「映画通し外国との懸け橋に」 岩井俊二監督
第29回東京国際映画祭、特集上映で会見
「スワロウテイル」「Love Letter」などで知られる岩井俊二監督の作品が、第29回東京国際映画祭(25日~11月3日)の「Japan Now」部門で特集上映されることが決まった。4日、日本外国特派員協会での記者会見に出席した岩井監督は「とても光栄。リラックスして映画ファンや評論家の人たちと向かい合って(特集上映の時間を)楽しみたい」と笑顔を見せた。
同部門の監督特集は日本から海外に発信したい映画監督を1人選んで特集する企画で、昨年の原田真人監督に続いて2人目となる。プログラミングアドバイザーの安藤紘平氏は今年3月に公開された新作「リップヴァンウィンクルの花嫁」を見て選抜を思い立ったという。「見た瞬間に日本人として誇らしく思った。岩井さんは、独特の美意識で寓話(ぐうわ)的に今の若い人の行動や思いを語る稀有(けう)な監督。(新作では)さらにそれを発展させ、素晴らしい作品に作り上げていた」と言う。
岩井監督は日本だけでなくアジアの国・地域に熱狂的なファンを持つ。移民を主人公に、日本語、英語、中国語がとびかう「スワロウテイル」(1996年)のような無国籍な世界観をいちはやく提示した映像作家でもある。「自分でも(ファンの広がりは)予想していなかった。『Love Letter』(95年)を作る前まではお隣の韓国にも行ったことがなかった。映画を通していろんな国と交流し、友達ができた。気がつくと(アジアの国・地域との)懸け橋のような立場に置かれることが多くなった。ちょっと荷は重いが、映画を作ることで自分なりに頑張りたい」と語る。
急拡大する中国市場での合作の可能性を問われると、「すでにいくつかプロデュースという立場で(中国映画に)関わっている。中国市場が拡大し、映画のバリエーションが増えると僕が作るようなアート映画にも可能性が出てくる」と期待を寄せた。
続いて外国メディアからロシアでの制作の可能性を質問されると「ロシア映画はクオリティーが高くゴージャス。ドストエフスキーのようにロシアの人たちは長い物語が好きだと聞いている。黒澤明監督の『デルス・ウザーラ』にならってロシアでやれるものならやってみたい。機会をください」とアピールした。
映画祭での上映作品は「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(28日)、「Love Letter」(28日)、「スワロウテイル」(28日)、「ヴァンパイア」(29日)、「リップヴァンウィンクルの花嫁」(29日)を予定している。
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