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米粒大の部品に4色流し込み プラモ変える凄い技術

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日経トレンディネット

プラモデルといえば、昔から男の子の趣味と相場が決まっている。鉄道や戦車といった乗り物系にせよ、ウルトラマン、仮面ライダー、機動戦士ガンダムといったキャラクター系にせよ、プラモデルを作るのは男の子か少年時代からハマったままのオジサンで、そこに女の子の入り込む余地はなかった。ところが近年、プラモデル作りを楽しむ女性たちの輪が広がっており、「モケジョ」(=模型女子)なる新語も生まれているという。

おもちゃメーカー大手のバンダイも2016年、女性にも人気のある男性キャラのプラモデルを発売し、新たな市場の開拓に乗り出した。少年時代にテレビアニメ「機動戦士ガンダム」を見て育ったガンダム世代にとって、バンダイのプラモデルといえば"ガンプラ"。ガンダムのプラモデルはプラモデル史上最大のヒット作である。「36年間にわたるガンプラの歴史で培った技術があるからこそ、女性市場を開拓する商品を生むことができた」と担当者は話す。一体どんな商品なのか?

「日本人1人あたり3個以上」売れたガンプラ

アニメ作品「機動戦士ガンダム」のテレビ放映が始まったのは1979年。日本のロボットアニメの歴史を大きく変える超ヒット作品となり、今日もなお続編や内容を受け継ぐ派生作品が生まれ続けている。ガンプラが誕生したのはその翌年だが、こちらも今日にいたるまで関連の玩具、漫画、小説、ゲームといったさまざまな商品が作られ続けている。

バンダイのホビー事業部の主軸も今なおガンプラである。1980年発売の第1弾から手がけ、この36年間に生産したガンプラは1500種類以上、国内外あわせて4億5000万個。単純にいうと、日本人1人あたり3個以上を持っている勘定になる。ガンダムは、ある世代の心をわしづかみにした偉大なキャラクターなのだ。

"着るロボット"が与えた社会的影響は大きい

そもそもガンダムとは何か。ガンダムは巨大なヒト型ロボットの姿をしているが、正確には「モビルスーツ」(Mobile S.U.I.T.=Space Utility Instruments Tactical=「戦術汎用宇宙機器」)と呼ばれる戦闘兵器だ。ガンダム自身には思考も感情も一切ない。戦車、戦闘機と同じように人が乗り込み、操縦する機体である。

シリーズの一貫したテーマは「ガンダムを通して戦争を体験し、主人公の少年が人間として成長する物語」である。このガンダムの世界が、ものづくりやデザインに与えた影響は計り知れない。「ウエアラブル元年 ロボットを着こなす日」(日本経済新聞電子版 2013年12月24日付)と題された記事に、ガンダムが引き合いに出されていた。こんな記述だ。「ガンダム誕生のきっかけともなった半世紀以上前の米国のSF小説『宇宙の戦士』に登場する『パワードスーツ』を彷彿とさせる装着型ロボが、福祉や医療、作業が困難な現場などで活躍し始めている」

読者諸兄もご存じのように、人間の身体能力を手助けする装着型ロボットスーツには、「ロボコップ」のような全身タイプもあれば下肢だけのタイプなどもあり、いずれも医療や介護、農作業、工場作業などの肉体的負担を低減する。ちなみに、ここでの「スーツ」は、いわゆる「suit」である。こうした"着るロボット"が今急速に進化しているのだが、「機動戦士ガンダム」を少年時代に見て育ったガンダム世代が目にすると、「あ、ガンダムですね」と反応するのではないだろうか。

人間の身体能力を拡張するロボットの開発者は、少なからず「機動戦士ガンダム」の影響を受けているといわれる。筆者の友人の男性記者(50代)から聞いた興味深い話を少し紹介したい。彼が数年前に取材した大手建設機械メーカーの開発者も、「発想のルーツはガンダム。ああいうものを作ってみたい、というのが原点」と語ったそうだ。

その開発者は、パワーショベルの双腕バージョンを開発した。1台で2本の「腕」を持ち、片方で鉄骨をつかみ、片方で切る。人がハサミやカッターを持ち替えるのと同じように、先端のアタッチメント部分を、例えばコンクリートをうがつドリルや、鉄筋を切るカッターなど用途に合わせて取り換えられる。建物の解体現場や災害現場での活躍が期待される建機なのだが、半分はロボットといってもいい。操縦席のオペレーターは、自分の手の延長のような巨大な「両手」で、コンクリートだの鉄骨だのをバッキバッキつかんでは壊していく。まさにガンダムの世界といっても過言ではない。あらゆる道具は人体の機能の延長であって、その最たるものがロボット。ヒト型のガンダムは、さらにその最たるものではないか。

世界初の技術で"アニメの顔"を精巧に再現

さて、本題のプラモデルへ話を進めよう。ホビー事業部 グローバルプロモーションチームの所学氏は、取り組みをこう語った。「ガンプラはキャラクタープラモデルの市場で定番としてのポジションを構築したが、さらなる拡大を目指し、新規の市場を開拓したい。海外市場をさらに広げ、国内では小学生のプラモデル入門を促進する商品や宣伝活動に取り組むとともに、今後は女性層にも受け入れられる商品の開発、プロモーションを検討している」

