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ロングトレイルで野山へ

歩く旅、登山より気軽

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NIKKEI STYLE

自然や歴史、文化に触れながら野山を歩く「ロングトレイル」が日本でも広がり始めた。登山ほどハードではなく、中高年や女性でも気軽に始められるのが人気の背景のようだ。

ロバート・レッドフォード主演で30日に日本でも封切られた米映画「ロング・トレイル!」。米東部のアパラチア山脈に沿って14州約3500キロにわたる自然歩道「アパラチアン・トレイル」を旧友と2人で歩く物語だ。

欧米が発祥のロングトレイルは登山に近いものから里山や街道を歩くものまで様々。短い日帰りコースはハイキングやトレッキングと同じだが、一般的には数十キロから数百キロ、米国では5000キロに近いものもあり、何回かに分けて歩くことが多い。

初心者も楽しめる

6月末、NPO法人主催のロングトレイル入門講座で長野県小諸市のトレイル約15キロを初めて歩いた東京都西東京市の会社員、斎藤陽一さん(32)は「登山だとずっと登ったりずっと下りたりで景色どころではない。今回は民家の近くを歩いたり雲を眺めたり景色を楽しめた」と語る。初心者でも楽しめるのが魅力だが、季節や天候で難易度は変わるので自分の技能に見合うコースを選ぶ必要がある。

日本初の本格ロングトレイルとされるのが、長野・新潟県境の関田山脈の尾根伝いに2008年全通した信越トレイル。NPO法人、信越トレイルクラブ(長野県飯山市)が日本で初めてボランティアによる管理システムを導入して整備、運営している。小山邦武代表理事は「旧道・古道を重機を使わずにボランティアの力で復元し、里山と人間の身近な関係を体験できる」と話す。約80キロのルートは4~6日で踏破できる。

ロングトレイルは全国で50ほどに広がっているといわれ、昨年12月には普及宣伝に向けてNPO法人日本ロングトレイル協会(長野県小諸市)が発足。18団体が参加している。東北海道の北根室ランチウェイは牧場の中を通って摩周湖へ。農場のトレーラーハウスや山小屋、温泉などに宿泊しながら歩ける。

東日本大震災の被災地で整備が進むのが「みちのく潮風トレイル」だ。環境省が復興支援を目的に、青森県八戸市から福島県相馬市まで700キロ以上のルートを計画し、370キロが開通した。来春に全通する予定。住民と話し合ってルートを決め、基本は既存の道をつなぐ。断崖絶壁や浜辺、旧街道など変化に富む。

「歩くことで厳しい自然とつきあってきた風土、暮らしを体感し、地域の人との交流にもつなげてほしい」と東北地方環境事務所の竹元恵自然保護官。自然観察、アウトドア体験、健康づくり、巡礼など多様な利用を想定する。

山岳観光てこ入れ

トレイルが日本に普及してきた理由を、北海道大学の木村宏特任教授は「ひたすら頂上を目指すきつい登山だけでない山の楽しみ方が中高年や女性に広がり始めた。高齢化が進む山岳会がロングトレイル開設に乗り出す例もある」と語る。

スキーも含め山岳観光は全体でみると下り坂にある。日本生産性本部がまとめた16年のレジャー白書によると、登山の参加人口は09年の1230万人から15年は730万人に減少。御嶽山の噴火遭難などで登山を控える人が増えたのが一因だ。また、09年ごろからの「山ガール」ブームで12年に11.6%に高まった20代女性の参加率は15年に6.4%に。山岳観光地を抱える自治体やアウトドア業界が、てこ入れ策に年間を通じた広域観光につながるロングトレイルに着目した面もある。

前日本山岳会副会長で日本ロングトレイル協会会長の節田重節氏は「熊野詣で、四国のお遍路さんなど日本には昔から歩く文化があった」と指摘。「ロングトレイルは若者が山に目を向ける入り口になり、登山がきつくなった層も受け入れ可能」とし山レジャーの多様化に期待をかける。

 ◇   ◇

環境整備の遅れには不満 お遍路との類似性指摘

ツイッターではロングトレイルが各地に広がっている様子がうかがえる。「ぐんま県境稜線(りょうせん)トレイル。国内唯一の稜線100キロのロングトレイルってすばらしい」と、群馬県が6月22日に設置した検討委員会に関する記述や「信越トレイルの整備。機会があればやってみたい」という声があった。「四国遍路は歴史も伝統も文化も秀逸で世界では指折りのトレイルではないのか?」と、お遍路とロングトレイルの類似性も指摘されている。

一方、「ルート上にテントサイトが欲しい」など、欧米と比べ環境整備が遅れていることに不満を示す意見も散見された。調査はNTTコムオンラインの協力を得た。

 ◇   ◇

ロングトレイル入門 知的好奇心も刺激

NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構(東京・中央)が今年から開催するロングトレイルハイカーの入門講座に、初心者の筆者(55)も運動不足解消のため参加してみた。6~11月に毎月1回、計6回の連続講座で初日が座学、2日目が実践という内容だ。長野県小諸市にある安藤百福記念自然体験活動指導者養成センターが拠点になっている。6月25、26日の第1回には首都圏を中心に30~60代の男女12人が参加した。

