ZTEの格安スマホ 妥協できるギリギリの性能で最安
戸田覚のPC進化論
僕は、SIMフリースマホのテスト用としてエイスースの「ZenFone 2」を利用している。入手した当時は4GBメモリーに32GBの記憶領域のモデルが4万5800円で、高性能だから長く使えるだろうと思っていた。
ところが、それからたった1年の間に、安くて魅力的なモデルがガンガン登場している。もちろん、ZenFone 2は今でも十分に現役なのだが、たった1年でこれほど市場が変わるとは思っていなかった。今や、エントリーモデルの主戦場は2万円台になっており、スペックもどんどん上がっている。
今回レビューするZTEの「Blade V7lite」もそんなエントリーモデルの1台。日本市場では手ごろな価格のSIMフリースマホに注力しているメーカーだけに、コストパフォーマンスは素晴らしい。1万4800円という驚きの価格の「Blade E01」も同時に発表されたが、どうせならもう少し上のモデルをおすすめしたいと感じた次第だ。
Blade V7liteは、希望小売価格が2万1800円。こちらも手ごろだが、果たして購入したいと思うようなモデルに仕上がっているだろうか? さっそくチェックしていこう。
サイズも頃合いで質感は上々
液晶サイズは5型で、手の小さい人でも使いやすいはずだ。それでいて画面が小さすぎると感じることもない。5.5型のZenFone 2はポケットに入れているとそれなりに負担を感じるが、Blade V7liteなら邪魔に思うことはないだろう。
本体の出来に関しては、格安なモデルもここまできたかと、ちょっと驚いてしまった。本体カラーが黒なので写真では分かりづらいが、左右のベゼルがかなり細く、なかなかスタイリッシュだ。厚さも7.9mmと十分に薄い。背面はなんと金属製で、エッジの部分はダイヤモンドカットになっている。どこかで見たことのあるようなデザインなのはあまりうれしくないが……
さらに、液晶のエッジがアールを描いているのも素晴らしい。操作している際の指の感触が非常にいいし、また、見た目にもリッチだ。質感に不満はないだろう。
もちろん、欠点がないわけではない。本体背面の上下のパーツは樹脂性で、質感はともかく、金属部分とは色がかなり違うし、合わせ目の段差も目立つ。また、SIMスロットのパーツがやや出っ張っていて、指が引っ掛かる。ここは個体差なのかもしれないが、高級モデルではこういうことはまずない。
ちょっとうるさいことを書いたが、価格を考えれば質感は文句なし。3万円台後半のモデルとしても通用するほどの完成度だ。特にグレーのモデルはシンプルでいい。
欠点の1つは液晶、指紋センサーはうれしい、カメラは……
Blade V7liteは2万円ちょっとという手ごろな価格だけに、当然、スペックで劣る部分がある。その1つが液晶で、解像度は1280×720ピクセルしかない。最近は、1920×1080ピクセルのフルHDが当たり前になっているので、やや見劣りする。
また画質は、正面から見る限りは問題ないが、ちょっと横から見ると色が変わってしまう。IPS液晶は視野角が広いはずなのに、白いノートがグレーっぽく見えるのだ。
サイズが5型なので「解像度はこれでも十分」という人もいるだろう。しかし、写真やゲームの画面の美しさにこだわりがある人は、やめておいたほうがいい。
指紋センサーを搭載しているのでさっそく指紋を登録してみたが、認識速度は上々だった。指紋センサーは背面カメラの下にあるのだが、僕はこの位置がとても好ましいと思っている。単にログイン認証に使うだけでなく、さまざまな機能を割り当てたときに扱いやすいからだ。Blade V7liteもダブルタップでスクリーンショットを撮影するなどの機能がある。
また、画面オフの状態でもスクリーンにジェスチャーを描くとアプリを起動できたり、再生中の曲を切り替えたりできるのも便利だ。2万円強のモデルながらいろいろな付加機能があり、楽しく使える。
なお、Blade V7liteのカメラは、前面、背面共に800万画素しかない。とはいえ、普通にスナップ写真を撮るには十分な画質だと思う。ただ、最近は1000万画素を超えるモデルが当たり前になっており、それらで撮影した写真と比べるとかなりの差がある。さらに液晶が美しくないので、端末上で写真を見ると、とても劣っているように感じてしまう。
「そこそこの写真が撮れれば満足だ」「写真はあまり撮らない」という人には、Blade V7liteも選択肢になるだろう。逆に、写真にこだわりのある人は敬遠するべきだろう。
低い性能で妥協できるかがポイント
Blade V7liteのCPUはクアッドコアだが、全体のレスポンスは良好とは言えない。いろいろと作業していると、たまに処理待ちが発生する。AnTuTu Benchmarkで計測してみたところ、性能はお世辞にも高いとは言えなかった。
1年前には高性能だったZenFone 2も、今となっては中の下程度のスコアになっているが、Blade V7liteはその半分ほどのスコアしか出ず、AnTuTuのランキングでも最下位にランクされてしまう。ライトユースに徹したとしても、使えるのは1、2年だろう。
その時点で買い替える覚悟がない人に、Blade V7liteはおすすめしない。2万円ちょっとの価格なのだから、2年も使えれば御の字と考えるべきだ。
言うまでもなく、ヘビーなゲームなどを楽しみたいなら、もっと高性能な端末を選ぶことになる。試しにレーシングゲームの「アスファルト8:Airborne」をプレーしてみたが、読み込みに時間がかかり、ややカクカクした。プレー自体には支障はなかったとはいえ、1年後を考えると相当に厳しいはずだ。
ストレージは16GBあるので、ライトユースなら当面は困ることはないだろう。バッテリー容量が2500mAhしかなく、NFCを搭載していないなど不満も多いが、本体の出来はなかなかいいし、指紋センサーも気が利いている。1万円クラスのモデルのように、買ってすぐにストレージ不足に陥ったり、液晶がひどすぎてうんざりしたりといったことはないと思う。
結論としては、「万人におすすめできるモデル」とは言えない。だが、なんといっても2万円強だ。「妥協できるギリギリの性能で、最も安い」というのが妥当な評価だろう。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。
[日経トレンディネット 2016年7月19日付の記事を再構成]
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