「笑点」卒業した桂歌丸さん 寄席に力、後世に芸残す
「大喜利の歌丸で終わりたくなかったんです」。開始から50年にわたり出演した日本テレビ系の演芸番組「笑点」を5月に卒業した。一方で、秋まで芸歴65周年記念の落語会が各地の寄席で続き、舞台出演は増える。「楽になるかと思ったらとんでもない。改めて緊張してます」
「後世に芸を残していくのがこの仕事の使命。そういう責任感を強く持っています。あたくしが先輩から噺(はなし)を受け継いで、それが土台になって後に誰かが自分なりにやってくれるようにならないと」
近年取り組むのが明治の名人、三遊亭円朝作の長編。東京・国立演芸場で今年4月には人情噺「塩原多助」を口演。8月には敵討ちの物語をベースにした「江島屋怪談」を披露する。「円朝全集を読み直して、覚え直しています」
元は「江島屋騒動」という作品だが、後半に老女の幽霊を登場させ題の一部を「怪談」に改めた。「どんなベテランになっても、新たな工夫を取り入れないと。長編だけでなく寄席でかけるような短い噺も、まだ覚えたいものがありますし」
落語は座ったまま扇子と手ぬぐいだけで1人何役も演じ分けて芝居をするようなもの。入門時の教えを守り、「いまでも歌舞伎は見に行っています。型を見て、間を知っていないと江戸の噺はできません。家では野村胡堂の『銭形平次 捕物控』など時代小説を読んで、当時の風景を頭に描いています」
来月で80歳。「新たにものを覚えるのは苦しくなってきました。でも繰り返し稽古するしかない。桂米丸師匠は90を超えて、いまも新作をやっている。負けちゃあいらんない。あたくしにはもう落語しかないんですから」(かつら・うたまる=落語家)
[日本経済新聞夕刊2016年7月25日付]
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