9年ぶり最新作、ヒロインはCIAでのし上がる女
働く女性のシネマ羅針盤 [ジェイソン・ボーン]
マット・デイモンが、記憶を失い、愛するものを奪われた主人公を演じた大ヒット映画"ボーン・シリーズ"。これまで「ボーン・アイデンティティー」(2002年)など3作が製作されましたが、9年を経て新作「ジェイソン・ボーン」が公開されました。
本作で、男性の多いCIAでキャリアアップしていく野心的な女性エージェントを熱演し、抜群の存在感を発揮したアリシア・ヴィキャンデル。2015年「リリーのすべて」でアカデミー賞を受賞した注目の女優であるアリシアが来日し、インタビューに応じてくれました。
1988年10月3日生まれ、スウェーデン出身。バレエでプリンシパルを目指した後、演技の道へ。スウェーデンのTVドラマや短編映画に出演し、2012年の「アンナ・カレーニナ」や「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」で世界的に注目されるようになる。2015年の「リリーのすべて」でアカデミー賞・助演女優賞を受賞。主な出演映画に「フィフス・エステート/世界から狙われた男」「戦場からのラブレター」「コードネーム U.N.C.L.E.」「エクス・マキナ」「二ツ星の料理人」「The Light Between Oceans」などがある。ルイ・ヴィトンのアンバサダーを務めている。
――アリシアさんが演じたヘザー・リー役は、男性の多いCIAという職場で頭角を現す、野心的な若い女性です。アリシアさんは、インターネットを使った分析の達人でもある才女のヘザーを、どのようにとらえて演じられたのでしょうか?
「『ボーン・アルティメイタム』(第3作、2007年)の頃から世界は大きく変わったけれど、ヘザーはそれを象徴するキャラクターだと思います。彼女の仕事は、これまでのボーン・シリーズにはなかったような仕事ですよね。今はテクノロジーが政府を動かし、戦争まで起こせてしまう。もちろんコミュニケーションツールとして優れているけれど、悪い側面もあるのは間違いありません。
テクノロジーを使いこなすヘザーを演じるために、彼女のような仕事をしている人たちに会ってリサーチしたのですが、ほとんどが30歳以下だったのです。『この年齢で、このポジション?』と驚きました。そんな若者たちが現在、世の中の権力のカギを握っていて、会社でも政府でも求められている。そういった事実を手掛かりに、ヘザーというキャラクターを模索しました」
――ヘザーは、伝説的な名優であるトミー・リー・ジョーンズさんが演じているCIA長官のデューイと対等に渡り合うエージェントですが、そんなパワフルな女性役でトミー・リーさんと共演した感想は?
「デューイはヘザーとは逆で、前の時代を象徴するキャラクターというのが興味深いですね。トミー・リーはレジェンドだから、共演する前はちょっと脅威を感じてしまいましたが、実際はとても優しい人でした。芸術として映画を愛している人だし、ヘザーを演じる際に、私にいろいろと挑戦をさせてくれたんです」
――主演のマット・デイモンさんは、どんな方でしたか?
「役者として尊敬できる人。脚本家としてもすばらしいし。私くらいの年齢の頃からいろいろなことにトライしてきて、本当に地に足の着いた頭のいい人です。周囲の人をハッピーにするし、撮影現場にすてきな雰囲気を持ち込んでくれる。いたずら好きで、すごく面白い人です(笑)」
――大ファンだったというボーン・シリーズに出演し、すでにオスカー像も手に入れ、20代でたくさんのことを成し遂げているアリシアさんの30代での目標を教えてください。
「私は壮大なプランを持つタイプではないし、あえて考えないようにしています。自分が欲しいものや情熱を感じるものは変わっていくと思うし、こうなりたいと口にしても、人生って大体その通りにはいかないことの方が多いですから(笑)。
でも、一番の願いは大胆さを持つことです。自分がその瞬間に正しいと思う方向に足を進められる勇気を持っていたい。とても難しいことですが。
私は映画作りが心から好きで、プロデューサー業も始めたところです。映画作り全体にかかわれることを、すごく楽しんでいます」
10月7日(金)よりTOHOシネマズ スカラ座ほか全国公開 (C) Universal Pictures
配給:東宝東和
公式サイト:http://bourne.jp/
CIAの元暗殺者だったジェイソン・ボーン(マット・デイモン)。記憶を失った彼は、CIAから命を狙われていましたが、何年もの間、姿を消していました。やがて記憶を取り戻したボーンは、元同僚のニッキー(ジュリア・スタイルズ)から、CIAが世界中の情報を監視し、技術開発やテロ活動までをも裏で操作することを目的とした、恐ろしいプログラムを始動したと知らされます。
一方、CIAエージェントのヘザー・リー(アリシア・ヴィキャンデル)は、ボーンが最も求めているものを提供すれば、再び彼をCIA側に取り込めるのではないかと考えます。でも、CIAが生み出した"最も危険な兵器"であるボーンは、リーたち追跡者すら想像できない、ある目的を持って動いていたのです……。
絶体絶命の危機に、反射的に対処できる完璧な戦闘能力を持つボーン。スピード感と臨場感を極限まで追求した、ポール・グリーングラス監督、マット・デイモン主演の本作は、アリシアが演じる野心を秘めたヒロイン登場の効果もあり、シリーズ最高傑作になっています。
(ライター 清水久美子)
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