ホンダ2代目NSX 2000万円超えでも割安?
ホンダはスポーツカー「NSX」を2017年2月27日に発売すると発表し、8月25日から受注を開始した。グレードは1種類だけで税込み価格は2370万円。
米国の研究所を拠点に日米合同チームで開発
ホンダ初のスーパーカーであるNSXが送りだされてから26年、初代の生産が2006年に終了してから10年を経て、ついに待望の2代目の発売が決まった。初代、2代目の共通点は、2シーターのミッドシップスポーツカーであることだけで、2代目はすべてをゼロから開発したオールニューモデルだという。
開発は米国の研究所を拠点に、日米のエンジニアが参加する合同チームで進めてきた。製造は栃木や鈴鹿の日本工場ではなく、米国オハイオ州のメアリズビル四輪工場に隣接する新しい専用工場、パフォーマンス・マニュファクチャリング・センターで行う。
スーパーカーらしいスタイル
デザインは流麗なシルエットを持つ先代と比べ、かなりアグレッシブ。オハイオと栃木にある最新の風洞実験施設でテストを重ね、空力と冷却性能を高次元で両立できるスーパーカーらしいスタイルだ。
ボディーサイズは全長4490×全幅1940×全高1215mmとなり、初代NSXの全長4430×全幅1810×全高1170mmと比べてひと回り以上ワイドになった。
ボディーの骨格は、高剛性の押出成形アルミ材を中心とした複数素材によるフレーム構造を採用。パネルにもアルミ、カーボンファイバー、高温にも耐えるプラスチックなどさまざまな軽量素材を取り入れることで、軽量化だけでなく重量配分の最適化や耐久性の確保にも役立てている。
Sport Hybrid SH-AWDが走りをスーパーカーらしく、ハイブリッドカーらしく
ミッドシップに搭載するパワートレインは、3モーター方式のハイブリッドシステム「Sport Hybrid SH-AWD」。これは新開発の3.5LのV型6気筒ツインターボエンジンと9速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)で後輪を駆動し、左右二つの高出力モーターで前輪を駆動するもの。前輪のモーターは左右で独立し、左右の車輪の駆動力を可変して旋回時の安定を高めるトルクベクタリングを可能にしており、鋭いコーナリングや加速が楽しめるのが特徴だ。
同様の構造を持つSport Hybrid SH-AWDシステムは、7速DCTタイプをホンダのラッグシップセダン「レジェンド」にも搭載しているが、レジェンドがボンネット内に排気量3.5LのV型6気筒直噴エンジンを横置きしているFF車ベースであるのに比べ、NSXはスーパーカーらしい仕様といえる。
ターボエンジン単体の性能は507ps/6500rpm、最大トルク550Nm/2000rpm~6000rpm。これに3つのモーターが加わることで、システム出力の合計は581ps/646Nmを発揮する。しかもスーパーカーでありながら、燃費性能は12.4km/Lと実用的。また走行状況に合わせて4つの車両特性モードが選択できる「Integrated Dynamics System」によって、パフォーマンスを引き出すだけでなく、ハイブリッドカーらしい静かな走りも可能という。つまり街中でもサーキットでも楽しめるオールマイティーなスーパーカーに仕上がっているらしい。
初年度は100台販売で既に数年待ち
日本での販売は、専用のメンテナンス設備と特別な教育を受けたサービスマンが常駐する「NSX PERFORMANCE DEALER」で行う。これはホンダの正規ディーラーのうち、127店舗の中に新たに開設するもので、カバーエリアは全国各地なのでメンテナンスなどに困ることはなさそうだ。
初年度は100台販売する予定だが、既に納車は数年待ちという声も聞こえている。これは、ハンドメードの部分が多いので、1日5台程度しか生産できないことも理由のようだ。
2代目NSXの計画はかなり前から進められていたが、2008年のリーマンショックの影響で見直され、新開発のV10エンジン搭載するプランはお蔵入りとなってしまった。その後、ホンダは2012年1月の北米オートショーでハイブリッドAWDシステムを搭載する「NSXコンセプト」を発表し、北米を拠点に2代目NSXの開発と生産を行うことを明らかにした。
ただ、コンセプトモデルの発表から、3年以上がたっていることもあって、デザインについては新鮮味がやや薄れてはいる。また、スポーツカーらしいドライバーシートを中心とした機能性の高いインテリアが追求されてはいるものの、やはりライバルとなるスーパーカーに比べると、やや薄味に感じてしまうのは事実だ。
例えばアウディ「R8」は2016年に新型が投入されたばかりだが、540psの5.2LのV10型DOHCエンジンを搭載し、同じくAWDシステムを備え、インテリアなどはゴージャスだ。価格も税込みで2456万円からと比較可能なライバルだけに、NSXがどう評価されるか気になる。
なにしろ新型NSXの価格帯は、ミッドシップのレイアウトにこだわらなければ、ポルシェ「911ターボ」(税込み2236万円)やベントレー「コンチネンタルGT」(税込み2430万円)、アストンマーティン「DB9」(税込み2265万円)などさまざまなスーパーカーがひしめいているのだ。また、この手のモデルを検討するユーザーは、価格相応なら数百万以上高くても気にしないはずで、そうなるとより高価なモデルもライバルになりうる。
とはいえ、2代目NSXはこのクラスのスーパーカーとしてはかなりの高性能でありながら、比較的手ごろな価格を実現した一台であることは間違いない。世界的人気モデルとなった先代を超えられるかは、高性能さや扱いやすさといった特徴をどうアピールしていくか、2代目の育て方にかかっているといえるだろう。
(ライター 大音安弘)
[日経トレンディネット 2016年9月2日付の記事を再構成]
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