大人のペンケース シンプルでカッコよく高級感
これまで、胸ポケットに差したボールペン1本で足りていたビジネスの現場でも、複数の筆記具を使い分ける人が増えてきた。また、カフェなどで仕事する場合、どこでも自分の作業場にできるようなペンスタンドやペントレイがあると便利だ。そんな用途にぴったりのペンケースが次々と登場。子どもや学生の領域だった筆箱やペンケースが、大人も普通に使う道具になってきているのだ。今回、ビジネスで使える機能やデザインを持った最新のペンケースを中心に集めた。
収納時は平たく、スタンド時は安定性抜群「ネオクリッツフラット」
ペンスタンドになるペンケースの元祖、コクヨの「ネオクリッツ」は、たくさんの筆記具を持ち歩き、どこでも作業をしたいユーザーに圧倒的な人気の名作だ。ただし、容量を大きくするのと、ペンスタンド状態にしたときに安定させるために、全体の形が円筒のようにコロンとしている。カバンに入れにくく、ノートと一緒に持つのにも不便なところがあった。
そういった部分を改良したのが「ネオクリッツフラット」だ。ネオクリッツに比べると少しだけ収納力を減らしたものの、全体を平たく持ちやすくした。
平たいデザインになったことで、従来は学生向きのデザインだったネオクリッツが大人でも手にしやすくなったのは大きい。中に何も入れないと、キレイに平たくなるのもカッコいい。それでいて、ペンスタンド状態にしたときの安定性はしっかりと確保しているのも見事。ファスナーが2つ付いていて、片方のファスナーを開けるとペンスタンドになり、もう片方も開けると、ペンケースの下部が完全には開かず、出し入れしやすいペンケースとして使える仕様になっている。
上部がスルっとスライドする「デルデ」
ネオクリッツの独壇場だった、ペンスタンドになるペンケースの分野に新しいアイデアで参入した「デルデ」は、ポーチ状のペンケース。素早くペンスタンドに変わる構造が魅力だ。
デルデは、上部のファスナーを開け、左右にあるつまみを引っ張り下ろすだけで、しっかり自立するペンスタンドに変身する。布製のケースなのに、ほとんど引っ掛かることなく上部がスルッと下にスライドするスムーズさ、引っ張り下ろした上部が下部を支えて自立状態が安定する仕組みの見事さ、さらに、上下が別の作りになっているので上下別のデザインにすることができるなど、一つのアイデアがいくつものメリットに結びついている。
ペンケースとしてはやや大振りで、筆記具だけでなくハサミなどの文房具もまとめて入れてツールボックス的に使うと重宝する。また、アメニティーグッズを入れ、旅先のホテルの洗面所にスタンド状態にして置くとか、ケーブル類をまとめて入れるなど、使い方の幅も広がる。机の上の小物入れとして使いながら、持ち出したいときにさっと携帯できる、よくできた製品なのだ。
シンプルすぎてカッコいい「パルプペンケース」
デスク上ではシンプルなペントレイとして、フタをしてゴムバンドで留めればペンケースとして持ち歩ける、パルプ素材を使った超軽量ペンケース。ペンケースというより、小型のストレージボックスといった趣のデザインは、そのむき出し感が机の上で映えてカッコいい。
素材は段ボールや牛乳パック、古新聞などの古紙だけを使って作られたパルプ。H66×W191×D32mmとやや深さがあるため、筆記具だけでなく、クリップや付せん、ハサミなどを入れて、机の上の小物の整理にも使える。また引出しの中の仕切りボックスとして使うのもいいだろう。
小物入れとして使う場合、フタにゴムバンドをした状態でも積み重ねられる。これが、たくさんのペンを分類整理するケースとして使った場合などに役立つ。見た目が収納ボックスなので、机の上にいくつも並べて置いても、見た目の統一感があってゴチャゴチャした印象にならない。価格も手頃なので、複数用意して使い分けるのもいいだろう。気取らず、おしゃれ過ぎない、適度にデザインされたスタイルが、場所を選ばず使っていてラクなのだ。
1本ずつしっかり守る「ロールペントレイ」
本当に気に入っている筆記具数本だけを持ち歩きたい場合、できればペンケースの中で1本ずつ、お互いがぶつかって傷つかないようにしたい。しかし、あまり大仰なものだと、出し入れや持ち歩きが面倒になってしまう。そういう用途にピッタリなのが、神戸派計画の「ロールペントレイ」。
