旧型iPhoneでもSuicaが使える 新型Apple Watch
アップルは日本時間の2016年9月8日、iPhone 7とともに、大きく変わったApple Watchの新モデル「Series 1・Series 2」を発表した。
最も安いアルミニウムケースの場合、Series 1は2万7800円から、Series 2は3万7800円から。代表的なステンレススチールケースの場合、Series 2は5万5800円(38mmケース)、6万800円(42mmケース)からとなる(バンドの種類によって価格は変わる。Series 1はアルミニウムケースのみ)。どちらも9月16日に発売された。
新しいApple Watchはどう変わったのか、詳しくチェックしてみた。
ついにGPSを内蔵、水泳でも使える
今回発表された2モデルのなかで、上位モデルとなるのが「Apple Watch Series 2」だ。「内蔵GPS」「耐水性能」「新しいデュアルコアプロセッサー」「明るいディスプレー」「Suica対応」など、多くの要素が追加されている。
まず注目すべきはワークアウト機能の向上だ。従来のモデルでは、GPS機能を本体に搭載していなかったため、ランニングなどのデータを正確に計測しようとするにはiPhoneを携帯する必要があった。しかし、Series 2では、新たにGPSが内蔵されており、iPhoneを持たずとも屋外での運動を正確に測定できるようになる。走ったルートなどの情報も、あとからiPhoneで確認できるという。
ディスプレーには、第2世代の感圧タッチ対応ディスプレーが搭載された。輝度は1000nitと、従来の2倍の明るさとなっている。従来モデルでは、強い太陽光の下では文字盤が見にくくなることもあった。画面が明るくなったことで、屋外で利用しやすくなるだろう。
海や水中で使用できるようになった点も大きい。Series 2では、水深50mでの防水に対応し、水泳やサーフィン中の運動を記録できる。スピーカーにも工夫が施されており、内部に入った水は音の振動を利用して排出されるようになっている。
Suica対応や「ナイキモデル」も
Apple Watchを使った電子決済「Apple Pay」が日本で使えるようになることもポイントだ。サービス提供開始は2016年10月下旬からとなる予定。iPhone 5以降のiPhoneを持っていればApple Watchで利用できる。電子マネーは、iDやQUICPayに加え、Suicaも対応する。電車やバスなどの公共交通機関やコンビニの支払いに使えるので、Apple Watchが活躍するシーンは一気に拡大するだろう。
また有名ブランドとのコラボモデルとして、ナイキとの「Apple Watch Nike+」が新たに加わった。ランナー向けにバンド全体に通気用の穴を並べることで軽量化し、通気性が向上している。またナイキ専用の文字盤も用意される。こちらの発売は10月下旬となる。
エルメスとのコラボモデル「Apple Watch Hermes」も、9月下旬にApple Watch Series 2との組み合わせで新デザインのバンドを追加する。注目は「ダブルバックル・カフ」バンド(38mmステンレススチールケースとセットで15万3800円)で、エルメスのサンダルからインスパイアしたデザインを採用している。
一方、最上位モデルである「Apple Watch Edition」からは、100万円を超える18金モデルがラインアップから姿を消した。かわりに登場したのが白いセラミックケースを採用する新しいモデルだ。価格は12万5800円(38mmケース)~13万800円(42mmケース)に落ち着いている。「Apple Watch Edition」という名称や、充電ドックが付属する点などは引き継いでいる。
なお、Apple Watchの公式サイトには、従来のオリジナルモデルにあった「Apple Watch Sport」という表記がなくなっている。Series 1、2ともに「Apple Watch」として販売されるようだ。ただし、ケースを「アルミニウム」か「ステンレススチール」で選択でき、スポーツバンドも選べるため、実質的にアルミニウムケース&スポーツバンドという「Apple Watch Sport」と同じ組み合わせで購入できる。
2万円台の廉価版モデルも
アップルの発表会ではSeries 2がメーンで紹介されたが、新モデルとして「Series 1」も発売される。Series 1はオリジナルApple Watchからのスペック改良版。チップセットは新しいデュアルコアプロセッサーを搭載し、OSは最新のWatchOS 3に更新されている。38mmサイズでは2万7800円、42mmサイズは3万800円となっている。
ただし、Series 2と比較するとバリエーションや機能は限定的。バリエーションについては、アルミニウムケースとスポーツバンドの組み合わせのみとなっている。
機能については、Series 2と違ってGPSが内蔵されていないため、ワークアウトでの単独利用には向かない。また、Series 1はIPX7等級の耐水性能と防沫性能を備えるが、Series 2とは異なり、水中での使用は推奨されていない。
Apple PayについてもFeliCaを搭載しておらず、交通機関やコンビニなどでのSuica利用はできない点に注意したい。
■新OSの注目は「Dock」機能
新しいApple Watchには、Series 1、2ともに、watchOS 3が搭載される。実用面で注目できるのは、サイドボタンを押したときに表示される「Dock」だろう。
Dockに配置したアプリは、必要に応じて素早く起動できる。発表会では「起動速度は最大7倍になる」とうたわれていた。サードパーティー製のアプリがより快適に起動するようになれば、Apple Watchが持つ価値は倍増する。
一方で、従来採用されていた「グランス」(画面下端から上方に向かってスワイプすると表示されるショートカット画面)は廃止される。以前は、Apple Watchアプリのグランス対応が、ユーザーがアプリを選ぶ際の重要な要素だったが、Dockへの移行によってアプリの選択にも変化が生じるかもしれない。
1万円高くてもSeries 2だ
新しいApple WatchのライバルとなるAndroid Wear搭載スマートウォッチの相場は2万~3万円台と安く、アナログ時計らしいデザインを採用する機種も多い。ただしiPhoneで連携する場合には、使える機能は通知に限定されることも多い。iPhoneユーザーが使うという前提で考えた場合、実用面ではApple Watchに到底及ばない。
Apple Watch Series 1と2の価格にも差がある。最安な組み合わせの一つである「38mm・シルバーアルミニウムケース」&「ホワイトスポーツバンド」で比べると、Series 1は2万7800円、Series 2は3万7800円となる。後者のほうが1万円ほど高額だ。
しかし先述の通り、防水性能やGPS機能、FeliCaでの決済対応と機能差は大きい。長期的な運用を前提にすれば、4万円以上出してもSeries 2を選択する価値は十分にあるだろう。また、いままでスマートウォッチを触ったことがない人にとっても、手を出してみるよいタイミングとなるのではないだろうか。
(ライター 井上晃)
[日経トレンディネット 2016年9月13日付の記事を再構成]
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