足音・ゴミ捨て ご近所トラブルどう解決する?
今回は、平穏な毎日を脅かすご近所トラブルに着目。子どもの足音がうるさいとの執拗なクレーム、ゴミ出し問題などなど、実際に読者の皆さんから寄せられた身近な困り事に弁護士法人・響の徳原聖雨弁護士が解決法をアドバイスしてくれました。
CASE1 子どもがうるさい! とマンション隣人からしつこく無言電話が来る
その後、実際に電話がかかってくることはなかったのですが、ここ2~3年、子どもがベッドから飛び降りたり、転んだり、派手な音をたてた直後に、無言電話がかかってくるようになりました。出ると切れたり、出なくてもワンコールで切れたりします。「うるさいですよ」と知らせているつもりだと思いますが、いい気持ちはしません。無言で着歴もないので、隣や階下の住人がかけているという証拠はないのですが、かかってくるタイミング的に間違いないと思っています。最近では、子ども自身が電話に出ることもあり、無言電話が多いことに違和感を感じているようです。どうしたらいいでしょうか。
A. 電話主を確かめるのに一番早い方法としては,その住人の方に確かめることだと思います。「ナンバーディスプレイ」などの番号通知サービスにして相手の番号を確かめることもできます。しかし、直接聞いたとしてもはぐらかされるか、開き直られるなどするかもしれません。番号通知サービスで電話主が住人の方と判明してその事実を住人の方に示しても、子どもがうるさかったからと言われておしまいになってしまう可能性もあります。そうすると、結局何もできないままになってしまいます。
では、何か法的な手段があり得るのか。そこも厳しいですね。例えば、無言電話が続くことによって精神的に疲れてしまった、体を壊してしまったなどがあれば損害賠償請求などが考えられますが、現時点では法的手段はなさそうです。住人の方との話し合いが現時点では一番の方法だと思います。もし直接が難しければ、マンションの管理組合などを通じて、という手もあるかもしれませんね。迷惑電話お断りサービスという方法で住人からの電話を拒否することもできますが、この手段をとるとまた別のトラブルに発展しかねません。
CASE2 ゴミの分別をしない住民がいるが、誰だか特定できない
A. 引っ越されてきたご家族にゴミの日の確認をする、というのが直接的な方法として考えられますね。ただ、本当にそのご家族が出されたゴミなのか分からないということもありますし、直接話をすることで近所関係が悪化してもいけません。そこで、回覧板や掲示板、ゴミ捨て場などにゴミの日やゴミの種類について周知するような貼り紙をするのもいいかもしれません。
そのような方法をとっても何度も同じことが起きるようであれば、役所に相談してみてはいかがでしょうか。ゴミの収集を担当している部署があるはずです。その部署に相談して、場合によっては役所からの指導をお願いすることも考えられます。
CASE3 隣の家のモノがわが家の敷地にはみ出ていて、邪魔なんです!
A. 自転車カバーについては、ご相談者様の敷地内にはみ出してしまっているのであれば、隣人に対してそれを敷地内に戻すように求めることは可能です。もっとも、あくまでも求めることができるだけで、隣人が何もしてくれなかったら意味がありません。隣人に隠れてそっと敷地に戻したとしても何か法的な問題が起こるとは考えにくいですが、隣人に一声かけて許可をもらってからのほうがいいでしょう。
植木についてですが、実は民法で次の通り定められています。まず、隣の家の木の「枝」が境界線を越えてきたときには、その木の所有者に枝を切るように請求できます。しかし、隣の人に無断で切り取ることはできません(民法233条1項)。一方、隣の家の木の「根」が境界線を越えてきたときには、その根は自分で切り取ることができます(民法233条2項)。面白い例え話として、隣からはみ出してきた木の枝、もしくは果実は自分で切ることができないが、隣の家にあるタケノコがこちらの敷地でも生えたということがあればそのタケノコをとることができてしまいます。
無断で枝を切り取り、木が枯れてしまったりした場合、逆に訴えられる可能性もゼロではありませんので、注意しましょう。もし頼んでも切ってくれない場合、損害賠償請求を起こすこともできますが、「隣家の枝のせいで、かなり日当たりが悪くなっている」「虫がひどく、人的被害を受けている」「枝で建物や車などが傷つく」など、枝がはみ出ていることによって具体的な被害が出ていないと、裁判に勝つことは難しいかもしれません。
『弁護士法人・響』の福岡オフィス支店長。福岡県弁護士会所属。子どもの権利委員会、法教育委員会所属。交通事故・離婚・相続・借金問題など民事案件を主に扱う。http://hibiki-law.or.jp/ (TEL)0120-205-376
(ライター 小泉恵里)
[日経DUAL 2016年9月13日付記事を再構成]
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