「自然や景観、歴史、地学など様々な知的好奇心を満たすことができ、健康にも効果的です」。初日はまず、山岳雑誌「山と渓谷」元編集長の山口章・同機構専務理事がロングトレイルの楽しみ方を教えてくれる。「初心者こそ軽量で高機能な最新の用具を使った方がいい」とし、事前に情報収集してしっかりした計画を立てる重要性を強調した。

2日目。歩くのは安藤百福センターが整備した浅間・八ケ岳パノラマトレイルの千曲川コース約15キロ。千曲川の浸食で生まれた断崖や浅間山のパノラマ、古民家や田園を楽しめる。高低差230メートルで、初心者向きだ。

午前9時。センター前で全員でストレッチ体操をしてから森の中を1列になって歩き始める。ウグイスやセミの声を聞きながらゆっくり歩き、御牧ケ原の台地に上がって一休み。「歩き始めは30分ほどで調整休憩をとり、靴ひも、ザックの背負い方、暑さ対策、水分補給などを確認して下さい。その後は50分歩いて10分休みが基本。10分以上休むと身体が冷えてしまいます」と山口さん。歩くのには適度なペースが必要なことを理解する。

途中にある道標はセンターが土地所有者と交渉して立てている。「定期的に草刈りをするなどルートの維持管理も必要です」とセンターの小島真一さん。次第に田んぼや畑が広がって農作業の音が聞こえる。「のどが渇いたと感じる前に水分補給が必要です」と山口さんが助言してくれる。

再び森林の中、河岸段丘の急ながけを一気に降りると、前方に浅間山麓に広がる小諸の街が眺望でき疲れも忘れる。千曲川を越える手前の公園でお昼を食べる。千葉県柏市から参加した原茂さん(65)は20年ほど前に登山を始め、定年を機にキリマンジャロなど海外の高峰にも登ってきた。「一方で、高山のピークハントでなく横歩きの山旅もやりたい。今は迷っているところです」という。奥さんのきよ子さん(63)も「登山とは全然別物だけど、トレイルも楽しい」と満足げだ。

千曲川を越えた先に急で長い階段が待ち受けていた。「小股でゆっくり登れば大丈夫」という助言に従うと、思ったより息が切れずに上れた。小諸城址の懐古園の前で一休み。この日は通過するが、史跡なども自由に立ち寄るのがロングトレイルだ。再び段丘を下りて千曲川を越え坂を上る。上りが続いて参加者の口数が少なくなる。養蚕農家の建物が残る大久保集落を過ぎ、氷という集落にある風穴で涼しい風に当たって息を吹き返す。

センターに戻ったのは午後2時40分。風もあって歩きやすかったが、到着時に足の裏をつりそうになった。「休憩を多くとってもらえたので何とか歩けました。ロングトレイルは頂上まで行かなくても自然を楽しめるのが良いですね」と、東京都から参加した藤井尚子さん(48)。将来は北海道の北根室ランチウェイに挑戦したいという。

第2回は3週間後の7月16、17日。初回はザックなどなるべく手持ちのものを使ったが、膝をサポートする機能性タイツなど前回の講義で聞いたものを新たに購入した。装備をそろえていくのも楽しい。この日はパッキングの工夫、上りや下りの歩き方を学んだ。

翌日は浅間・八ケ岳パノラマトレイルの軽井沢コース14キロを15人で歩いた。今回はポール(ストック)2本を使って歩く訓練だ。うまく使えば疲労を軽減できるというが、最初はポールと同じ方の足が出てしまう。

軽井沢駅前から別荘地を抜けて標高1256メートルの離山を目指す。曇りで湿度は高いが、並木があるので歩きやすい。離山の登り口からはさすがに暑くなり、整った登山道が次第に細くなって霧がかかっている箇所も。それでもポールウオーキングに慣れて登りもテンポよく歩ける。駅から2時間半ほどで離山の頂上に到着。駅からの高低差は約300メートルとはいえ達成感がある。雲がかかった浅間山を真っ正面に見ながらお弁当の時間だ。

別ルートの下りは急で木道がつるつる滑って気が抜けない。「事故の大半は下りですよ」と、山口さんが注意を促す。下山後は南西へ、ずっと舗装道路をたどる。別荘地を越え、キャベツやトウモロコシの畑を過ぎ、道端の道祖神などを見ながら、目的地のしなの鉄道信濃追分駅まで休みながら歩いた。山道に比べて少し退屈だが、心地よい疲労がある。

「自信がつきました。続けてみようかなと思います」と、2回とも参加した神奈川県鎌倉市の主婦、宗田共子さん。東京都国立市のパート、吉澤節子さん(66)は「天気図と地図の読み方を教えてくれる次回も申し込みました」と語る。様々な知識を得られるのもロングトレイルの魅力のようだ。私も帰りに軽井沢のアウトレットモールに寄り新しいザックとポールを買ってしまった。いつかキャンプ泊をしてもっと長い道のりに挑戦したい。

(長野支局長 宮内禎一)

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