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トップが次の社長を密室で決めていいのか 経営共創基盤CEO 冨山和彦氏

2016/8/27

 金融庁と東京証券取引所が2015年6月に上場企業の守るべき原則を定めた「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」の適用を開始して1年余り。今や上場企業の社外取締役は7000人を超え、取締役数全体の4人に1人に達した。この指針の策定に携わった経営共創基盤(東京・千代田)最高経営責任者(CEO)の冨山和彦氏にガバナンス改革をテーマに聞いた。

 ――冨山さんはコーポレートガバナンス・コードの策定を主導しました。1年余りがたちましたが、どのように評価しますか。

 「複数の社外取締役の導入について経済界中心にかなり反発がありましたが、半分ぐらいの企業が導入しました。うちの会社の規模で2人も社外取締役を採用するなんて無理というところもありましたが、実際は我々の想定した以上に導入した企業は多い。信念を持った抵抗じゃなかったのか、と拍子抜けした感じもありますが、まだ形式的で魂を入れて運用している会社は少ないのではないでしょうか。しかし、自動車や電機などグローバル企業は真剣にやっています。従来の同質的で閉鎖的な企業組織のあり方では、国際競争には勝ち残れない。シャープや東芝もそうですが、特に電機業界はガバナンス改革の必要性を痛感しています」

経営共創基盤CEO 冨山和彦氏

 「株式の持ち合い解消も課題ですが、これは大手の金融機関など保有しない方針を打ち出しているところもあり、自然と解消していく方向です」

 ――コーポレートガバナンス・コードは原則73項目から構成されています。このルールづくりでまだ足りない面、課題はありますか。

 「やはりトップの後継者選定のところです。社外取締役を含めたしっかりした指名委員会を設け、時間と労力をかけ、透明性を担保して次のトップを育成し、選定する必要があります。いまだ会長あるいは社長など1人のトップが密室で次の社長を決め、取締役会は機能していない企業が少なくない。しかし、後継者選びがトップの専管事項でいいとは思えません。自分のお気に入りの部下が優れたリーダーになるとは限りません。後継者選びの仕組みを明確にした方がいいでしょう。でも反発は強いですね。トップにあるのは人事権ぐらい、次の社長を選ぶ権限を失うと求心力がなくなるという人がいます。でもそんな人では本当の意味でのリーダーとはいえません。まだ政治家のほうがましです。例えば、今の時代、安倍晋三首相は次の首相を密室で選んだりはできませんよね」

 ――冨山さんが社外取締役を務めているオムロンでは10年かけて次期社長を育成し、選定していますが、具体的にどのような仕組みで次のトップを選ぶのですか。

 「まず社長の後継者候補として幹部中心に30人ぐらいを選びます。そして候補者を適宜評価し、試すこともします。例えば、海外の子会社に出すとか、難しい事業をやってもらったりし、毎年のように候補者も入れ替えます。実際、トップの交代時期が迫れば、さらに候補者を絞ります。そして取締役会で最終的に選ぶわけです。しかし、大事なのは本人の意志です。みんなが社長になりたいわけじゃない。今、日本のメーカーのトップは相当ハードな仕事ですから。報酬と見合わなくなっています。やる気と能力のある人が次のトップになるわけです」

 ――トップ候補の育成・選定を担うようになると、社外取締役の責任も重くなります。

 「その通りです。そうなれば、社外取締役の目の色が変わります。ただ、経営のアドバイスをすればいいという役割ではない。リスクも負うようになる。安易に社外取締役を選んだり、引き受けたりできません。間違った判断をすれば、株主代表訴訟の対象になりますから」

 ――6月から新たにパナソニックの社外取締役にも就任しましたが、どのような役割を担うのですか

 「まだ具体的な役割は分かりません。ただ、グローバル競争の激しい電機業界ですから、常に事業領域のポートフォリオを見直し、新陳代謝を促す必要があります。また、すべてを内部のリソースで解決できなくなっていますから、他社との連携などオープンイノベーションを取り入れていかなくてはいけない。取締役会で会社の方向性を決め、事業のポートフォリオやトップの後継者人事についても、きちんと議論していくことになると思います」

冨山和彦氏(とやま・かずひこ)
1985年東京大学法学部卒、92年米スタンフォード大学経営学修士。ボストンコンサルティンググループなどを経て2003年に産業再生機構の代表取締役専務兼COO(最高執行責任者)に就任、カネボウなどの再生案件に関わる。07年経営共創基盤を設立。

(代慶達也)

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