2016年6月、同社はガンプラで培った技術を進化させた独自の成型技術で、アニメキャラクターの精巧な胸像が手軽に作れる新シリーズ「フィギュアライズバスト」を発売した。第1弾のラインアップは、「機動戦士ガンダムSEED」(2002年放映)に登場する主人公「キラ・ヤマト」と、彼の親友でライバルでもあるもう1人の主人公、「アスラン・ザラ」。ガンダムの歴史のなかでも特にアニメ好きの女の子から絶大な支持を得た作品で、キラとアスランは、ガンダムを操縦するパイロットとなる美少年キャラクターだ。新技術のすごさを発揮する瞳や顔の仕上がりを目立たせるため、完成品は胸像とし、「ガンダムシリーズ屈指の2大人気キャラからスタートさせた」(所氏)。

最大の特徴は、「レイヤードインジェクション」(特許出願中)と呼ぶ世界初の樹脂成型技術。瞳や眉毛、まつげといった微細な部分も色を塗る必要がなく、2つのパーツをパチッと組み合わせるだけでキャラクターの顔を精巧に再現できる。同社では、これを「『顔』再現の革命」と位置付ける。成型の技術のみで、アニメの顔のイメージに極限まで近づけた。プラモデルの世界ではマニアをも唸らせる、かなりサプライズな技術だという。

プラモマニアも驚くレイヤードインジェクション

レイヤードインジェクションでは、1つのパーツに最大4色の樹脂(プラスチック)を流し込み、4色に細かく色分けして成型する。新製品でその技術のスゴさを最も発揮するのが「瞳」だ。キャラクターの魅力を印象づける瞳はおろそかにできない。開発チームはアニメの瞳のリアルな再現にこだわった。

キラの瞳は、白、黒、グレー、紫の4色。アスランの瞳は、白、黒、グレー、緑の4色。アニメならではの瞳を忠実に再現するため、成型色の違いでハイライトや陰影を表現する。塗装でも印刷でもなく、瞳という米粒大のパーツに異なる4つの色の樹脂を同時に流し込み、成型するのだ。 レイヤードインジェクションは、バンダイ独自の「色プラ」をさらに進化させた技術。「ガンプラの歴史があるからこそ、極小のパーツに4色の樹脂を流すレベルにまで極められた」(所氏)という。

「色プラ」も日本にしかない、バンダイ独自の技術で、1983年の誕生以来さまざまな商品に応用されてきた。色プラとは、1つの枠(ランナー)の金型に最大4色の樹脂を流し込む技術である。以前は1色ごとに1枠を作り、4色なら4枠、金型も4つ必要だった。部品が多くなるとーカーにもユーザーにも手間がかかる。それが色プラになると、1つの枠に4つの色の樹脂を流し込める。枠の数が減れば、ユーザーにとってはパーツが探しやすく、しかも色プラの技術によって塗装の必要がなくなった。もともとプラモデルといえば、塗装が必要なものであり、ガンプラも当初は真っ白なパーツを専用の塗料で塗装していたのだ。夢中になって作った少年時代を懐かしく思い出す読者も多いかもしれない。

この色プラの技術をさらに進化させたレイヤードインジェクションも「4色成型」であるが、大きな違いがある。それは、レイヤードインジェクションは1つのパーツを4色に色分けして成型する点だ。色プラの場合、4色とはいえ、一つのパーツの色は1色である。一方、新技術は1つのパーツに4色の樹脂が流れ、しかも米粒ほどの極小のパーツまで4色に色分けする。この飛躍がサプライズな進化なのである。

瞳だけではない。眉毛、まつげといった細かなパーツも成型色だ。下の写真の枠(ランナー)では眉毛やまつげに黒の樹脂を流しているわけだが、まつげの尖った先までこんなに細かい成型をどうやるのか? 工程を聞くと、その難しさが想像できる。プラスチックの原料を溶かした状態で金型に流し込むと、金型の精度の問題や流し方によって、途中で固まったり、細かい造作まで原料が届かないこともある。樹脂を流す圧力、金型の設計などを調整しながら、トライアンドエラーを繰り返し、ついに実現した。キャラクターの命ともいえる顔。 「これまでにやったことのない技術への挑戦でした。特に瞳の表現、眉毛、まつげに関しては妥協を許さないという姿勢で、ここまでのクオリティーに仕上げた」と所氏は胸を張る。

素材の"つや"も使い分け、キャラクターの魅力を忠実に表現

フィギュアライズバストは、「組み上げるだけで人物としての質感を再現する」(所氏)ことにもこだわった。髪はつや消し、服は半つや、瞳はつやで輝かせるなど、キャラクターの魅力を忠実に表現すべく部位によって素材を分け、質感までコントロールした。見た目がつるつるのプラスチックではオモチャっぽいが、成型へのこだわりと、これまでにない技術を駆使した出来映えに、オジサン世代のガンプラファンからも称賛の声が届くそうだ。

品質にブレがなく、彩色フィギュアより低価格で提供する「フィギュアライズバスト」シリーズ。主なターゲットは男性ユーザーだが、手づくりホビーを楽しむ女性の需要も視野にある。機動戦士ガンダムSEEDを子ども時代に見て、美少年キャラに熱中した女の子を中心に、「手軽に作れることに加え、イケメンの要素でアニメ好きの女性も取り込めるのでは」と同社は期待を寄せる。シリーズ第2弾のキャラクターは「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」に登場する主人公「三日月・オーガス」で、2016年8月に発売した。

(ライター 赤星千春)

[日経トレンディネット 2016年8月1日付の記事を再構成]

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