買い物でついケチる性分が嫌
女優・エッセイスト、ミムラ
わかります。悩ましいですよね。私もスーパーで商品を左右の手に持ち、長考するタイプ。でも、こういうのってケチなのか節約なのか、微妙ですよね。
安いもので出費を抑えるのと、少し高くてもほしいものを買うのは反対の行動と思いがちですが、実は根本は同じ。「報われたい」という切なる願い。お金も気持ちも損したくない、人の自然な心理だと思います。
ただし、現実に買い物で毎回報われることは不可能。ほしい商品を研究し、価格比較サイトでどの店が安いかを調べることはできる。でも値段は刻々と変わり、質の高い新商品も次々に出る。夕方に高い肉を値引きするスーパーがありますが、値引きの時間に行けないなら高値で買うしかないし、値引きの前に売り切れることもある。これはどうしようもありません。
では、どうしたら満足感が高まるか。おすすめは月一回、値段を気にせず買い物をする自由を持つこと。もちろん、無駄遣いの自由ではありません。自由の原資は、あなたの節約です。
まず、月の生活費から決まった出費(家賃・光熱費など)を差し引き、残りを5で割ります。これで1カ月5週の各週に、日用品や食事に使える予算が決まります。ポイントは予算をなるべく多く残すように努めること。節約で残った一定額は貯蓄にまわし、その上で余ったお金を月一回、自由に使うのです。
私は以前からこのやりくりをしていますが、週によっては予算の半分以上が残ります。そして節約の積み重ねで得たお金を使うときの快感たるや……。「私は家計をしっかり制御できている」「その上で計画的に貯金が進んでいるっ」「なのに今、スーパーで好き放題に買い物している!」。節約家として三段重ねの満足感が得られます。しかもケチであればあるほど報われた感覚は高まるわけです。
そもそも節約家とケチの違いは、目的意識の有無ではありませんか。目的がないと「これでよし」という基準が定まらず、満足感が得られない一方、後悔しやすくなる。他人の買い物も気にしやすくなります。
買い物は人生の楽しみの重要な要素。「趣味は節約」。これが自分の人生の楽しみ方と突き抜けるのもありです。世には1円にその日の暮らしがかかる人生が少なくない。1円に笑い、1円に号泣する。ドラマチックに楽しめること自体、ぜいたくなのかも。まずは節約の5等分法で、後悔しない買い物を楽しんでくださいね。
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[日経プラスワン2016年9月17日付]
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