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ボートに150人!地中海の難民救助に密着した

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ナショナルジオグラフィック日本版

内戦を逃れてきた人々、単によりよい生活を求めて故郷を出た人々――理由はさまざまだが、アフリカ各地からリビアを経由してイタリアのシチリアへ向かう地中海ルートは、ヨーロッパを目指すアフリカ難民たちの主要経路となっている。2016年はすでに、およそ27万人が海を渡ってヨーロッパへ入った。

リビアの領海を出たばかりの国際水域では、民間の救助船が難民ボートの捜索を続けているが、ゴムボートでの航海は危険がいっぱいだ。国際移住機関によると、2016年だけで3200人近い難民が命を落としている。2015年の同じ時期と比べて約20%多い。また、国連難民高等弁務官事務所は、5月には1週間で880人が溺れ死んだと推定している。その一方で、8月末までに11万7000人が地中海上で救助された。

難民救助船に同乗

今年初め、私は救助船のひとつ「シー・ウォッチ2」に同行し、15時間に及ぶ救助活動に同行し、24隻を超えるゴムボート救助に立ち会った。午前3時過ぎ、最初のボートが船のレーダー画面に捉えられた。緑色の頭をしたいも虫のような物体が、リビアの領海を出て北へ向かって漂うように現れた。やがて、水面に映る月の光を背にして、波に揺れるボートの形がはっきりと確認できるようになった。

全長約11メートルのボートをサーチライトの光がかすめると、鈍い灰色に光るボートの側面に無数の人間の足が並んでいるのが見て取れた。その様子はやはり、いも虫のように見えなくもない。

救助の陣頭指揮を執るインゴ・ヴェート氏が、メガフォンを手にボートに乗っている人々に呼びかけた。「おはようございます。私たちはドイツからやってきた医師です。皆さんを助けに来ました。怖がらないで、落ち着いて聞いてください」

船のブリッジへ戻ると、ヴェート氏はローマの海難救助管理センターへ電話を入れ、「ゴムボートを発見。完全にすし詰め状態です」と報告した。

その後、船の警報が3回鳴り響いたのを合図に救助隊員らが前甲板に集合し、救助活動が始まった。ヴェート氏の指示に従って、4人の隊員が小さな救命ボートを海面へ下ろす。

救命ボートに乗った救急小児科医のビア・シュミット氏は、難民たちを落ち着かせるために英語とフランス語で呼びかけながらゴムボートに近づくと、救命胴衣を配り、1回につき6人ずつ救命ボートに乗せて、本船へと運んだ。

ヴェート氏をはじめとする15人の救助隊員のほとんどは、ドイツのハンブルク出身者だ。ヴェート氏は故郷で、兄と友人と一緒に自動車修理工場を営んでいる。

隊員たちの本職は、アートセラピスト、救急救命士、海洋風力発電の安全管理員、商船の乗組員などさまざまだ。ヴェート氏は、自分たちが何か英雄的なことをしているとは考えていないと語る。「皆いたって普通の人々です。誰ひとりとして、英雄だとは思っていません。ただ、やるべきことをやっているだけです。自分たちと違って、幸運に恵まれなかった人々を助けたくて、仕事の合間や休暇中に参加しています」

史上最大規模の難民

その、幸運に恵まれなかった人々は、国連難民高等弁務官事務所によると世界中で6530万人を数えようとしている。英国の全人口にほぼ匹敵する、人類史上で最も多くの人が生まれた土地を後にしているという。

2011年にリビアの最高指導者ムアンマル・カダフィが殺害されると、同国は混乱に陥り、それに乗じてアフリカ各地からイタリアを目指す人々が大量に同国を通過するようになった。彼らを乗せた数百もの難民ボートが海に沈んでいったが、ヨーロッパの政治家はほとんどこの問題に目を向けようとしなかった。

2013年終わり頃、イタリア海軍が地中海上で難民ボートの捜索救助活動を始め、その結果15万人が救助された。ヨーロッパ諸国はこれに資金協力することを拒み、救助よりも国境防衛に力を入れはじめた。

そこで、民間の非営利団体である「国境なき医師団」が救助活動に立ち上がり、翌年にはベルリンを拠点とするシー・ウォッチが、さらに翌年には別の市民団体が、それぞれ船を出して活動に加わるようになった。

午前6時半を回ったばかりの頃は6隻だったゴムボートの数が、その2時間半後には倍以上に増えていた。そこへ、国境なき医師団の救助船2隻とイタリアの軍艦が応援に駆けつけた。

やがて時計の針が正午を過ぎると、ゴムボートはさらに増え、付近一帯はあたかも海上難民キャンプの様相を呈してきた。難民の数は2500人を超えている。

シー・ウォッチの甲板は、配布された保温用のスペースブランケットに身を包み、ペットボトルから水を飲む人々であふれかえった。

救助された人々を乗せた船がイタリアへ到着するのに、30時間を要した。一方、リビアからヨーロッパへ無事到達することのできたゴムボートは、これまでに1隻もない。

命を懸けて海を渡る

リビアからイタリアのシチリア島までの距離はおよそ450キロ。その海路をゴムボートだけで渡ることがどれほど無謀な行為であるか、はっきりと理解していた者は少ない。ある密航業者は、ヨーロッパまでの船旅は数時間程度で、「川を渡るようなものさ」と告げていたという。

難民たちは、ヨーロッパへの旅に全てを賭けて故郷を後にした。中には、スーダンのダルフール紛争やエリトリア政府による弾圧から命からがら逃げてきた人もいるが、その他の多くは今よりも暮らしやすい生活を求め、子どもたちに第一級の教育と明るい未来を与えたくて故郷を出てきたという人たちだ。

皮肉なことだが、懸命の救助活動が密航の一翼を担っているという面もある。

ほとんどの難民ボートは、リビアの領海のすぐ外、陸地から12カイリ沖で救助されている。沖へ出れば出るほど、ボートは転覆したり壊れたり、行方不明になる確率が高くなるのだ。

「リビアへ出向いていって、難民を引き取り、イタリアへ連れて行った方がずっと安全だと思うこともあります。そうすれば誰一人として命は失われませんから。ばかげたゲームですよね」と、ヴェート氏は語る。

これは、明確な解答のない複雑な問題だ。リビアの内政を正し、ヨーロッパへ合法的にわたる代替手段を移民や難民に与えればすむという話でもない。難民高等弁務官事務所は、再定住化、職業訓練や教育プログラム、家族の再会、人道的査証の発給など、正規の移住ルートを使ってもっと多くの難民を受け入れるよう各国に求めている。

国の方針を決めるのは議会だが、実態はなかなか上層まで伝わりにくい。しかし、多くの人々が命を落としている現場の海上で何が求められているのか、答えは明らかだ。

「海の男として、命の危険にさらされている人がいれば助けるのは当然のことです」環境保護団体グリーンピースのベテラン活動家でシー・ウォッチの船長ジョン・キャッスル氏は言う。「目の前でおぼれそうな人がいれば、まずは助けようとするでしょう。より大きな問題は、その後で何とかすればいいのです」

(文 Hereward Holland、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2016年9月15日付]

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