憧れの背景ボケ iPhone 7 Plusの新機能を試す
アップルの最新スマホ「iPhone 7/7 Plus」の発売から20日ほどが過ぎた。いち早く入手して使っている人も多いと思うが、実は現時点ではまだ利用できない新機能がある。1つが、iPhoneでSuicaが利用できる「Apple Pay」だ。10月中に日本でのサービスが始まる予定なので、あと少しの辛抱といえる。
もう1つが、iPhone 7 Plusのデュアルカメラを利用して背景のボケの表現を大きくする「ポートレートモード」だ。デジタル一眼や高級コンパクトデジカメなど、大型センサーや明るいレンズを持つ高性能カメラでないと難しかった豊かなボケのある表現がiPhoneでも楽しめるとして、注目を集めている。こちらは年内に提供開始とのことで、Apple Payよりもさらに遅れての登場となる見込みだ。
だが、開発中のプログラムを試用できる「Apple Beta Software Program」の登録者に向けて先日公開された「iOS 10.1」のベータ版で、ポートレートモードが追加されたのが確認できた。今回、ひと足先に機能を試す機会が得られたので、ポートレートモードはどのようなものなのかをチェックしてみたい。なお、あくまでもベータ版での試用となるため、画面や仕上がりは正式リリース版とは異なる可能性がある。
ライブビューでボケの効果を確認しながら撮影できる
ポートレートモードは、iPhone 7 Plusの撮影モードの1つとして用意され、動画モードやパノラマモードに切り替えるように左右にスワイプすれば利用できる。ポートレートモードにすると望遠側のカメラに切り替わり、56mm相当の中望遠撮影となる。撮影は縦位置と横位置のどちらにも対応する。
ポートレートモードが優れているのが、ライブビューで背景ボケの効果をリアルタイムに確認しながら撮影できることだ。撮影後の再生画面でボケを付加する方法とは異なり、デジタル一眼と同じような感覚で撮影できるのはうれしい。撮影後の処理待ち時間は1秒未満で済むので、テンポを崩さず撮り進められる。
実際に撮影してみると、予想以上の効果が得られた。背景の草花で背景がうるさくなったシーンでも、ポートレートモードにすると背景がほどよくボケてメーンの被写体がうまく浮かび上がった。ボケの大きさをユーザーが調整することはできないが、大きすぎず適切な印象を受けた。被写体から40cmほど離れないと効果が有効にならないので、小さなものを撮るのは難しい。
憧れのボケを生かした写真が誰でも撮れる
ポートレートモードという名称だけに、特に人物撮影では効果を発揮すると感じた。数十cm~1m程度離れるとバストアップで撮影でき、背景もほどよくボケてくれる。広角特有のゆがみもなくなり、理想的な人物撮影ができた。デジタル一眼とF1.4クラスの大口径レンズで得られる、まるでとろけるような大きなボケまでは望めないが、スマホ写真の常識を超える仕上がりなのは間違いない。
標準設定では、ボケを大きくした写真とオリジナル写真の2枚を保存するのも気が利いている。ボケを大きくした仕上がりに不満があっても、オリジナルの写真が残っているのであわてずに済む。オリジナルの保存が不要ならば、設定アプリから「写真とカメラ」を選び、ポートレートモードの「通常の写真を残す」の項目で変更できる。
ポートレートモードは、背景ボケを生かした写真がとにかく簡単に撮影できるのが特徴だ。ボケの大きさを変更する機能すら持たないシンプルさだが、ボケ加工用のアプリを導入したり起動する必要なく、誰でも手軽に使えるようにしたのは評価できる。iPhone 7 Plusよりもユーザー数の多いiPhone 7では利用できないのが最大の欠点ともいえるが、本体価格の高いiPhone 7 Plusのプレミアムとして納得したい。
今回試用したのはあくまでもベータ版のため、正式リリース版では機能や仕上がりがさらに改良される可能性もある。すでにiPhone 7 Plusを入手した人は期待して待ちたい。iPhone 7と7 Plusのどちらを購入するか悩んでいる人や、iPhone 6 Plusなどの旧機種からiPhone 7 Plusに買い替えるかどうか迷っている人も、ポートレートモードの存在に注目する価値はある。
(日経トレンディネット 磯修)
[日経トレンディネット 2016年10月5日付の記事を再構成]
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