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全盲の大胡田夫妻 地震を機に盲導犬を手放す

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NIKKEI STYLE

全盲で司法試験に合格した日本で3人目の弁護士、大胡田誠さん。半生を綴った著書『全盲の僕が弁護士になった理由』(日経BP社)は松坂桃李主演でドラマ化されました。

実家・静岡からお手伝いに来てくれるじいじ&ばあば

―― 前回インタビューは2014年の年末でした。大胡田家にはこの1年半でどのような変化がありましたか。長女のこころちゃんは5歳、長男の響(ひびき)くんは4歳になられましたね。

大胡田誠さん(以下、誠さん) 私は現在、離婚訴訟、交通事故に遭ってしまった被害者から加害者への損害賠償請求などの仕事が多いですね。それから「障害者差別解消法」(「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」)の施行を受けて、講演も週1本くらいのペースで入っています。

亜矢子さん 私のほうは、声楽家の仕事と並行して、結婚前から関わっている「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」(グループで完全に光を遮断した空間に入り、視覚障がい者のアテンドで中を探検するソーシャルエンターテインメント)の仕事に行っています。

―― 亜矢子さんのお母さんが引き続き半同居して、子育てや家事をサポートしてくださっているのですね。

誠さん 僕の帰宅が22時くらいになってしまうので、母の半同居は本当にありがたいです。保育園のイベントがあるときなどは、静岡県からお義父さんも来てくれます。

アイメイト(盲導犬)のセロシアとのお別れを選んだ理由

亜矢子さん 大きな変化もありました。盲導犬のセロと5月末にお別れしたのです。セロはもう10歳。元気なまま余生を過ごしてほしいというのが一番の理由です。

熊本地震もきっかけになりました。もし東京で震災が起きたら、私たちにとっては子どもたちを守ることが最優先事項になります。セロの視力と体力で、がれきの中を歩いて避難できるだろうか、もしかしたら家に置いていかなければならないのではないか、ということも考えました。悩んだ結果、「セロとのお別れを機に、つえだけで歩けるようになって、自分の身は自分で守れるようにしなければ」という結論にたどり着きました。

―― 亜矢子さんは何年間、盲導犬との生活を送ってこられたのでしょう。

亜矢子さん 17年間、2頭とお付き合いしてきました。一般的に、盲導犬と共に生きていくことを選んだ人は、最寄りの盲導犬協会に申し込みをします。協会の職員と面接し、盲導犬と歩く、一緒に生活する意思確認や生活状況などのチェックを受けます。そして自治体に申請すると盲導犬の貸与が受けられます。

その後協会での盲導犬との歩行指導を受けて、晴れて共同生活となります。

私が盲導犬を申し込んだ理由は、「仲間が欲しかったから」。私は方向音痴なのですが、実のところ、盲導犬といたからといって方向音痴が治るわけではない。でも、一緒に迷える仲間がいるのはそれだけで十分心強いのです。

何よりうれしいのは、街中での「手伝いますか」の声

―― つえだけの暮らしはいかがですか。

亜矢子さん 朝起きて「今日もつえで歩くんだ。えいっ!」と気合を入れています(笑)。でも歩き始めると、無意識に(盲導犬の)リードを探してしまったりしている自分に気付きます。

盲導犬のいない暮らしを始めてみると、いかに今まで無意識で歩いていたかが分かります。障害物や段差は犬が見つけてくれたので、ぶつかったり、落ちたりする心配はないんです。ですから、歩きながらもほかのことを考えることができました。歩くことだけに集中する必要がなかったのですね。

誠さん 亜矢子を見ていて、本当に頑張っているなと思いますよ。疲れているんじゃないかな、と心配でもありますが。

―― 街中でも白いつえを突いて歩いている方がいらっしゃいますが、周りの人はどうサポートしてあげればよいものでしょうか。

亜矢子さん ぜひ積極的に助けてあげてほしいです。私なんか、外でつえで歩いているときに、誰かに「お手伝いしましょうか」と言われたら(手を合わせて)「ぜひお願いします」という感じですよ。私の場合、導いてくださる方の右ひじを持たせてもらって歩かせていただくのがありがたいです。歩きながら「段差がありますよ」と教えてもらえたりすると助かります。

5歳の長女のお手伝いは、洋服のコーディネート

亜矢子さん 家事の分担についてはまだ私の母に頼っている状態ですが、母が実家に帰るときは、夫婦と子どもの4人だけで頑張っています。こういう、わが家だけで自立する"ミニミニお試し状態"に、今年に入ってから2度挑戦してみました。母は心配だと思いますが「できるもん。やってみたいんだもん!」という感じですね(笑)。

