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ふんわりしっとりグルテンフリーの白花豆マドレーヌ 料理研究家・伊藤ミホさん(後編)

日経DUAL

2016/8/29

日経DUAL

 コーヒーとチョコが大好きで、外食中心だった料理研究家の伊藤ミホさんですが、結婚6年目にして奇跡的に授かった長男の誕生を機に、持ち前の探求心に火が付きます。様々な食べ物にアレルギーがあった子どもが食べられる物を探して、腸内細菌について、大根の種類について、郷土料理について、深く研究を重ねていきます。誰が食べてもおいしいおやつ作りもその延長にありました。

 前編の記事で紹介した粉寒天入り米粉クッキーのマシュマロサンドは、食べ始めると止まらないサクサク感でした。今回は一転、ふんわりしっとりのマドレーヌ。伊藤さんのレシピですからもちろん、食物繊維や高い栄養価も期待できます。

オレンジジュースの効果できれいな焼き色に仕上がったマドレーヌ(写真:坂齊清、以下同)

■食べ過ぎても「こら!」と叱らずに済む

―― 今回はマドレーヌということですが、伊藤さんが手にしているのは市販の煮豆パックですか。

 そうです。この煮豆をブレンダーでペーストにします。これは、食物繊維を増やしたいからなんです。煮豆を食べさせると、息子も娘も「口に残った」と言って皮を出したがるんです。でもペーストにしてコロコロに丸めてあげると2人ともコロッとだまされて(笑)、「おいしいおいしい」とペロリと食べてしまう。そこに目を付けました。

 基本的に、私のおやつの材料はごはんの代わりにしてもいいものばかり。米粉や野菜、豆ですので、多少おやつを食べ過ぎちゃって「もうごはん食べられない」と子どもが言っても、「こら!」と叱らないで済みますよ。

 このマドレーヌには、ホワイトソルガムという雑穀も使います。ミネラルが豊富で、栄養バランスがいい。米粉だけでもしっとりと焼き上がりますが、ホワイトソルガムを混ぜると雑穀のクセがナッツ風の味わいになり、米粉の甘い味に深みが出て、なおかつ栄養価も高まります。

―― 前回の米粉クッキーはメープルシロップを使いましたが、今回はハチミツで甘みをつけるのですね。

 はい、ハチミツは保湿成分もあるので、油の使用量を減らせます。健康効果がうたわれるハチミツですが、ただ、どんなハチミツでもいいというわけではありませんので気をつけたいところです。ミツを集めさせるために砂糖水をまいたり、農薬を使っている花畑で集めさせたり、そもそもミツバチは病気になりやすいので抗生物質を使っていたりということがあるんです。一番安心なのは、養蜂家の方に聞くことだと思いますよ。

米粉クッキー同様、マドレーヌもポリエチレンの袋の中で分量を守って混ぜていけばOK。「ポリ袋やラップにも添加物が使われていることが多いので、チェックすると安心」と伊藤さん

 今回は膨らませるために、重曹を使います。重曹は酸性のものがないと膨らまないので、オレンジジュースを入れます。オレンジジュースには焼き色を良くするという効果もあるんです。米粉と重曹だけで焼くとどうしても色が白っぽいままで、おいしそうではないから。

 材料を全部よく混ぜると、ちょっとぽってりとした生地になります。卵が入っていませんから、ふわっとした生地ではありません。これを薄く油を塗っておいたマドレーヌの型に流し入れます。そして手を水でぬらして、表面を整えてから、170℃に温めておいたオーブンで17分焼きます。

型に流し入れる

■残ったきんぴらがおやつのレシピのヒントに

―― いい香りが部屋中に漂ってきました。焼き上がりの色もいいですね。ふんわりしているのに、もっちり。甘くておいしくて、幸せな気分になります。

 こういうおいしそうな色になるのは、オレンジジュースの力なんです。

 もっとも、そもそもは子どもが飲み残していたジュースを使ったのが始まりでした。煮豆もそう。煮物の里芋が残ってしまったり、レンコンのきんぴらが余ってしまったり、というところから、色々な野菜の入った米粉クッキーのレシピを開拓しました。

残念ながら、このふんわり感は持続しないので、食べきれないときは早めに冷凍するのがおすすめ。食べるときは、室温に置いて解凍するといい。「焼いた翌日はしっとりと落ち着き、さらに甘さが際立ちます」と伊藤さん

―― 残り物をサラダなどに使うことはあっても、おやつに転用という発想はなかなか出てきません。

 アレルギーがあるせいなのかどうかは分かりませんが、うちの子ども達は味覚がすごく敏感で、冷蔵庫に入れておいた煮物は2日目になると食べないんです。ひじきの煮物も、残って2日目に出しても食べてくれない。そうやって残り物を食べないことが、いいこととは私には思えないんです。だったら、工夫して食べるということを覚えてほしい。そこで毎回、「残った物がこれになっているんだよ」とちゃんと説明しています。捨てていると思われたら困りますからね(笑)。