これは、柔らかいシープスエード(羊革)で作られたポケットに筆記具を1本ずつ(合計3本)収めるもの。そのまま畳んだり、丸めたりして持ち歩き、使用時は広げれば、そのままペンを置くための座布団的なものになるという、他に類を見ないデザインだ。
まず、横長のポケットにペンを横から差し込むという構造が珍しい。しかし、このスタイルのおかげで取り出しやすく、中のペンをしっかりと保護できるわけだ。シープスエードの柔らかいけれどしなやかで滑らない表面の感触が、筆記具を載せたときに安心感がある。とても大事に守ってくれる雰囲気は他のペンケースにはない面白さだ。個人的には、ペンを入れたらフラップを閉じただけの、平たい形で持ち歩くのが好きだ。
使いやすくて美しい「ピアス ペンケース M」
革製の横置き、上部にジッパーが付いたクラシカルなペンケースを、上質のバッファローカーフを使い、職人が丁寧に仕上げている。
こういうオーソドックスな形のペンケースは長く使われているうちに、作る側がなぜ使いやすいのかを忘れて、形だけが継承されているケースも多い。定番デザインが必ずしも使いやすいわけではない理由は、そういうところにあるのだろう。
ノックスの「ピアス ペンケース」は、この形状がなぜ使いやすいのかが分かっている職人による、細部まで丁寧に作られたオーソドックスなペンケースなのだ。ファスナーがどこまで開くと開口部が使いやすく開くのか、内装の不要な出っ張りがどれだけ収納力を減らし、出し入れのスムーズさを欠くか、といったことを一つひとつクリアしているから、このペンケースは、当たり前に使えて当然のように使いやすい。経年変化による革の質感が美しいのも、この製品の大きな特徴だ。
薄さ自慢、旅行に最適「dunn passport & pen case」
とにかく薄いけれど、しなやかで十分な強度を持つ革を使ったプロダクトを提供するブランド「dunn」(uは上にウムラウトが付く)。ドイツ語で「薄い」という意味の言葉を、そのまま名前にしたロンド工房のブランドが、その素材の薄さと軽さを生かして製作したペンケースだ。
名前の通り、マチ付きのファスナーで開閉するペンケースのサイズを、パスポートが入る大きさにして、平たい形状で持ち歩くように設計している。平たい長方形の薄マチ型ペンケースというのは、かつて、透明だったりメッシュだったりのビニール製通帳入れなどによくあったデザインだが、それが革で作られていることで、大人が旅に持ち歩くのに最適なペンケースになっている。
旅行用のペンケースというのは、ありそうでなかったジャンルだ。携帯性の高さを「旅行用」とすることはあったが、"パスポートを出すときに筆記具も必要"という視点で作られているのは珍しい。まあ、発想の視点としては印鑑が入る通帳ケースと同じようなものなので、形状が似たのは偶然ではないのかもしれない。ともあれ、メモやパスポート、名刺などを一緒に入れられるペンケースというのは、実際に使ってみるとかなり実用的なのだ。
愛用の1本のために「dunn one pencover」
薄い革を使ったプロダクトブランド「dunn」(uの上にウムラウトが付く)の、1本用ペンケースというか、ペンカバーだ。ほとんど、革でできた"筆記具の服"といった趣で、普段使う筆記具を1本だけ持ち歩く際に、むき出しだと気になるけれど、わざわざケースに入れるほどでもない、といったときに使える。
重さはなんと5g。愛用の1本をポケットに入れる際に、ちょっと外側を保護できるうえ、ケースに入れてほどほどに存在感を出しておけば、置き忘れや肝心なときに持っていることを忘れる、といったトラブルを避けられる。
最近のボールペンではインクが漏れてポケットが汚れるといったトラブルはまず見なくなった。しかし、筆者は先日、ポケットの中の糸くずがノック式ボールペンのペン先の穴の中に入り込んで、その糸くずを伝ってポケットにインクが付いてしまった、という事態に遭遇した。このペンカバーに入れておけば、その危険も回避できたかもしれない。もちろん、机の上での転がり防止にも役立つ。色はブルーブラック、レッド、コバルトブルー、ライラックから選べるので、使用するペンに合う色を選んで装着する楽しみもある。
(文・写真 納富廉邦)
[日経トレンディネット 2016年7月7日付の記事を再構成]
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