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吉野ケ里の3倍の巨大集落 突然の消滅と「弥生」の謎

歴史新発見 鳥取県米子市・大山町 妻木晩田遺跡

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NIKKEI STYLE

 弥生時代の遺跡としては、佐賀県の吉野ケ里遺跡の3倍以上の面積を持つ集落跡が中国地方の最高峰、大山の北麓にある。鳥取県米子市と大山町にまたがる152ヘクタールが国史跡の妻木晩田(むきばんだ)遺跡だ。遺跡中最大の墳丘墓が発掘され3世紀後半の築造と今年2月に発表された。巨大集落はこの後、ほどなく突然消滅。謎の多い古代の山陰地方で、弥生時代から古墳時代への移行期のカギを握る遺跡として注目を集める。

 妻木晩田遺跡は「伯耆富士」と呼ばれる大山(1720メートル)の北麓に位置し、孝霊山(751メートル)から派生する標高90メートルから150メートルの丘陵上に展開する。

集落は弥生時代中期後葉(紀元前1世紀)から形成され始める。居留域が次第に広がり、後期後葉(2世紀後半)に最盛期を迎え、古墳時代前期初頭(3世紀後半)までの約300~350年間にわたって営まれた。

遺跡は未指定地も含めると4つの丘陵の約172ヘクタールに広がる。巨大環濠(かんごう)集落として知られる吉野ケ里遺跡で国の特別史跡に指定されているのは約27ヘクタール、佐賀県の史跡指定部分が約23ヘクタール。いかに妻木晩田遺跡が広大かわかろうというものだ。

2011年度から15年度にかけて行われた発掘調査で、妻木丘陵の北西端に2つの墳丘墓が新たに見つかった。この2つは仙谷8号墓と仙谷9号墓で、広大な遺跡のなかでこれまで見つかっていなかった古墳時代前期初頭の築造とみられることから関係者に衝撃が走った。

仙谷8号墓は遺跡中最大の規模と判明。東西9メートル~18メートル、南北14メートルの台形をしている。しかも驚くべきことに、大山北麓の弥生時代の墳丘墓は伝統的に木棺で埋葬されていたのだが、8号墓には大小の石を組み合わせた石棺に遺体を収めていた。

棺の上に蓋石を5個並べ、頭側に置かれた最大の石は120キロを超えていた。埋葬施設は1つだけ。つまり1人だけをまつっている。石材がどこから運ばれたのか詳細は調査中だが、約3~4キロ離れた地域から持ち込まれたとみられる。

8号墓は区画溝の掘削や大型石材の搬入や組み立てなど相当量の労働力の投入が必要なことは明らか。調査にあたった鳥取県立むぎばんだ史跡公園の長尾かおり文化財主事は「大きな権力を持った人物が埋葬されていたと考えられる。有力者層を代表する『首長』の墓」と位置づけている。

8号墓から人骨の頭部の破片がみつかったものの、土器などは出土しなかったため、築造時期を特定するのに時間がかかったが、隣接する9号墓との共同区画溝の土の層を検討。先後関係が認められなかったため9号墓と同時期の古墳時代前期初頭と結論づけた。

これまでの調査で、妻木晩田遺跡は墓域が洞ノ原地区(紀元1世紀後半ごろ)から仙谷地区(同2世紀ごろ)、松尾頭地区(同3世紀前半ごろ)と移動したことが分かっていたが、遺跡の最終段階である3世紀後半には墳丘墓は築かれなかったと考えられていた。

弥生時代の山陰地方の墳丘墓の大きな特色として「四隅突出型墳丘墓」がある。墳丘の表面に化粧石を貼り、墳丘の四隅を突き出させる独特な形をしている。山陰地方を中心とした日本海沿岸に分布し、北陸地方にも石を貼らない形式の四隅突出型があり、それらを含めると約100基が確認されている。

妻木晩田全体で見つかっている墳墓は34基。このうち四隅突出型は後期前葉から後期中葉にかけての13基が確認されている。

四隅突出型墳丘墓は出雲地方に多く、規模も大きいことから出雲地方で発展した形式とみられている。妻木晩田の被葬者は出雲地方と交流があった可能性はある。

ただ、出雲との関係について、四隅突出型墳丘墓に詳しい島根大の渡辺貞幸名誉教授(考古学)は「出雲と安来は共通性があるが、伯耆では独自に工夫をした様子がうかがえる。妻木晩田では後期後葉の墳墓が見つかっておらず資料が少ない」と指摘する。

妻木晩田が終焉(しゅうえん)を迎える直前に、石棺を使う新しいスタイルで最大の墓を築いたことに関しては、「弥生時代後期は、魏志倭人伝など中国の史書に『倭国乱』と記述された時代。いつ敵が攻めてくるか分からない緊張感に満ちていた。そうした時ほどアイデンティティーを強く求め、独自性を育む傾向があることが関係しているのかもしれない」と話す。

妻木晩田の特徴は集落が巨大であるだけではなく、高度な文明がすべての集落にゆきわたっていたことにも現れている。当時の最先端の素材である「鉄器」が質量ともに豊富に普及していた。

実に400点を超える小型工具など鉄器が出土。後期後葉には鍛冶工房とみられる竪穴住居が複数存在する集落もある。

こうした鉄器が多量に流通した背景として、鉄器がみつかった竪穴住居の多くから「有溝石錘」と呼ばれる石製の錘(おもり)が見つかっており、「操船技術を持って海上移動をしていた集団がいて北部九州などから鉄器などの交易品を運んできたのではないか」と同史跡公園の高尾浩司係長は推測する。

妻木晩田ではすべての集落で大きな偏りなく鉄製品がゆきわたっていた。貴重で必要性の高い物資である鉄素材などを交易などにより獲得できることが「有力者」になるために欠かせない能力であったと推測できる。この能力があったからこそ様々な技能を持った多くの人々が集まってすむようになったともいえる。

遺跡には約450棟の竪穴住居跡や約510棟の掘立柱建物跡がある。ひさしがついた大規模な掘立柱建物もみつかっている。破鏡やガラス製品など外来交易品も多い。

ところが、唯一の石棺をもった、しかも最大の墳丘墓が築かれた後、集落は突如として終焉(しゅうえん)を迎えるのである。何があったのか。

長尾主事は3世紀に起こった大きな社会変動で従来とは異なる新たな交易ネットワークが構築されたのではないか、という。「このため従来の首長を中心とした有力者間の結びつきが弱まり、複数の集団が分散して独立していったのではないか」というわけだ。

弥生時代の文物の移動に日本海沿岸が果たした役割は極めて大きい。激動の弥生時代から古墳時代といわれる新しい時代にどのように移行したのか。山陰を代表する大集落であった妻木晩田の解明がかかせない。

妻木晩田遺跡は広大なこともありまだ全体の約10分の1しか調査が進んでいない。今後は当時の人々の生活に密着するデータ集めなどを行う。来年3月には鳥取県が主催する弥生時代の食をテーマにしたシンポジウムを開催する予定という。

(本田寛成)

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