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藍井エイル 世界を駆ける"アニソン界の歌姫"

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NIKKEI STYLE

『アルスラーン戦記』や『ソードアート・オンライン』など多くのアニメ作品に親和性の高い楽曲を提供、デビュー5年でアニソン界の歌姫の座を不動のものにした、その魅力とは。

 アニソンを武器に、世界を視野に活動を続けるアーティストが藍井エイルだ。2015年は、パリやロンドンで開かれたアニメフェスでのライブを皮切りに、シンガポール、香港での単独ライブを含む世界8カ国を回る世界ツアーを敢行。2016年5月には、ニューヨークのグラマシーシアターで単独公演も成功させた。

 もちろん日本でも、彼女の楽曲は多くのアニメファンの心をつかんでいる。オリコンランキングだけでなく、「mora」のハイレゾ配信でも常に上位に。昨年には日本武道館にも進出し、満員の会場を湧かせた。

 さらに、15年5月に続き、7月22日にも『ミュージックステーション』(テレ朝系)に出演。アニソンとともに自身を発信、音楽界全体で存在感を増し波に乗る彼女が、10月のデビュー5周年を前に思うこととは。

海外に行って感じるのは、アニメやアニソンだけでなく、日本文化そのものに興味を持ち、愛してくれている方がとても多いということ。それは、アニソンを日本文化のひとつとして認識してくれているということにほかならなくて。日本語で話しかけてくれる方もいますし、昨年訪れたペルーではファンと一緒に習字をやったりもしたんですけど、みなさん本当に楽しそうに参加していて。外に出ることで日本やアニソンの良さを再認識することは多いですね。

アニソンでいうと、もちろん今も『セーラームーン』や『ドラゴンボール』の楽曲は人気なんですけど、放送中のアニメもどこの国の方もほぼタイムラグなく知ってくれていて、世界が同じ時間軸になってジャンルが広がっていることを感じます。

ずっと海外公演は、"アニメの曲を世界に届けていく"というスタイルでやってきたのですが、今度は海外の盛り上がりを日本に逆輸入できるようにしたいですね。

新曲『翼』に懸けた思い

 彼女の持ち味は、センシティブでありながら力強い高音のパワーボーカル。その歌声を最大限に引き出しているのが、ロックを基調としながらも、耳になじむ歌謡メロディーに彩られた楽曲たちだ。現在までに3枚のアルバムを発表。初期はバンドサウンドに比重が置かれていたが、近作の『D'AZUR』ではデジタルサウンドからポップスまで、実に幅広い音楽性を提示している。

 7月に発売された最新シングル『翼』は、藍井エイルの本領発揮ともいうべき疾走感のあるメロディアスなロックナンバー。ラテン調の情熱をまとうこの曲は、放送中のテレビアニメ『アルスラーン戦記 風塵乱舞』のオープニングを飾る。アニメタイアップは約1年3カ月ぶりだ。

新しい楽曲を作るときは、聴いてくれた人に歌詞が届くかどうかを大切にしています。『翼』は、目標を失いそうになっても周りに大切な人がいる、支えてくれる人がいるからこそ諦めずに前に進むことができる"決意"がテーマ。『アルスラーン戦記』の主人公にも重なる内容です。私自身、最近周りに支えられていると感じる場面が多くて。海外ツアーや歌番組出演、日本武道館や全国ツアーなど、夢が叶っているのは周りの大事な人たちが背中を押して、一緒に喜んでくれるから。自分1人じゃないって信じられるから、何か新しいことにチャレンジするときにも安心して迷えるんですよね。

 活動のターニングポイントについて尋ねると、「ライブ」と即答。彼女の本質的な熱さが垣間みられるパワフルなステージングは、観客にも伝播する。

ライブが好きだということもありますけど、なりたいアーティスト像があって、それに近づきたい。毎回ライブの後は映像を見直して、良かった点悪かった点を書き出すんです。あの曲の入りのテンションがもっと高ければもっと盛り上がったとか、ポイントはいろいろなんですけど。ワンマンでもフェスでも、同じ空間で同じ瞬間をファンの方と共有できたらうれしい。

 "アニソン界の歌姫"。各メディアにおいて彼女は今、そう呼ばれている。「私はアニメを見て育ってきたし、大好きなので、初めは主題歌を歌えることが驚きだったんです。でもアニメファンにも受け入れてもらえて、海外に行けたのもアニソンがあったから」と、自身はフランクに受け止めているようだ。「これからも、アニメが素敵だと思ってもらえる歌を歌いたい」。そう続けた言葉には、アニソンの未来を感じさせた。

(ライター 山内涼子)

[日経エンタテインメント! 2016年9月号の記事を再構成]

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