真田丸グッズ ご当地で人気は「勉強系」
モノから探る「真田丸」(2)
NHK大河ドラマとしては3年ぶりに視聴率20%台を記録するなど、人気の高い「真田丸」。このドラマをグッズという視点から見ていく。前編(「真田が伊達政宗を抜く 真田丸が変える歴史グッズ事情」)では全国展開をしている専門店の売れ筋を探ったが、今回はドラマの舞台を訪ねてみる。大河ドラマは舞台となった地方に大きな経済効果をもたらすというが、「真田丸」はどれほどの効果を発揮しているのか、どんなグッズが売れているかを調べてみた。そこで見つけた、「受験生に人気」の戦国グッズとは?
上田市のお土産店の売り上げは倍増
真田幸村(信繁)の父・昌幸が築城した上田城がある長野県上田市。
「真田丸」の舞台セットや衣装を展示した「信州上田真田丸大河ドラマ館」が開設され、『真田丸』と書かれた旗が市内のあちこちにはためくなど、町は大河ドラマ一色。観光もすでに例年を大きく上回る好調ぶりを見せている。
「上田城は2014年度の入場者数が150万人だったのに対して、今年度は200万人を突破する勢いです。また、4月に催された上田真田まつりの入場者は、前年6万人だったのが、今年は10万人を超えました」(上田観光コンベンション協会スタッフ)
上田城内に設置されたドラマ館は、当初の目標だった年間入場者数50万人を7月末に突破。8月末には60万人を記録し、目標の倍の入場者数を達成する勢いだ。こうした盛況は市全体に広がっており、飲食店の数が足りないなど、うれしい悲鳴も上がっている。
上田駅前にある「おみやげ処 北村」の店長・北村賢太郎さんも、大河の影響に大きく驚いている一人。
「当店の売り上げは、一昨年の『真田丸』放送決定から、売り上げが前年比20~30%増加しました。さらに今年に入ってからは前年比50%増、月によっては倍増の時もあります」(北村さん)
5年分くらい、売り上げている感覚だという。
上田城の歴史を生かした人気グッズとは?
数多くの真田丸ファンが訪れる上田市では、どんなグッズが人気なのだろうか。北村さんによると「よく売れるのは食品や雑貨」。
会社などでお土産として配りやすいお菓子類だが、真田丸関連のお菓子は、ドラマの象徴といえる「六文銭」がかたどられるものが多く、もらった方もどこのお土産かがわかりやすい点が好評だという。
人気の「真田丸六文銭焼き」は、銭形の焼き印が入ったミニどら焼き6個入り。パッケージを開けると、並んだどら焼きが六文銭に見えるように工夫されている。
地酒を楽しみたい人に北村さんが薦めるのが「特別純米生原酒『真田左衛門佐 信繁』」。真田丸の主役と同じ名前を冠したこの酒は「店先の貯蔵タンクからその場で地酒を詰めるため、搾りたてのおいしさを楽しめる」という。黒地のとっくりには、真田信繁の本名であり商品名でもある「真田左衛門佐 信繁」の文字と六文銭が金色であしらわれている。
人気なのは食品だけではない。親子に人気があるのが、上田城の歴史を生かしたグッズだ。
「上田城は、真田家の宿敵・徳川家の猛攻に2度も耐えたことで有名です。そんな上田城にあやかって作ったのが "落城(おち)ない上田城"と大きく印刷された自由帳。親子連れにとても人気です」(北村さん)
受験生や試験を控えた家族のいる家庭へのお土産に喜ばれるという。受験シーズンが近づくにつれ、ますます人気が高まりそうな戦国グッズだ。
メディアで「真田丸」の好調ぶりが取り上げられるようになった2月ごろから、にぎわいが続くという上田市。9月中旬の放送では、上田城が舞台となる第2次上田合戦が描かれた。さらなる観光客数の増加が予想される。
「関ケ原合戦祭り」は地元の一大イベント
上田市のように、戦国武将を観光資源ととらえて観光客誘致を行っている自治体は少なくない。
岐阜県関ケ原町は、今から約400年前に起きた「関ケ原合戦」の舞台。「真田丸」では、合戦の様子を描かずにあっさりと終わり、ネット上で"超高速関ケ原"と話題になったが、歴史の上では、徳川家康と豊臣家の家臣・石田三成が全国の武将を巻き込んだ天下分け目の大戦だ。関ケ原では、武将たちの陣跡が再現されるなどして、古戦場であることを街全体でPRしている。
その一環として毎年10月に開催されているのが「関ケ原合戦祭り」。関ケ原町地域振興課企画係の小林孝正さんによると「歴史ファンをはじめとした観光客の集客が一番多い時期」だという。
祭りの内容としては、布陣パフォーマンスに始まり、全軍武者行列、合戦絵巻と進行していく。一番の盛り上がりを見せるのは、関ケ原合戦を描いた群集劇。全国からの有志によるヨロイを着た武者が合戦を再現し、毎年違った演出で行われる。
今年の開催日は10月15日、16日。「動員数は例年3万人を想定していましたが、一昨年は4万人、昨年は5万人と年々増加の傾向にあります。今年は『真田丸』で石田三成の人気が伸びていることから、昨年をさらに上回るのではないかと期待しています」(小林さん)
関ケ原合戦の名残は、現在も残る。徳川家康をはじめとした東軍、石田三成ら西軍の武将達が着陣した陣跡は「関ケ原古戦場」と呼ばれ、各武将の陣跡をめぐるウオーキングコースも人気を得ている。小林さんによれば「今年に入ってから、石田三成の陣跡がある笹尾山は例年よりも観光客を見かけるようになった」という。これも真田丸効果だろう。
"学べる"クリアファイルが人気
関ケ原駅から徒歩5分程度の場所に位置する「関ケ原町歴史民俗資料館」は、合戦や参戦武将の解説が充実している。レンタサイクルも行っているため旅の起点として利用する人も多い。
資料館のミュージアムショップは武将グッズが充実していることで有名だ。資料館オリジナルのグッズも多く、お土産や新たなグッズを購入するという目的で立ち寄る戦国ファンも多い。
ここで人気なのは、クリアファイルやノート、マスキングテープといった文房具類。関ケ原にちなんだデザインが、手軽なお土産として人気を得ている。特にクリアファイルは、年表・家系図・地図といった「学べる」要素があるものがよく売れるという。
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上田市、関ケ原町のどちらも、ドラマの影響で、戦国武将や合戦に対する一般への認知度が上がってきているタイミングで実施した、地元ならではのイベント、グッズ展開が、観光客に足を運ばせ、リピーターを生み出すきっかけとなっている。
大河ドラマの舞台となった観光地では、放送年よりもその翌年の方が観光客数が増加するといわれている。12月まで放送が続く「真田丸」だが、その集客効果はまだまだ続きそうだ。
(文 二川智南美、仲田佳恵=かみゆ)
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