■寄り添ってもらえない疎外感がつらい

―― 前回の米粉クッキーもそうでしたが、今回もボウルひとつ、いや、ポリ袋ひとつで洗い物の手間もなくて、手順はとても簡単。しかも栄養価も高い。こんなおやつは、夫婦共働きでいつも時間に追われていて、でも子どもにいつもスナック菓子を与えるのも気が引ける家庭には理想的です。

 そうそう、私も働きながら、子どもと一緒においしいねと言いながら食べられる物を作りたいと思って、マクロビオティックの本などを手に取ったのですが、すごくすてきなんだけど、手間もすごい。これはもう絶対に私には無理、と悲しくなるほどでした。

 前回もお話ししましたが、私は子どもが生まれるまでは外食中心で、しかも偏った食生活をしていて、自分のためだと食に関してはちっとも頑張れませんでしたが、アレルギーのある子どものためなら頑張れる。そうは言っても、どこまで頑張るかは、自分なりに折り合いをつけることも大事かと思います。ただでさえ、お母さん達は頑張っていますから。子育てってどうしても母親に負担が大きくなりがちで、特に食べ物のことは任されがちですからね。

―― 今、上のお子さんは小学4年生ですよね。給食はどうしているのですか。

 除去食で対応してもらっていますが、必要に応じてお弁当を持っていっています。食べられないものがたくさん入ったメニューの日はお弁当を持たせています。中身は息子のリクエストに応えるものなので、「友達がうらやましがるかな」と言いながら持っていっていますよ。

―― 今はアレルギーを持つ子が多いですから、学校側の理解もだいぶ進んでいるのでしょうか。

 ここ数年でだいぶ理解が進んだかもしれませんね。それでもやはり、毎年秋ごろになると、翌年の4月に小学校に入るお子さんのいるお母さん達からよく相談を受けます。給食をどうしたらいいんでしょうかって。やっぱり、まだまだ理解のない学校も多いようですよ。学校側と話をしたときに、対応してもらえないのは仕方がないけれども、つらいのは寄り添ってもらえないことだとお母さん達はよくこぼしています。

 母親がお弁当を作って当然、という姿勢の学校も少なくないようで、こういうときに一言、「お母さんも大変ですが頑張ってくださいね」と言ってもらえるだけで違うのに、というのです。家庭でも同じですよね。お父さんから一言「ありがとね」と言われるだけで頑張れる。

■自然のおいしさを生かした食べ物をみんなで楽しみたい

―― 伊藤さんが子育てに関して心がけていることは何ですか。

 「壊れる物を使わせよう」です。食器も壊れる物を使わせてきました。陶器は落とせば割れますよね。割れにくいプラスチックとかメラミンの食器も子ども用で色々ありますが、そういうものではなく、陶器や磁器で食べさせたいと思ってきました。

(写真:坂齊清)

 もうひとつは、「味わう舌」を子ども達には持っていてほしいなと思っています。以前に聞いた料理人の方の話では、添加物やうまみ調味料を使うのをやめたらお客さんから「味が落ちた」と言われたそうです。保存料や添加物は一切使わずに頑張っている和菓子職人の方の話では、一日たてば大福は硬くなるというと「じゃあいらない」と帰ってしまうお客さんがいる。そんな話を聞くと、食べる側の私達が添加物や人工的な調味料の味、そして便利さに慣れきってしまっていて、「味わう舌」が衰えているのかもしれないという危機感も覚えます。

 舌って財産ですよね。だから子ども達にはちゃんとした野菜の味が分かる舌を育ててあげたい。私の理想は、体にいい物、人工的に作り上げた食材ではなくて自然のおいしさを生かした食べ物をみんなで楽しめたらいいなあということです。

 息子が給食を食べられない日に持参するお弁当も、お友達に分けてあげて一緒に食べてもらいたいくらいです。もちろんそういうことをしないルールなのは分かっていますけれどもね。今日作ったようなグルテンフリーのお菓子も、みんなに食べてもらえるといいのにね、と子ども達といつも話しているんです。

白花豆とホワイトソルガムのマドレーヌ(6個分)

●材料
A
ホワイトソルガム 50 g
製菓用米粉 50 g
自然塩 ひとつまみ
重曹 小さじ3分の1
シナモン 小さじ3分の1

B
100%オレンジジュース 70 g (※使う製菓用米粉によってはオレンジジュースの量が変わることもある)
ハチミツ 40 g
菜種油 35 g
白花豆の甘煮 50 g

●作り方
1.白花豆の甘煮をブレンダーでペースト状にする。
2.Aの粉類をポリ袋に入れ、片手で袋の口をつかんで、もう片方の手で袋の底をポンポンと弾ませ、まんべんなく混ぜる。
3.2の袋にBを入れ、なめらかな生地になるまで混ぜる。
4.薄く油を塗っておいた型に、生地を流し入れる。水でぬらした手で表面をちょんちょんと触れてならす。
5.170℃に温めておいたオーブンで17分ほど焼く。

(ライター 山田美紀)

[日経DUAL 2016年7月1日付記事を再構成]

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