急速に普及する「加熱式たばこ」 自治体対応に差異
副流煙やにおいといったデメリットが激減するとして、喫煙者から急速に支持を集めている加熱式たばこ。その本命ともいえるのが、2016年6月に販売を再開した日本たばこ産業(JT)の「プルーム・テック」だ。16年3月に福岡市の一部店舗とJTのオンラインショップで販売を開始したが、最初の5日間で初月計画の約5倍の注文があり、即座に販売休止となっていた。
加熱式たばこのヒットの火付け役となったのは、フィリップ モリス の「iQOS(アイコス)」。開発に20億ドルをつぎ込み、国内では14年11月に名古屋市で試験販売を開始。16年2月にユーザーが10万人を突破した。16年4月末時点で、アイコスの販売台数は100万台を突破。全国で購入できるが、依然として品薄の店舗も多い。
両者とも火を使わずに蒸してタバコ葉を加熱する方式で、発生するのはたばこベイパーと呼ばれる水蒸気だけ。煙も灰も出ず、においがほとんど気にならないのがメリットだ。
プルーム・テックとアイコスの違いは加熱方法にある。前者はタバコ葉をカプセル越しに加熱し、アイコスは直接加熱する。そのため「プルーム・テックは燃焼に伴うタール成分は発生しない」(JT)。アイコスも研究の結果、紙巻きたばこと比較すると有害なタールは約9割低減していたという。電子たばこと違い、両者ともニコチンは含まれている。
急速に浸透する加熱式たばこに対して、自治体でも路上喫煙への対応が分かれている。名古屋市や大阪市は「周囲への悪影響がない」として禁止対象としていないが、横浜市や東京都千代田区はたばこ税が課税されていることを理由に、路上で喫煙すれば罰金を課す。ますます白熱する市場と、迫られる自治体の対応。今年は"加熱式たばこ元年"といえそうだ。
(ライター 宮岸洋明)
[日経トレンディ2016年8月号の記事を再構成]
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