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フラミンゴが呼び覚ました感覚 ある夏の「脱走劇」

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NIKKEI STYLE

朝晩の涼しさに秋の気配を感じる頃になりました。今年も自然の力を思い知らされる夏でした。自然と対峙するのではなく受け流す、自然に優しい技術、発想の転換を急がなければと感じました。人類の発想の根底が自然を荒々しくさせているように感じるのは僕だけでしょうか?

北海道のアブラゼミ

さて皆さんの夏の思い出は何だったでしょうか? 僕の今年の第1位は旭山動物園で初めてアブラゼミを発見したことでした。たった1匹1日だけでした。実は数年前からミンミンゼミも数日間だけ鳴き声を確認しています。抜け殻は確認していません。果たして定着しているのかナゾです。

この時期内地からキャンピングカーなどマイカーで北海道旅行をされる方が旭山動物園にもたくさん訪れます。もしかしたら東北や道南で捕まえたセミを「死んでしまうから放してあげなさい」ということの結果なのかもしれません。

セミのことが気になって少し調べてみると、北海道ではアブラゼミやミンミンゼミ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミなど内地ではおなじみのセミたちが局所的に分布しています。旭川ではニイニイゼミは昔からエゾゼミやアカエゾゼミと同じ夏になると普通に見られます。

ところがニイニイゼミは道南から道央、旭川に連続して広く分布しているわけではありません。札幌圏は10種類ものセミが確認されていますが、局所的に点在するように生息している種も多いのです。温泉地で地熱の高いところだけに分布する屈斜路湖のミンミンゼミとか……

北海道は開拓が始まってから多くの人と共に物資が運び込まれました。もしかしたらその物資と共に多くの生きものも運ばれヒトと共にたくましく定着した種がいるのかもしれません。百年たったら在来種、ともいわれますが果たしてあのアブラゼミ、温暖化で北上か、と思いがちですが真相はいかに?

ヨーロッパフラミンゴの飛翔

夏の思い出といえば、4年前のフラミンゴの脱走が強烈でした。結局捕獲はできず消息不明で終息宣言となりました。ことのてん末については旭山動物園HPのゲンちゃん日記(園長室から)に詳しくあるので一読していただきたいのですが、とにかくたくましく、美しく、恐ろしくさえ見えたあのフラミンゴのことを書きたいと思います。

2012年7月18日1羽のヨーロッパフラミンゴが大空に向かって飛んでいきました。

飛んだことで眠っていた脳の回路に一斉に電源が入り起動した、まさにそんな状態だったのだろうと思います。飛んだ瞬間に、僕たちの知っていたフラミンゴではなくなっていたのです。全く別の生きものになりました。

飼育下では飛べない、安全、食べ物は保証されている状態でした。この環境下でフラミンゴは本来の能力のほんの一部のみを使い生きていました。それが負の形で行動に表れていたのだと思い知らされました。

集団への依存性がとても強く、単独で隔離するだけでも餌を受け付けずに衰弱する、神経質で捕まえたりするとショック状態に陥りやすい……旭山で17年間暮らしていたフラミンゴが単独で全く土地勘のない自然の中で生きていられるはずがない、一刻も早く見つけてあげなければとの思いは全く的を射ない思いでした。

鳥類は一般的に育児期間が短い種が多く、餌をとる練習すら行わずに親鳥が離れ巣立ちを迎えてしまう種も多くいます。これは本能、あらかじめ組み込まれていた行動や反応の回路が多いことを意味するのでしょう。

カッコウ、皆さんも鳴き声を聞いたことがあるでしょう。彼らは託卵をすることで有名です。狙いを定めた別種の鳥の巣の中に目を盗んで自分の卵を1卵だけ産み落とします。

その卵はヒナに孵(かえ)ると機械的な反射でその巣の中にある卵をすべて巣の外に落としてしまいます。育ての親は巣の中にいるものに対しては攻撃の回路が働かないため、その行動を眺めるだけで、巣の中に残ったヒナの菱形に開いた口の中にこれまた反射的に運んできた餌を入れ育ててしまいます。

やがて別種の鳥に育てられ巣立ったカッコウは、カッコウの姿を一度も見ることなくちゃんとカッコウになります。何十世代何百世代にわたり種をつなぎ続けているのです。

タカ狩りに使う猛禽(きん)類、飼育下で生まれ育った個体は風を捕まえ舞い上がることができないといわれます。巣立ってからも親と行動を共にする期間の長い猛禽類は生まれつきできることよりも学習でできるようになることの方が多いように思います。

脱走したフラミンゴは、ピンポイントで汽水湖に舞い降りプランクトンを食べ気流を捕まえ数時間で200キロ以上離れた場所に飛び、アオサギを指標として行動することで、見たこともないキタキツネやオジロワシから身を守りました。

ヒトはヒトのつくり出した環境、社会、時間の中で縛られながら生きていきます。定年を迎え退職をしてその縛りから解放されます。自然の中に身を置く登山。高齢の方に登山をされる方が多いのは、それまで眠っていた回路が退職を機に起動し、ヒトが本来持っている感性や感覚が覚醒するからなのかもしれませんね。

坂東元(ばんどう・げん) 1961年旭川市生まれ。酪農学園大学卒業、獣医の資格を得て86年から旭山動物園に勤務。獣医師、飼育展示係として働く。動物の生態を生き生きと見せる「行動展示」のアイデアを次々に実現し、旭山動物園を国内屈指の人気動物園に育てあげた。2009年から旭山動物園長。

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