旅の供に御朱印ガイド 神社・寺の歴史探る
品田英雄 日経BPヒット総研・上席研究員
夏休みの旅行や帰省に「これがあるとちょっと楽しくなる」と歴史好きの女性から紹介されたのが「御朱印ガイド」と「戦国手帳」の2冊だ。
御朱印とは神社や寺院で参拝者向けに押される印章のこと。それがパワースポットブームの影響で、御朱印を集める女性が増え「御朱印ガール」なる言葉も生んでいる。彼女たちは300円程度を納め(無料のところも)和紙をとじた御朱印帳に印をもらうために全国を巡っている。
中年男性からするとガイドブックはちょっと恥ずかしい気もしたが、実際に手にしてみると、一人ひとりに神社名や日付をその場で墨書きする雰囲気や宮司さんやお坊さんと会話する様子は自分だけのセレモニーのような厳かな気分がしてきた。
その上、ガイドブックには神社や寺院の歴史的背景も説明してある。神社では古事記に登場するどの神様をまつってあるか、また神様たちの人間臭い関係も書かれている。さらに東京の愛宕神社は「出世できる」お札で人気があるとか、神奈川の箱根神社は源頼朝や徳川家康などの武将が数多く参拝し、現在も政治家が多く来ていることを教えられる。
もう一つは歴女の間では有名な「戦国手帳」(小和田哲男監修)。予定が書き込める携帯しやすい手帳で、その日になにが起こったか書いてある。1595年の8月2日は、7月15日に切腹させられた豊臣秀次の一族が京都三条河原で処刑させられた日で、1598年8月18日は豊臣秀吉が没した日というように。
この手帳の面白さは戦さの基本陣形8つの解説があったり、桶狭間の戦いや本能寺の変では日時とともにどう兵が動いたのかなど、歴史を立体的に教えてくれることだが、旅を面白くしてくれそうなのは「史跡地図」と「日本100名城マップ」だ。 どこにどんな城があるかが分かるだけでなく、4つに区分できる天守の構造や破風(屋根の端部)の種類、狭間の形の違いが説明してある。実際にその場を訪れて確認したい気持ちにさせられる。
ガイドブックは薄くなった記憶を思い出させたり、何気なく訪れていた建造物への愛着を深めたりしてくれる。旅のお供にいかがだろう。
[日本経済新聞夕刊2016年8月6日付]
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