たけしお墨付漫才師「馬鹿よ貴方は」 毒気の笑い武器
「M-1」優勝の野望負う
184センチの長身にご覧のひげと丸メガネというインパクト大なルックスの平井"ファラオ"光と、親しみやすそうな新道竜巳によるお笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」。客と店員といったオーソドックスな設定のもと、ポーカーフェイスのファラオが飄々とボケて新道を困惑させる毒気の強い漫才で人気を集めている。
9月9日に「馬鹿よ貴方は フライデーナイトライブ」が開かれる。場所は関交協ハーモニックホール(西新宿)。
コンテストでは『THE MANZAI 2014』(フジ系)や『M-1グランプリ2015』(テレ朝系)で決勝進出を果たすなど、実力は折り紙付き。最近はファラオが『アメトーーク!』(テレ朝系)の「家族オカシイ芸人」「猫舌芸人」などに立て続けに出演し、寡黙ながらも味のあるコメントや表情で気になる存在になりつつある。
結成は08年。ともに複数のお笑い養成所を卒業し、フリーの芸人として活動していたなか、共通の知人が主催するイベントで知り合った。声をかけたのは新道。「舞台上のファラオを見て、周りの芸人から面白いと思われていることがすぐに伝わってきた。立っているだけで何を言い出すか分からない感じに僕もひかれた」と当時を振り返る。
初舞台ですでに手応えを感じた2人は、ライブに出まくりながら芸能事務所のオーディションを片っ端から受けた。しかし結果はすべて落選。最後に残っていたのが現在所属するオフィス北野だった。
「他の事務所の審査が直接ネタを見せるのに対し、オフィス北野の1次審査はVTRオーディション。自分で映像を撮って送る手間が面倒臭くて後回しにしていたんですが、今思えば他を回っていた分、ネタがいい具合に仕上がっていたのかもしれない」(新道)とラストチャンスをものにした経緯を明かす。
「実はお笑いが嫌いだった」という新道は、高校卒業後に母親の勧めで俳優養成所に通っていた。ファラオもお笑いファンというわけでなかったが、「松本人志さんの『遺書』に"暗いやつほど面白い"というようなことが書かれていて……」と重い口を開けた。「自分も無口で人見知りだったので、松本さんの言葉に影響を受けて目指すようになりました」と語る。
ネタを作るのは新道。過去に組んできたコンビやトリオでは、相方によってネタの方向性を変え、ポップで明るくて元気な漫才をやっていたこともあるという。一方のファラオは、今のコンビになるまで迷走した。「漫談、フリップネタ、1人コントなどいろいろやってみたけど、自分のスタイルが見つからなかった。今でこそ個性的な人と思われているかもしれませんが、それもこのコンビを組んでから見つかったもの」と話す。
目標は「『M-1グランプリ』の優勝」と新道。「去年決勝に出て現実的に優勝を狙えると思えたので対策を練って、獲るためのネタ作りをしたい」と意欲を見せる。
研究熱心なブレーンの新道と、まか不思議なキャラクターで周囲を煙に巻くファラオ。ミステリアスな部分が多い2人の引き出しからどんなものが出るのか、実に楽しみだ。
(「日経エンタテインメント!」8月号の記事を再構成。敬称略、文・遠藤敏文 写真・中村嘉昭)
[日経MJ2016年8月19日付]
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