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日本語ラップの人気が拡大 即興対決やCMで熱気増大

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NIKKEI STYLE

 MCバトル番組『フリースタイルダンジョン』が人気を集めるなか、CMでは「ファンタ」や「氷結」などがラップを扱った作品を発表。新型のイベントも生まれている。日本語ラップシーンが盛り上がる理由を探る。

MCバトルから若者層にラップが浸透

日本語ラップシーンが盛り上がりを見せている。最近では音楽というジャンルを超え、テレビ番組やCM、イベントなど様々なエンタテインメントコンテンツにまでラップが使用される機会が増えている。

現在の日本語ラップ人気の火付け役となったのは、MCバトルを扱ったテレビ番組『フリースタイルダンジョン』(テレ朝)の存在だ。03年公開の映画『8Mile』で、主演の米国人ラッパー・エミネムが劇中でプレーして日本でも広く知られるようになったMCバトル。1対1で即興ラップをぶつけ合い、いかに韻をうまく踏めたかなどが審査員に判定され、勝ち負けが決まるバトルゲームだ。

12年には「高校生RAP選手権」が、BS放送のバラエティ番組『BAZOOKA!!!』(BSスカパー!)内でスタート。高校生に限定したトーナメント大会で、1大会のエントリー数は800人を超える。8月30日に行われた第10回大会は、日本武道館で開催された。

そして、2015年9月から地上波で始まった『フリースタイルダンジョン』が、MCバトル人気を一気に押し広げ、若者だけでなくラップになじみの薄かった大人たちにまでファン層を拡大した。挑戦者が、モンスターと呼ばれる凄腕ラッパーの漢やR-指定などを倒していくごとに、賞金を獲得できるロールプレイングゲーム的な設定も人気の理由。公式チャンネルのYouTubeでの総再生回数は半年で2600万回を超えた(現在はAbemaTVにて放送中)。観覧希望者が増えた結果、収録会場は今や2400人収容の東京・新木場スタジオコーストだ。

両番組に出演するラッパーのZeebra(ジブラ)は、「MCバトルは、若者にとってはお金をかけずに始められることが大きい。また、大人にとってもラップで格闘技をすることが新鮮に映り、ヒットしているのではないか」と語る。

CM業界でも、「日本コカ・コーラ(ファンタ)」や「トヨタ自動車(NOAH)」など、大手企業がラップを題材にした作品を放映している。

4月から放送されていた、俳優・菅田将暉出演の「ファンタ」のCMは、アドバイザーにラッパーのPUNPEE(パンピー)を起用し、本格的なラップ作品に仕上がっている。「16年5月度業類別CM好感度ランキング」では、ドリンク部門1位を獲得した(CM総合研究所)。担当したクリエイティブディレクターの生駒健太氏は、「"カラダが喜ぶ"だった歌詞を、"ボディをロックする"へPUNPEE氏に修正してもらい、CMのセリフっぽくない、ラップならではのフレーズにしていった。ターゲット層である若者の、カルチャーにまでCMが溶け込んだことで、好意的に受け入れられたのではないか」と語る。

自治体がラップで選挙推進

ラップを使った新しいイベントも生まれている。MCバトルのイベントでは、芸人や、社会人同士が争うものまで出現した。

6月4、5日には、東京都主催の無料イベント「TOHYOCYPHER(トーヒョーサイファー)」が新宿駅東口で開催された。18歳選挙権の周知キャンペーンで、般若などの著名ラッパー10数名が"選挙の大切さ"をラップを通して伝えた。両日ともに観客数は1000人を超えたという。 東京都選挙管理委員会事務局の小倉由紀氏は、「若い人が選挙を考えるための広報活動として、様々な方法を行ったうちの1つ。10代を含む若者が大勢集まってくれた」と手応えを感じている。

日本語ラップの広がりについて、ヒップホップサイト「Amebreak」の伊藤雄介編集長は、「近年のMCバトルの台頭が、日本語ラップの裾野を広げたことは間違いない。また、学生時代にKREVAやRIP SLYMEなどの日本語ラップを当たり前に聴いていた世代が30代40代となり、CMやイベントなど様々な業界で決定権を持つようになってきている」と、その理由を指摘する。

日本語ラップが浸透していくなか、誰もが知るような新たなスターや楽曲が生まれる日が近いのかもしれない。

(ライター 中桐基善、田口俊輔)

[日経エンタテインメント! 2016年10月号の記事を再構成]

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