変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

PIXTA

PIXTA

NK商社、在庫品を抱え込むなど最近はよい話もそれほど聞きません。ある日まり子部長は、田中社長をはじめスタッフを集めて、現在会社が置かれている厳しい現状を周知徹底し、皆の奮起を促そうとします。しかし、驚くのは社長ばかり、スタッフはそれほど深刻に受け止めないどころか、ジョークを言い始めます。まり子部長までが、社長の心臓をドキドキさせます。

ジョークの功罪、考えたことありますか?

イラスト Dセイン

イラスト Dセイン

Part 1
Tanaka: What is it?
Mariko: I'm afraid I have some bad news. You'd better sit down.
Tanaka: Good grief. What now?
Mariko: The copy machine isn't working.
Tanaka: Well, that's not so bad. We can just use the convenience store.
Mariko: There's something else. It looks like our sales will drop by about 20 percent or more this month.
Tanaka: What?! That's terrible! Why didn't you tell me that first?
Mariko: I wanted to give you the bad news slowly.
Tanaka: Well, thanks, I guess.
Mariko: There's one more thing.
Tanaka: Oh, no! What's next?! We're losing our best client?! The factory burned down?! We're being sued?!
Mariko: No, I have a dentist appointment tomorrow morning, so I'll be a little late.
Tanaka: Are you trying to give me a heart attack!
【対訳】
社長: 何だね。
まり子: 残念な知らせがあります。お座りになった方が…
 社長: 困ったな、で、今度な何かな?
まり子: コピー機が作動しません。
 社長: そうか、それほど悪いニュースでもないな。コンビニを使えばいい。
まり子: 他にもあります。今月、売り上げが20パーセント、いえそれ以上落ち込みそうなんです。
 社長: 何だって? それはひどい! なぜそれを先に言わないんだ!
まり子: 悪い知らせはゆっくり言いたかったもので。
 社長: そうか、ありがとう、とでも言うべきかな。
まり子: もうひとつあるんです。
 社長: 何てことだ! 最悪だ! 最高のクライアントを失うのか?! 工場が焼けたか?! 我が社が訴訟を起こされているのか?!
まり子: 明日の朝、歯医者の予約があるので、少し遅れます。
 社長: 君は私に心臓発作を起こさせようとでもしているのかね?

解説)

You'd better sit down.: 「悪いニュースがあります」だから「座った方がいいでしょう」ということ。

Good grief.: やれやれ/困ったなあ。

* 驚きや呆れた気持ちを表すときのひとこと。

What now?: 今度は何なの?

*うんざりした気持ちを表します。

What's next?: 最悪!

* 直訳は「次は何?」。次々と災難に見舞われたとき、「一体全体、次には何が起こるのだろうか」という気持ちを表します。「最悪!/もういやだ」という思いを伝えます。

We're being sued?!: 我が社が訴えられている/訴訟を起こされているのか?

*<be + being + 過去分詞>は「受動態の進行形」。

a heart attack: 心臓発作/心臓麻痺

Part 2
Tanaka: I need everyone's attention. I'm afraid I have some bad news.
  Ito: Oh, no. I hope we're not going bankrupt.
Tanaka: I'm afraid our sales are dropping fast.
 Sally: By how fast?
Tanaka: Well, I hate to say this, but it looks like we're down by double digits.
 Sally: Just give it to us straight.
Tanaka: Well, I'm afraid it's bad. We're down by around 20 percent.
 Sally: Wow, that IS bad news.
  Ito: What are we going to do about it?
Mariko: We're thinking about hiring a consultant.
 Sally: A consultant?! I hope he's cute.
Mariko: He might be a she.
 Sally: That would be bad news for me.
  Ito: But it might be good news for me!
Tanaka: Hey! This is a serious situation! Stop joking around!
【対訳】
 社長: 皆に注目してほしい。残念なお知らせがあります。
 伊藤: えーっ、まさか倒産って話じゃないですよね。
 社長: 残念ながら、わが社の売り上げは急速に落ち込んでいる。
サリー: どの程度の速度で、ですか?
 社長: 何というか、言いにくいことだが、どうも2ケタほど落ち込んでいるようなんだ。
サリー: ずばり悪い知らせを言ってください。
 社長: その、悪いんだ。20 パーセントほど落ち込んでいる。
サリー: まあ、何てこと…それは最悪ですね。
 伊藤: これについて、我が社は何をするのでしょうか?
まり子: コンサルタントを雇おうと考えているの。
サリー: コンサルタント? 彼が素敵だといいな。
まり子: 彼ではなく、she(女性)かもしれないけど。
サリー: 私にとっては、悪い知らせになりそう。
 伊藤: でも、僕にはよい知らせだな!
 社長: ちょっと! これは深刻な事態なんだ。冗談は止めてくれ!

