無料Wi-Fi使える格安SIM 使い方次第でお得に
大手携帯電話会社よりも通信料金が安い格安SIMの中には、公共施設や店舗などに入っている公衆無線LAN(Wi-Fiスポット)を安価に契約できたり、無料で使えたりするサービスを用意している。契約したデータ容量を消費せずに済むので、大容量の動画を気軽に見たりできるなど、使い勝手が大きく高まる。
そこで今回は、公衆無線LANが利用できる主な格安SIMを取り上げ、選び方のポイントやコストメリットをチェックした。またどれくらい実用的なのか、公衆無線LANの通信速度も検証した。
飲食店やホテルなどで使える
まず、公衆無線LANが利用できる格安SIMを見てみよう。下の表は、主な格安SIMのうち、公衆無線LANを無料で提供していたり、有料オプションとして契約できる格安SIMをまとめたものだ。
なお参考として、公衆無線LANを提供する格安SIMにおいて、データ容量が月3GB前後の音声通話SIM向けプランを契約した場合のコストも試算した。
格安SIMで利用できる公衆無線LANは、ソフトバンクの「BBモバイルポイント」とワイヤ・アンド・ワイヤレスの「Wi2 300」が中心。全国の飲食店、ホテル、ドラッグストアなどを中心に整備されている。
その他にも、セキュリティーの高いWPA2方式の暗号化に対応し、セブン-イレブンやスターバックスといったコンビニやカフェなどで使えるNTTブロードバンド・プラットフォームの「Secured Wi-Fi」や、西日本を中心に個人商店や銀行などで使えるNTTメディアサプライの「DoSPOT」などがある。場所によっては複数の公衆無線LANを利用できたり、逆にどれか1種類しか利用できなかったりする。
BBモバイルポイントとWi2 300のWi-Fiスポットを両方とも利用できるのは、ヨドバシカメラが独占販売するワイヤレスゲートの「WIRELESS GATE SIM」と、楽天の「楽天モバイル」、ビックカメラの「BIC SIM」の3つ。このうち、WIRELESS GATE SIMでは「eoモバイル」と「Fon」のWi-Fiスポット(Fonが使えるプランは「WirelessGate SIM Fon プレミアム Wi-Fi」のみ)にも接続可能だ。
また、BIGLOBEの「BIGLOBE SIM」とニフティの「NifMo」では、BBモバイルポイントが利用できる。このうち、BIGLOBE SIMでは「Secured Wi-Fi」と「DoSPOT」も利用可能だ。
一方、NTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」では、BBモバイルポイントとWi2 300は利用できないが、Secured Wi-FiととDoSPOT(2016年7月15日から対応)のWi-Fiスポットが利用可能だ。
有料で提供する場合も
公衆無線LANの利用料金は、多くの格安SIMで無料となっているが、楽天モバイルでは月額362円の有料オプションとなる。
また、BIGLOBE SIMで公衆無線LANを利用するには、端末1台につき1つのライセンスが必要だ(最大10ライセンスまで)。ライセンスは1つ当たり月額250円かかるが、データ容量が月6GBの「ライトSプラン」および月12GBの「12ギガプラン」を契約している場合は、1ライセンスを無料で取得できる。月1GBの「音声通話スタートプラン」や月3GBの「エントリープラン」では、1ライセンス目から月額250円の有料オプションとなる。
音声通話SIMでデータ容量が月3GB前後の料金プランを契約しながら公衆無線LANを利用する場合、毎月の通信費が最も安いのはNifMoとBIC SIMだ。いずれも月額1600円で運用できる。特にBIC SIMでは、BBモバイルポイントとWi2 300の両方が利用可能だ。
一方、利用できる公衆無線LANが一番多いWIRELESS GATE SIMの場合、毎月の通信費は月額2760円。NifMoやBIC SIMより月1160円高い。またWIRELESS GATE SIMは、最大通信速度が3Mbpsとはいえデータ容量は使い放題なので、公衆無線LANの必要性は他に比べると少ない。
無線LANの実際の速度は?
