理とはいえません。

 また、一時金で受け取って住宅ローンの返済に充てるというような場合でなければ、DCの資産として運用を続けている限りは運用益が非課税ですから、年金での受け取りにして取り崩しながらDC口座に資産を置くのも決して悪くはありません。

 要するに自分にとっての最適解が何になるかをしっかりと考えておくことが大切なのです。加入している間は無関心だった人も年金支給が近づいてくれば、この辺りも含めてしっかりと勉強しておく必要があります。

 「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は11月3日付の予定です。

大江英樹(おおえ・ひでき) 野村証券で個人の資産運用や確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。行動経済学会の会員で、行動ファイナンスからみた個人消費や投資行動に詳しい。著書に「定年楽園」(きんざい)など。近著は「投資賢者の心理学」(日本経済新聞出版社)。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。
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