「外貨預金の感覚」で堅実に始めるFX
FXは、証券会社や専業の取扱業者に一定の証拠金を預け、その金額の最大25倍の取引ができるという外貨投資の一種。
銀行などが扱う外貨預金は、日本より高い金利の通貨で預金することで高い利息が得られるのに加えて、預入時より為替が円安に進んだときは為替差益が得られるメリットがあります。FXも同様に、円安進行時に為替差益が得られるほか、利息に相当する「スワップポイント」を日々受け取ることができ、外貨預金と同じような運用効果が期待できます。
もちろん始めたときより円高に進んだ場合は、外貨預金もFXも同様に、為替差損が発生するリスクがあります。
外貨預金に比べ、利息が高めで手数料が安い
FXは、少ない元手(証拠金)でその何倍もの額の投資ができ、高レバレッジ(倍率)の取引ほど、為替が期待する方向に動いたときの利益は大きく膨らみます。逆に、期待に反して動いたときの損失も拡大してしまいます。そこで、リスクを抑えたい場合は、証拠金と取引額が同額の「レバレッジ1倍」から始めるのがおすすめです。1倍なら、外貨預金のような感覚で運用でき、しかも外貨預金より有利な点もあります。
まず、利息に相当するスワップポイントが、外貨預金の利息よりも総じて高めという点。例えば外貨投資で人気の通貨、オーストラリアドル(豪ドル)の場合、1万豪ドル(約78万円)の外貨預金で1年間にもらえる利息は3780円。対してFXのスワップポイントは年に9490円も受け取ることができ、2倍以上もお得になります(下の表)。
さらに、外貨に換金する際の手数料が格段に安いのも有利な点。1万豪ドルを取引した場合の表の例では、外貨預金だと往復(円から豪ドルに換金して預金し、満期後に豪ドルを円に換金する)で手数料が4万円かかるのに対し、FXはわずか70円。かなり大きな違いがあります。
ちなみにFXの場合、為替手数料に相当する値は「スプレッド」として表示されます。円と豪ドルで取引する組み合わせのスプレッドが0.7銭である場合、「円で豪ドルを買い、その取引を決済するまでの一連の手数料(往復)として1豪ドル当たり0.7銭がかかる」ことを示します。
現在保有していない通貨からも取引開始できる
金利や手数料以外の面では、FXは取り扱う通貨が幅広く、さらに現在持っていない通貨でも取引が始められるメリットもあります。
外貨預金の場合、まずは保有する円で外貨のドルやユーロなどを購入して預金をしますが、FXは例えばユーロを保有していなくても「ユーロを売ってドルを買う」という取引が可能です。数多くの取り扱い通貨の中から「円売りドル買い」「円売りユーロ買い」など円をからめた取引はもちろん、「ユーロ売りドル買い」「ポンド売りドル買い」など多様な組み合わせの取引ができるのは大きな強みです。
ほかにも、外貨預金は満期まで中途解約できない場合が多いのですが、FXはいつでも決済できる利点があります。急激に為替が変動した局面では、一定以上の含み損が出ると強制的に決済し(ロスカット)、損失が膨らまないようにコントロールする仕組みもあります。
業者選びではスワップポイントと手数料水準を比較
FXを始める際に、どの業者を選ぶかがまず大事なところ。前述のスワップポイントや為替手数料は業者により違うので、事前に見比べましょう。
特にFXの初心者は、最低取引単位もチェックすべき点です。FXは取引単位を1万通貨単位からとする業者が多く、その場合、豪ドルだと約78万円の資金が必要になります(レバレッジ1倍の場合)。しかし、中には1000通貨単位(約7.8万円)から扱う業者もあるのでこうしたところを選び、できるだけ小口の投資からスタートするのが理想です。
FXは証拠金の額の最高25倍の取引ができてしまうため、つい調子に乗って高レバレッジで取引したり、注文を出す際にうっかり間違えたりするのが心配という方がいるかもしれません。その場合も、レバレッジ1倍の取引しかできない「外貨預金型」の口座や専用ツールを使えばリスクは抑えられます(下の表)。特に、取引に慣れるまではこうした安全策をとっておくのも一案です。
(構成 日経BPコンサルティング 「金融コンテンツLab.」、ファイナンシャルプランナー 福島由恵)
日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(http://consult.nikkeibp.co.jp/sp/money/)は、難しくなりがちなお金の話題を、分かりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信に当たっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。