男性の育休取得率最高 道半ば、年休で育児も
男女 ギャップを斬る(池田心豪)
昨年の育児休業取得率が先週発表された。本紙でも報道されていたが、男性の育児休業取得率は過去最高の2.65%、女性の取得率は2年ぶりに低下して81.5%となった。
日本人は育休が好きである。政府は育休取得率の数値目標を掲げ、企業は法定を上回る育休制度の充実ぶりを競ってきた。職を失うことなく子育てに専念できるという制度の性格から、育児期の女性の就業に肯定的な人だけでなく、母親は家庭で子育てに専念すべきという人にも育休は受けがよい。
少し前に「抱っこし放題」という安倍総理の発言が話題になり、ちょっとした論争になったが、この制度の性格をよく表した騒動であった。
最近は男性の育休が話題になっている。2010年施行の改正育児・介護休業法から配偶者が無業でも、つまり専業主婦の夫も育休を取得できるようになったことに合わせて、厚生労働省がイクメンプロジェクトを仕掛けてブームになった。依然低水準とはいえ過去最高を更新し続ける男性の育休取得率の上昇傾向は、これが一過的なブームに終わらず社会に浸透しつつあることを表している。
育児・介護休業法の趣旨に照らせば、育休は子を養育する労働者の就業を支援する制度である。産休とつなげて育休を取ることが一般的な女性に関していえば産後の復職支援の意味合いが強い。
法定の育休は1歳まで子育てに専念できるというより、1歳までの期間で復職時期を選べる制度と考えた方が法の趣旨にかなっている。実態として保育所などの事情により、産休明けの復職は難しいため育休は必要な制度であるが、育休を取らずに復職できるならそれでもよい。
男性の場合は妻の就業支援の意味合いが強い。だが、その場合も育休は必須というわけでもない。男性の育休取得日数は56.9%が5日未満で74.7%が2週間未満に収まる。年休でも対応可能な日数である。
実際、育休は取らず別の休暇で仕事を休んでいる父親は少なくない。筆者にも妻の出産に備えて年休を残しておいた思い出がある。
表面的な制度利用の有無ではなく、実質的に仕事と子育てを両立できているかを問う視点で、育休の取得状況を問題にすべきだといえる。
[日本経済新聞朝刊2016年8月6日付]
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