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武満徹没後20年 娘と渡辺香津美さんが語る

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今年は20世紀屈指の現代音楽の作曲家、武満徹(1930~96年)の没後20周年にあたる。国内外で記念公演が相次ぐ中、改めて注目を集めているのが彼の歌や映画音楽のメロディーだ。戦時中にシャンソンを聴いて作曲家を志した武満にはクラシックとポップスとの垣根はなく、難解そうな現代音楽にも歌が流れている。映像では娘の武満真樹さんとジャズギタリストの渡辺香津美さんが作曲家の素顔を語る。武満徹のギター曲を弾く機会が多い3人のギタリスト、荘村清志さん、福田進一さん、鈴木大介さんにも話を聞いた。

8月19日、白寿ホール(東京・渋谷)で開かれた「ギター・フェスタ2016 武満徹へのオマージュ2」。鈴木大介さんがギター用に編曲した武満の映画音楽「ワルツ~他人の顔」を弾き終えると、連続演奏の途中ながら思わず歓声と拍手が巻き起こった。哀愁を帯びたワルツのメロディーは「パリの空の下」や「サンジャンの私の恋人」などシャンソンの名曲に通じる。安部公房原作、勅使河原宏監督の1966年の映画「他人の顔」では前田美波里さんがドイツ語で歌っている。洗練された都会のムードが漂う上質の歌謡曲ともいえる。

武満が活躍した20世紀後半は無調や十二音技法、トータル・セリエリズム(総音列技法)など難解な理論で構築された現代音楽の前衛作品が進歩的と見なされる時代だった。武満もいわゆる現代音楽を作曲して世界的に名声を高めた。「アステリズム」「ノヴェンバー・ステップス」「鳥は星形の庭に降りる」といった代表作は、旋律をたどって口ずさめるとはとても言えない作品だ。一方で、親しみやすいメロディーを持つ歌や映画音楽も数多く作曲した。作家の五木寛之さんが作詞した「燃える秋」をはじめ歌謡曲でもヒットを飛ばした。武満と親しかった人々の話からは、様々なジャンルの音楽を分け隔てなく楽しみ、歌を愛した作曲家の素顔が見えてくる。

「武満さんはメロディーメーカー。どんな種類の音楽でも書ける人だった」と福田進一さんは語る。ギターフェスタに出演するため8月に来日したフランスのギタリスト、ジェレミー・ジューヴさんは、白寿ホールでのリハーサルで「ワルツ~他人の顔」を初めて聴いて、どこの国の曲か知りたがったという。「これも武満さんの曲だよ、と教えたら非常に驚いていた」と福田さんは話す。

娘の武満真樹さんは、父が作曲家を目指すきっかけとなった曲として、あるシャンソンを挙げる。戦時中、武満ら子供たちが勤労動員された食糧基地の宿舎に学生将校が突然やってきて、当時は敵性音楽だったフランスのシャンソンを蓄音機で聞かせた。その歌が「聞かせてよ、愛の言葉を(Parlez-moi d'amour)」だった。不意に美しい歌と出合い、「もし戦争が終わったら自分は音楽を作る人になろうと思ったんだって」と真樹さんは語る。

同日の「ギターフェスタ」では、荘村清志さんが武満の初めてのギター独奏曲「フォリオス」を弾いた。「日本人によるギターのオリジナル曲を増やしたくて作曲をお願いしたら承諾してくれた」という74年の作品だ。「当時の武満さんはギターを全然弾けなかったと思うし、ピアノで作曲したので、ギター曲としては弾くのがとても難しい」と話す。荘村さんの演奏を見ると、運指の移動距離が大きくて弾きにくそうだ。「でも80年代以降の作品はギター的になった」。荘村さんが同日弾いた93年作曲の「エキノクス」などは、ギターのコードの位置も踏まえたような自然な運指に変わっていた。「武満さんはギターを持っていた。懸命に独学したんだと思う」と荘村さんは言う。

「父は学(がく)が無かったからね」と真樹さんは笑って話すが、むしろ武満徹が独学の人だったことを誇っている様子だ。最終学歴は高卒。音大に進学しなかったからこそアカデミズムの権威にとらわれず、クラシックもロックも対等に扱う自由な発想を持ち続けることができた。「メロディーがあるとか無いとか、無調とか、調性音楽だとか、うちの父の中ではそういう区別はなかった」と真樹さんは語る。

「父はビートルズのアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を毎晩聴き、ポール・マッカートニーさんにファンレターを書いていた。私が熱を上げていたプリンスもよく聴くようになった」と真樹さん。英国ロックのニューウェーブバンド、ジャパンのリーダーだったデヴィッド・シルヴィアンさんの楽曲も大好きで、親交も結んだ。「音楽家、作曲家とは付き合うなと父に言われた。どうしても付き合うのならクラシックではない音楽家にしろって娘に言うのよ」。ロックファンの武満徹。これも事実だ。

「父は若い自由な人たちと一緒にいるのが好きだった」と真樹さん。YMOにも参加した日本最高のジャズ・ギタリスト、渡辺香津美さんのコンサートに父と娘2人で足を運び、後に親友になった。真樹さんの20歳の誕生日に父が贈ったプレゼントは、坂本龍一さんが共同プロデュースを務めた渡辺さんの傑作アルバム「KYLYN(キリン)」だった。今年デビュー45周年の渡辺さんは武満の音楽について「非常にメロディーの懐が深い」と指摘する。

12月21日には渡辺さんがリーダー役となってオーチャードホール(東京・渋谷)で記念コンサート「没後20年 武満徹の映画音楽」を開く。パーカッションのヤヒロトモヒロさん、アコーディオンのcobaさん、そしてギターの鈴木さんが参加する。鈴木さんは9月14日、武満の最後の作品を20年ぶりに再録音したCD「森のなかで/鈴木大介」を出す。4人とも「父が敬愛した音楽家だった」と真樹さんは言う。ゆかりの演奏家を中心に記念公演が相次ぐ。

「武満さんの歌や映画音楽をギターで弾いていると、難解なイメージの実験的な前衛作品からも歌が聞こえるようになる」と鈴木さんは言う。聴き慣れない音楽には現代の新しい旋律がある。新しすぎて従来のメロディーらしく聞こえないだけだ。夜明けのような、懐の深いメロディーに親しみ、口ずさめるようになるまで、武満徹の音楽は聴かれ続ける。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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