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「賃上げETF」上場相次ぐ 積極投資に長期成長期待 ETF最前線(1)

2016/8/30

 上場投資信託(ETF)に興味があります。新聞で「日銀が『賃上げETF』を買い入れ」という記事を読んで気になっています。日銀が購入するということは底堅い値動きが期待できるのでしょうか。

 「賃上げETF」と呼ばれるのは、正式には「設備投資や人材投資に積極的な企業の株式を対象とする指数に連動するETF」だ。日銀が昨年12月の政策決定会合で今年4月から、毎年最大で3000億円を購入すると決めたのをきっかけに、運用会社が相次いで組成。現時点で東京証券取引所に6本上場している。

 賃上げETFが連動する指数には4種類がある。採用するETFが最も多いのが日本取引所グループや米S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスなどが算出する「JPX/S&P 設備・人材投資指数」。日興アセットマネジメントやブラックロック・ジャパン、DIAMアセットマネジメントのETFがこの指数に連動した値動きを目指す。

 野村アセットマネジメントは野村証券、大和証券投資信託委託はMSCI、三菱UFJ国際投信はSTOXXが算出する指数に連動するよう運用する。いずれの指数も日銀が3000億円の買い入れ対象として適格と認めている。

 指数の組み入れ対象は国内の上場企業だ。日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)といった市場全体の値動きを示す指数を対象とする従来の一般的なETFと異なり、設備投資額や人件費の増加率などの基準で組み入れ銘柄を選別する。150~300社程度に分散投資し、TOPIXと比べて銀行など金融株の比率が低いのが特徴だ。

 「賃上げETF」の購入によって、日銀は「株価」という材料を使って人材や設備へ積極投資する企業を後押しする狙いがある。企業に設備投資と賃上げを求めるアベノミクスを日銀が支える構図だ。

 しかし、現時点で売買は活況とは言いがたい。1日の平均売買高が最も多い「野村企業価値」でも4400口程度。「DIAM設備」は6月28日から15営業日連続で通常取引時間の売買が成立しなかった。

 ETFは「指定参加者」と呼ばれる証券会社が流通量を調整し、価格が適正になるように取引を成立させる。株式のように注文がないと売買できないリスクは低いものの、市場での需給バランスが崩れると、注文が少なく、連動する指数の値動きとは異なった価格で取引が成立してしまう可能性がある。

 設備や人材への投資を増やすと短期的にはむしろ企業業績の下押し要因となる点を指摘する声もある。ただ、「設備や人材への投資に積極的な企業は本来、業績が好調で今後も成長が見込める」(三菱UFJ国際投信の佐々木康平氏)。

 実際、いずれの指数もTOPIXより年率リターンが高かったり、平均リターンからの「ぶれ幅」を示す標準偏差が小さかったりしており、投資効率は悪くない。市場平均より良い成績を積み上げ、投資家の需要を高められるかどうかが定着のカギとなりそうだ。

[日本経済新聞朝刊2016年8月24日付]

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