―― お母様にとっては、どのポイントが一番不安なのでしょう。

亜矢子さん 洋服のコーディネートですね……。私は、自分で選んでから母にアドバイスをもらっています。色に関しては、私から子どもたちに教えることはできません。母が不在のときは、長女のこころに「ここちゃん、今日のママどう?響の服も出してあげて」とコーディネートをお願いしています。こころのコーディネートは信頼できます。

―― 子どもたちが"目"となってくれる日も近そうですね。

亜矢子さん ただ、頼り過ぎて子どもたちの負担になってしまわないようにしたい。そこには、気を付けたいと思っています。

誠さんが語る「障害者差別解消法」と"心のバリア"

―― 誠さんが先ほど話されていた「障害者差別解消法」について、詳しく教えていただけますか。

誠さん 4月から施行された「障害者差別解消法」は、障がい者を差別してはいけないということや、行政機関や民間事業者は障がい者に対して適切な配慮を行う義務があることを明記した、今までなかった法律です。僕は法律家であり当事者でもあるため、週1回くらいの頻度で全国各所でこの法律に関する講演を行っています。

―― それで、いつにも増してお忙しいのですね。それにしても、障がい者を差別してはいけないという法律が今までなかったこと自体が驚きです。

誠さん 道徳面では別として、今までは障がい者が差別されても法律的に違法ということはなかったのです。「障がいがあることで、他の人が受けられるサービスを受けられないのは違法である」と定めた法律が整備されたことには重要な意味があり、障がい者にとって悲願の法律ともいえます。2006年に国連で「障害者権利条約」が採択され、それを批准するために、国内でも法律を整える必要があったという背景もあります。

―― 法律ができたことで、社会は大きく変わるのでしょうか。

誠さん すぐに変化することはないにしても、法律に基づいた正当な主張ができることは大きいと思います。この法律により、障がい者が求めたときは、過重な負担とならない限り、手助けや設備の改良など適切な配慮を行うことが、行政機関には法的義務、民間事業者には努力義務とされました。我々にとって生きやすい社会になる一歩であり、マイルストーンになるのではないでしょうか。

―― 海外で「ここは車いすの利用者が多いな」と気付くことがありますが、考えてみれば、それは車いすの人が不自由なく外出できるからですよね。

誠さん 近年、日本では、駅のエレベーター設置など、物理的なバリアフリーの取り組みは徐々に進んできています。でも、雇用などの面で、"心のバリア"はまだあると感じています。日本には障がい者が800万人もいるんですよ。一方で、日本人の名字で多いといわれる「佐藤さん、鈴木さん、高橋さん、田中さん」を合わせても700万人です。障がい者の多さがお分かりいただけるのではないでしょうか?

本当は障がい者って、ごくありふれた存在であるはずなんです。でも、町中や会社、学校、お店などで、日常的にそんなに多くの障がい者を見かけることはありません。これはまだ日本社会の中に、障がい者が社会の中で普通に生活することを妨げる様々なバリアがあるからなんですね。

こうしたバリアが生まれてしまう原因の一つは、「分離教育」(健常者と障がい者を分けて教育を与える)によって障がい者に接することなく大人になってしまうという、学校教育にもあるのではと感じています。人間、"よく分からないもの"に対しては恐怖心が生まれてしまいますからね。多くの問題の根っこには「知らないこと」があるので、お互いをよく理解して対話していくことで、"心のバリア"を解消することができるのではないか、と私は思うのです。

この法律をきっかけに社会の側が勉強しようと意識を高めて、僕に講演の依頼もしてくれるので、これに応えていくのが障がい者であり、弁護士でもある自分の役割だと思っています。依頼があれば、こうしたお話はどこでもさせていただきます。

大胡田誠(おおごだ・まこと)
 弁護士。1977年静岡県生まれ。先天性緑内障により12歳で失明する。筑波大学附属盲学校の中学部・高等部、慶應義塾大学法学部を経て、慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)へと進む。2006年、5回目のチャレンジで司法試験に合格。全盲で司法試験に合格した日本で3人目の弁護士になった。07年から渋谷シビック法律事務所に所属。13年からは、つくし総合法律事務所に所属し、一般民事事件や企業法務、家事事件(相続、離婚など)や刑事事件などに従事するほか、障がい者の人権問題についても精力的に活動している。

大胡田亜矢子(おおごだ・あやこ)
 武蔵野音楽大学の声楽科を卒業し、旧姓の大石亜矢子という名前で歌手として活動している。早産で生まれてきた際、未熟児網膜症になり視力を失った。誠さんの弟と同じ沼津盲学校に通っていたため、誠さんとは小学生のときから一緒に遊んだ仲である。

* お二人が通われた盲学校はそれぞれ、現在は視覚特別支援学校と名称が変わっています。

(ライター 阿部祐子)

[日経DUAL 2016年7月15日付記事を再構成]

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