スマホゲーム、「リアル」にこだわるPR
実況中継や開発者のトークイベント
「ポケモンGO」で一躍注目を集めているスマートフォン(スマホ)向けゲーム。今や国内外、大小合わせ膨大な数のメーカーが配信。手軽に遊べるタイトルが乱立しており、誕生と消滅を繰り返している。スマホゲーム戦国時代において、利用者をいかにひきつけ、長期間遊んでもらうか――。ゲーム会社だけでなく、PR会社も効率の良い広告・宣伝に頭を悩ませる。そのなか、「リアル」に焦点を当てた手法に注目が集まっている。
「すごーい!やっぱり、やりこんでいる人は早い。ここはどうやればうまくできるの?」。7月下旬、東京・秋葉原で開かれたゲームや動画製作者向けの交流イベント。ゲーム好きで知られるタレントのてんちむさんが、攻略法や感想をインターネットで配信する著名なスマホゲーム実況者らと、人気スマホゲーム「白猫プロジェクト」を舞台上でプレーした。訪れた観客はプロジェクターに映し出されたプレー内容を見てそのうまさに驚きの声を上げた。ゲーム制作を手掛けるアシッド(東京・千代田)の吉宗鋼紀氏こと、吉田博彦代表取締役も登場。開発秘話のほか、「ユーザーの心は移ろいやすい」と胸のうちを語った。用意された30席ほどのイスは埋まり、立ち見が出るほど盛況だった。この日のイベント内容はネットでも配信された。
本イベントはゲームやファッションに関する情報発信に取り組む、MOVIES PLANET(東京・渋谷)が主催した。神田卓也取締役は「ゲーム会社はやみくもに広告費用をかけるのでなく、効率良く効果的に消費者へ訴えかける手法を探っている」と指摘する。これまで収益の柱にしていたゲーム内の有料くじ引き「ガチャ」への風当たりは強く、業界は規制に乗り出している。一方、テレビや雑誌で大々的にPRすれば多額の費用がかかる。ユーザーを取り込む効果が薄ければ、ゲーム会社にとって大きな痛手となる。大人気スマホゲーム「パズル&ドラゴンズ」で市場をけん引してきたガンホー・オンライン・エンターテイメントも例外でない。同タイトルの課金収入が大きく落ち込んだため、2015年12月期の連結純利益は前の期に比べ3割減に沈んだ。
新たにゲームが配信されてから、1カ月後まで継続して遊ぶ人は当初に比べ4分の1ほど残っていれば良いほうだという分析もある。スマホやパソコン向けゲームの企画・運営を手掛けるフジゲームス(東京・江東)の松本祐磨さんは「今は配信から1~2年経過したゲームで新規ユーザーを取り込みたいと望む企業が多い。リアルのイベントが有効だと考えるが、何が決め手になるのか模索している最中だ」という。一方的なプロモーションではなく、アーティストのライブなどを利用した手法も念頭に置く。スマホゲーム戦国時代の裏では、そこで生き残るための策を練る別の戦いもまた繰り広げられている。
(商品部 高野壮一)
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