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ハードル高めの公的支援 水害には保険で備えを

日経マネー

2016/9/23

日経マネー

 契約はしたものの、細かな内容はよく知らない――。生命保険や損害保険の契約者の中には、こんな人も少なくないだろう。だが、保険は契約条項ひとつで受けられる補償が大きく変わる上、新たなサービスも続々と登場している。本コラムでは、生命保険と損害保険を交互に取り上げ、保険選びの上で知っておきたい知識を解説する。今回は、水害に遭った場合の公的支援の内容と対策について見ていく。

 内閣府の調査によれば、「今後10年以内に水害を受ける可能性はないと思う」と回答した人は5割を超える。しかしながら、日本では毎年のように、豪雨などによる被害が各地で発生している。2016年も6月以降、九州で集中豪雨による床上浸水などの被害が出ている。

 災害における「想定外」は、今や日常となっている。水害と無縁とは、もはや誰も言い切れない。

 想像してほしい。例えば、自宅が70~80cmの床上浸水の被害を受けたらどうなるだろうか。

 使用不能になる家具や家電品は1つや2つでは済まないはずだ。修繕が必要となる住宅の破損箇所が幸いにしてなかったとしても、水に漬かった建具や畳は、交換が必要になるかもしれない。原状回復には、かなりの出費を覚悟せざるを得ない。だが、知ってほしい。これほどの被害でも、受けられる公的支援はないかもしれないのだ。

地域別の洪水・浸水の被害規模を予想したハザードマップを作成・公表している自治体も多い。一度、確認しておこう

■1mを超えない浸水は生活再建支援金の対象外

 洪水などで床上浸水の被害を受けた場合は、住宅全壊世帯数などに応じて「災害救助法」「被災者生活再建支援法」が適用される。

 その際、市区町村は、被災住宅の壊れ具合を「全壊」「大規模半壊」「半壊」「半壊に至らない」の4区分に判定する。自宅がどの区分に該当するかで、受けられる公的支援は変わってくる。

 全壊とは、住宅流失あるいは浸水の最も浅い部分が1階天井まで達した時である。受け取れる被災者生活再建支援金は100万円で、後に住宅を再建・再取得した場合は200万円が加算されるため、給付は最大300万円となる。

 大規模半壊は床上浸水が1mに達した場合で、支援金は50万円、再建すれば全壊同様に200万円の加算がある。加えて、被災住宅には住めるが、暮らすうえで欠かせない修繕が発生する場合には、災害救助法に基づき上限54.7万円の応急修理を受けられる。これらで計最大300万円程度となり、全壊と同水準の支援となる。

 一方、1mに満たない床上浸水は半壊と判定され、支援金の対象外となる。半壊の場合、応急修理では世帯年収500万円以下(世帯主が45歳以上なら700万円以下、60歳以上なら800万円以下)などという要件があり、年収制限に引っかかれば、こちらの支援も受けられない。原状回復の費用は、全てが自己負担になるのだ。

 住宅流失という最大級の被害でも最高300万円。床上浸水しても公的支援を受けられないことすらあるのが水害なのだ。保険による備えに、異論はないだろう。

 火災保険に付帯する水害補償があれば、床上浸水ではおおむね補償が受けられる。だが、水害補償の加入率は全体の3割にすぎないとのデータもある。契約している火災保険の水害補償の有無、および最大補償額を確認し、不足があれば保険の掛け直しを検討したい。

 最近は河川から離れた都市部でも、ゲリラ豪雨などで排水が追い付かず、下水が溢れて想定を超える浸水被害が起きている。マンション上階でもない限り、水害補償は必須と考えた方がいいだろう。

清水香(しみず・かおり)
 生活設計塾クルー。学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。財務省「地震保険に関するプロジェクトチーム」委員。

[日経マネー2016年10月号の記事を再構成]

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