せっかく公衆無線LANが使える格安SIMを選んでも、サービスとして使いづらくては意味がない。そこで、「BBモバイルポイント」「Wi2 300」「Secured Wi-Fi」のWi-Fiスポットについて、実際の通信速度を測定。その結果を、下の表にまとめた。
なお、測定にはイードの通信速度計測アプリ「RBB TODAY SPEED TEST」を使用。午前10時前後とお昼の12時台に、各スポットでそれぞれ5回測定した結果の平均値を算出した。5回のうち、最大と最小の数値も併記している。使用した端末はASUS(エイスーステック・コンピューター)の「ZenFone Go」となる。
また、今回速度を測定したWi-Fiスポットは、いずれも長野県佐久市の「イオンモール佐久平」内に設置されている。設置されている地域や店舗によって今回の結果と異なるだろう。あくまで参考値として見てもらいたい。
BBモバイルポイントは、10時前後・12時台ともに同程度の速度が得られた。下り最大通信速度は10時前後の平均が4.07Mbps、12時台が4.38Mbps。上り最大通信速度は10時前後の平均が0.92Mbps、12時台が0.91Mbpsと、どちらもほぼ変わらない。下り通信速度はWIRELESS GATE SIMの最大3Mbpsよりも速めだが、上りが1Mbpsを切っていた。
Wi2 300は、下り最大通信速度の10時前後の平均が7.61Mbps、12時台は7.10Mbpsと7Mbps台をキープ。一方、上り最大通信速度は10時前後が平均5.08Mbpsであるのに対し、12時台は12.12Mbpsと倍以上も速い。上り下りともにBBモバイルポイントよりも速かったものの、通信速度にばらつきがある不安定さが気になった。
Secured Wi-Fiは、今回測定したサービスのなかでは下り最大通信速度が最も速く、10時前後の平均は13.06Mbps、12時台は9.87Mbpsだった。上りは10時前後の平均が8.18Mbps、12時台が7.72Mbpsとなった。12時台は10時前後よりも速度がやや遅くなるものの、BBモバイルポイントの2倍から3倍程度の平均速度をキープ。速度のばらつきも少なく、Wi2 300よりも比較的安定していた。
どの格安SIMがおすすめ?
格安SIMでは、BBモバイルポイントやWi2 300を公衆無線LANのオプションサービスとして提供するケースが多い。また、コンビニやカフェなどで使えるSecured Wi-Fiや、一般住宅や店舗に設置されたFonを利用できる格安SIMもある。
これらの中では、全国のコンビニ・カフェ・レストランに広く展開されているWi2 300とSecured Wi-Fiが筆者のおすすめ。両方とも使える格安SIMはないが、Wi2 300はBIC SIMで、Secured Wi-FiはOCN モバイル ONEの全プランとBIGLOBE SIMの一部プランで、それぞれ追加料金なしで利用できる。また、BIC SIMではローミングによりBBモバイルポイントの利用も可能だ。設置場所は各サービスのウェブサイトから確認できるので、自分がよく利用する店舗などに合わせて選ぶといいだろう。
また一般的にお昼の12時台になると、格安SIMの通信速度は極端に遅くなる。その一方、今回速度を測定した公衆無線LANでは、12時台でも数Mbpsの速度が得られた。昼の休憩時間に格安SIMの通信速度が遅くて悩んでいる場合、カフェやレストランの公衆無線LANを使うと一定の通信速度を確保できる可能性がある。
ただ、公衆無線LANを目当てに契約しても、Wi-Fiスポットの利用頻度が少ない場合は得になりにくい。公衆無線LANが使える格安SIMを検討するときには、カフェやホテルなど、自分が普段よく滞在する場所にWi-Fiスポットがあるかどうかを事前にチェックしておこう。公衆無線LANを使う機会があまりなさそうなら、無線LANが使えなくとも月額料金が安い格安SIMを選ぶほうが、お得になるかもしれない。
(ライター 松村武宏)
[日経トレンディネット 2016年6月25日付の記事を再構成]
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