解説)

I hope we're not going bankrupt.: 「我が社が倒産しないことを望む」が直訳。「まさか、倒産なんて話じゃないですよね」のニュアンス。

I hate to say this,…: ちょっと言いにくいのですが。

*言いづらいことを言わなければならない場面での定番表現です。ビジネスシーン、日常会話でも使い勝手のよいひと言です。

by double digits: 2ケタ(の数字)で

Just give it to us straight.: ずばり悪い知らせを言ってください。

* Just give it to us straight.は正直にストレートに言ってくださいよ、の意味になります。

We're down: 我が社は(売り上げが)落ち込んでいる

*この場合のdownは「形容詞」です。

Wow, that IS bad news.: それは悪い知らせです、すなわち「最悪だ」の意味。

*最悪なニュースであることを強調。

I'm thinking about…ing: ~することを考えている

*I'm thinking of…は「~を想像してみる/考えてみる」の意味合いですが、I'm thinking about…は「ある程度の時の経過を経て考えている」ニュアンスになります。

He might be a she.: 彼ではなく、she(女性)かもしれないけど。

* その前のSallyのI hope he's cute. を受けたheであり、sheは「女性」を意味しています。

joke around: 冗談を言う、軽口をたたく

セインのビジネスひと口メモ

ジョークは、その社会的・文化的背景や歴史を色濃く反映しています。そのため、その文化になじみのない人には分からないものもあり、皆が笑っているのに、自分だけが笑えない。意味は分かっているが、「何がおかしいの?」と首を傾げてしまうことが多々あります。

またジョークそのものに対しての考え方も日本とアメリカでは違います。社長が深刻な話をしている場面で、この対話のようにジョークを言うなど日本では言語道断、ちょっと考えられないでしょう。しかし、アメリカでは、深刻であればあるほどジョークを言うことがあります。日本人には解せない話でしょうが、そのジョークが硬直化したり深刻になったりした場を和らげ、変化した雰囲気の中で、皆が話をしやすくなり、よい結論を導くなどということが実際にあります。ジョークひとつでもこれだけの差があることはなかなか興味深いところです。

また、コンサルタントという専門職を「男性」と勝手に決めつける場面がありますが、やはりアメリカでも今なお、専門職=男性と考える傾向はあるようです。

Keep on going!

:D セイン

デイビッド・セインの「ビジネス英語・今日の一場面」は木曜更新です。次回は7月28日の予定です。
デイビッド・セイン(David Thayne)
米国出身。累計売り上げ部数350万部の著作を刊行してきた英語本のベストセラー著者。英会話学校経営、翻訳、英語書籍・教材制作などを行うクリエーター集団「エートゥーゼット」(www.smartenglish.co.jp)の代表を務める。日本で26年以上の豊富な英語教授経験を持ち、これまでに教えた日本人は数万人にのぼる。日本人に合った日本人のための英語マスター術を多数開発している。
 東京・文京区のエートゥーゼット英語学校の校長を務めるとともに、英会話教育メソッド「デイビッド・セイン英語ジム」(http://www.david-thayne.com)の監修も行っている。主な著書に、「チームリーダーの英語表現」(日本経済新聞出版社)、「ネイティブが教える英語の語法とライティング」(研究社)などがある。

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック