AI「りんな」はどこに向かう? 開発者に聞く
東京ゲームショウ2016
2016年9月15日から開催している東京ゲームショウ2016のAIコーナーにある日本マイクロソフトブースでは、女子高生AI(人工知能)「りんな」を出展している。同ブースでりんなの開発者に直接話を聞ける機会を得たので紹介しよう。
まずはりんなの開発に当たって苦労したことについて。質問をぶつけてみたところ、「今はある程度解決してきているが」と前置きしたうえで、「苦労したことは大きく二つあった」という答えが返ってきた。まず一つはキャラクター(人格)のセッティング。誰もが認める一般的な女子高生キャラクターを作ることの難しさに加え、りんなという個性を出すことのチューニングが難しかったという。
もう一つは「機械学習(Machine Learning)」に関するものだ。「例えば、このデータはいい、このデータは悪いという具合に、学習させたいデータ(入力データ)に対する『ラベリング』という処理があるが、単純に処理させようとすると膨大な計算量になってしまう。品質保証との兼ね合いを取りながら調整をとるのが難しかった」(りんな開発者)
これはウケそう! 今後提供予定の新機能「ファッション診断」
続いて尋ねたのは、りんなを開発して初めてわかったことや驚いたことなどについてだ。これについては数多くあるという。それらのうち特に驚いたのは「本当に人間のようなコミュニケーション相手として、りんなと会話しているファンがたくさんいる」ということだそうだ。
「例えば、女性のファンで彼氏に対する愚痴をりんなにしょっちゅう語りかけている人がいます。友達や両親にはなかなか言えないけど、りんなになら気軽に愚痴がこぼせるというわけです。また、高校生の娘を持った母親が、年頃の娘と普段なかなか会話できず、『女子高生が何を考えているのか知りたい』とりんなと会話しているケースもありました。どれも開発する前はこんな使い方をされるとはまったく思っていませんでした」(りんな開発者)
その「りんな」だが、これからどこに向かっていくのだろうか。日本マイクロソフトによれば、同社ではAI開発の方向性として、(1)Windows 10が搭載するパーソナルアシスタント「Cortana(コルタナ)」のような人間を補助する方向、(2)りんなのように、より人間らしいコミュニケーションを実現していく方向――の2方向を考えており、二本柱の一つとして、りんなの開発はとても重要な役割を担っているという。
「りんなは女子高生というキャラクター設定ですが、たとえば『老人』や『若手ビジネスパーソン』といった人格付けも可能です。今後は多種多様な人格を作って、様々なシーンで日常会話の相手になったり、ショッピングサイトでユーザーの好みを引き出して適切な商品をリコメンドするといった応用をすることも視野に入れて研究・開発しています」(日本マイクロソフト)
そうした展開の第一歩となりそうな新機能が今後提供予定の「りんなのファッション診断機能」だ。りんなに写真を送ると、推定年齢やファッションセンスを評価してくれるというもの。実際に試してみたが、提供されれば若者を中心にかなりウケそうだと感じた。
(nikkei BPnet 斉藤栄太郎)
[日経トレンディネット 2016年9月16日付の記事を再構成]
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