スマホの充電時間が半減も 2500円の「電流計」を試す
スマートフォン(スマホ)やパソコンなどの周辺機器を作っているオウルテックから、USB接続の電流チェッカー「OWL-UPC01」が発売された。接続したUSBポートの電流や電圧を測れるだけでなく、パソコンのUSBポートからの電流を増大させて、スマホの充電時間を最大で2分の1に短縮してくれるという。本当に短くなるのか試してみた。
スマホの充電にかかる時間は、ACアダプターやパソコンなどが出力できる電流(アンペア数)に大きく左右される。一般的なスマホを充電するACアダプターは1A程度の電流を流せるのだが、実はパソコンのUSBポートだとUSB3.0で最大0.9A、USB2.0で最大0.5Aと少ない。そのため、多くの人がACアダプターから充電したほうが速いと感じているのではないだろうか。
また"iPadの充電に対応"などをうたうACアダプターでは、2A以上の電流を流せるものが多く、充電時間はさらに短くなる。とはいえ電流をどんどん大きくしていけば、それだけ充電時間が短くなるわけではなく、スマホは許容できる最大のアンペア数が決まっている。それを超える電流を流しても充電時間は短くならない。
前置きが長くなってしまったが、今回紹介する「OWL-UPC01」は、パソコンのUSBポートからの電流を最大1.5Aまで引き上げて、充電時間の短縮を実現するという。
充電モードは3通り
パッケージには、指先サイズの本体と約20センチのUSBケーブルが入っている。本体の両端には標準サイズのUSBポートと、microUSBポートがついている。接続は、本体をパソコンとスマホの間に挟むように取り付ける。USBケーブルは2本必要になるが、もう1本は充電に普段使っているものを使えばいい。
本体横には「D」「P」「S」の3つのモードを切り替える、小さく固いスイッチがついている。「D」はデータ転送&充電モードで、電流が増えることはなく、ただの電流チェッカーとして動作する。USBケーブルのみで接続しているのと変わらない状態で、充電と同時にデータをやり取りできる。
「P」と「S」は、それぞれiPhoneなどのアップル製品用、Androidスマホ用の急速充電モード。このモードは急速充電専用モードとなり、データのやり取りはできない。ちなみに、パソコンやスマホと接続した状態でスイッチを切り替えてもモードは切り替わらないようで、表示される電流の値は変化しなかった。モードを切り替えるには、一度スマホを外してからスイッチを切り替え、それから再び接続する必要がある。
表面には電流や電圧を表示するパネルと、その表示モードを切り替えるボタンがついている。表示モードは3種類で、電流を表示するモード、電圧を表示するモード、電流と電圧を交互に表示するモードがある。基本的な使い方は、「D」「P」「S」の中から接続モードを選び、スマホを接続し、表示モードを切り替えて電流や電圧をチェックするといった感じだ。
急速充電モードの充電時間はほぼ半分に
筆者はAndroidスマホを使っているので、「D」と「S」モードを比べてみることにした。まず「D」モードで、パソコンのUSB3.0ポートに「OWL-UPC01」を接続。そこに普段使っているスマホ(Xperia Z5)をつないだところ、電圧は4.99V、電流は約0.45Aと表示された。
続いて「S」モードに切り替えてスマホを接続し直してみると、電圧は4.82Vであまり変わらないが、電流は1.47Aと約3倍になった。確かに、パソコンのUSBポートからの電流が増大しているようだ。
使い方が分かってきたところで、急速充電の効果を確かめてみることにした。充電するのは、使わなくなった初代Xperia Z(SO-02E)だ。少々古い機種だが、これのバッテリー残量が5%の状態から90%になるまでの時間を3回測定して平均値を出してみた。充電に使うのは、普段使用している13.3型液晶のモバイルノートPCのUSB3.0ポートである。
まず「D」モードにしてスマホを接続して充電してみると、電圧は約5V、電流は0.52A前後だった。そしてバッテリーを90%まで充電するのにかかった時間は平均して254.4分で、4時間15分近くかかってしまった。これは長い。念のために、本体を外して付属のUSBケーブルで直接充電してみたところ平均255.1分で、ほぼ同じ時間だった。
そして「S」モードにして充電してみたところ、電圧は約5V、電流は充電開始直後は1.2A前後だった。電流は充電が進むとだんだん小さくなり、最終的には0.7A前後になった。そして充電にかかった時間は134.3分だった。2時間15分程度で、確かに「D」モードの時の約半分程度に短縮できた。
パソコンでスマホを充電することが多い人に
電流を増幅して充電した場合、スマホに悪影響を与えるのではないかと気になったが、前述のようにスマホには許容できる最大電流があり、それ以上は受け入れないようになっている。最初に試しに接続したスマホは「S」モードにすると1.47Aで充電できたが、充電時間のテストに使った初代Xperia Zは1.2Aまでしか受け入れていなかったのはこのためだろうと考えられる。
電流を増幅する仕組みは、簡単に説明するとこんな感じだ。「OWL-UPC01」に接続されたスマホは、パソコンのUSBポートではなくACアダプターに接続されたと認識し、「もっと電流が欲しい」と要求する。たいていのパソコン側のUSBポートは、最大で1.5Aまで電流を出力できる。この結果、急速充電が可能になるというわけだ。ただし、パソコンの中にはUSBポートからの電流を規格通りに0.5Aや0.9Aに制限しているものもあり、こうしたパソコンでは急速充電はできないという。
オウルテックの「OWL-UPC01」は、確かに充電時間を短くできることが分かった。外出先で充電に使える機器がパソコンしかないときでも、この機器を持っていれば「急速充電」できるのだ。いつも2AクラスのACアダプターで充電できる人にはあまりメリットはないが、パソコンのUSBポートでスマホを充電することが多い人には充電時間を短縮してくれる便利なアイテムといえるだろう。
(IT・家電ジャーナリスト 湯浅英夫)
[日経トレンディネット 2016年6月24日付の記事を再構成]
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