我が子に年齢を10歳若く教えてしまった
脚本家、中園ミホ
3歳の我が子に年齢を尋ねられたとき、保育園で周りに言うに違いないと思い、つい「トウネン(10年)とって35歳」と、10歳サバをよんで教えてしまいました。それから1年、子どもにシャレとわかるはずもなく「もうすぐ誕生日。ママは36歳になるんだね」と言っています。真実をいつ伝えるか悩んでいます。(愛知県・40代・女性)
「当年とって」とは、うまいこといいましたね。周りの人に知られても、シャレと分かれば笑い話になる。一瞬、私もそう思いました。でも、これは深刻なことかもしれませんよ。
周りの母親に子どもに年齢をどう伝えているかを聞いてみたら、なんと10歳以上サバをよんでいる人が2人もいました。コラムの編集担当さんの知り合いは、年齢を教えていないだけでなく、誕生日も祝わないとか。
女性として、若く見られたい気持ちはわからないでもない。保育園のママ友に年上扱いされたくない、という面もあるのでしょう。サバをよんだ母親はあなたを含め、みな高齢出産。それも関係がありそうですね。
とはいえ、いずればれること。しかも本当の年齢を知ったときに幼い子が受けるショックは相当なものです。日ごろウソをつくなと話す母親がなぜウソをついたのか悩むでしょう。
何より心配なのは、あなたが年をとることを後ろ向きにとらえていること。我が子の母親はもっと若くあるべきだと感じているのでしょうか。そして年はとるほどつらくなるという思い込み。待ってください。それこそ、子どもに言えませんよね。
オードリー・ヘプバーンはご存じでしょう。「ローマの休日」などの映画作品で、妖精のようにキュートな容貌で世界を魅了した名女優。私がひき付けられるのは、60歳を過ぎ、援助活動でアフリカやアジアの子どもたちとふれあっていた姿です。肌の輝きこそ若いころに及びませんが、人生経験で身についた柔和な表情と凜とした立ち姿。まさに美しき母親でした。人は何歳になっても若く美しくあれると、心から感動しました。
多分、あなたは既に努力している。いつまでも元気で美しい母親でいるため美容や運動に励み、何かに挑み続ける。昨今、美魔女と呼ばれる女性たちの原動力も、そんなところかもしれません。対して、ごまかしの術を使うのはただの魔女。ばれれば火あぶり。どうしますか。
おすすめの解決策は、あなたの次の誕生日にケーキを買ってくることです。そして年の数のろうそくに火をともし、お子さんに祝ってもらいましょう。「お母さん、実は46歳なの」。その場面で告白すれば、お子さんはろうそくの輝きに魅了され、早く大人になりたいと思うに違いありません。吹き消すときは少し熱そうですが、火あぶりよりはまし。早く真実を伝え、いつまでも美しい母親でいるための一歩を踏み出してください。
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[日経プラスワン2016年9月24日付]
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