イチから分かる格安SIM 選び方、8つの勘所
通信料金を安く抑えられる格安SIM。数多くの通信事業者の参入により競争が激化し、料金プランの多様化が進んでいる。それ自体は利用者にとって歓迎すべきところだが、一方で、どのSIMを選べばいいのか悩むところだ。
そこで今回は、格安SIMを選ぶ際に見極めるべき8つのポイントを解説する。音声通話の有無、データ通信の使い方、複数台での利用など、自分の使い方に応じて最適なサービスを選んでほしい。
【1】格安SIMには2つの種類がある
【2】ショートメッセージは意外に使う
【3】通話料を抑えたいなら「通話定額」もある
【4】料金プランの種類は4つ、どんな人に向いているのか?
【5】高速通信をオフにして容量を節約できる
【6】家族は「容量シェア」でお得に使える
【7】格安SIMのサポートは有料の場合も
【8】大手からの乗り換えは更新月を待たなくていい
【1】格安SIMには2つの種類がある
格安SIMには、大きく分けて2つの種類がある。1つは「音声通話SIM」。070・080・090で始まる携帯電話番号による音声通話の発着信と、インターネットアクセス(データ通信)に対応している。
もう1つは「データ通信SIM」。インターネットへのアクセスは可能だが、音声通話は利用できない。音声通話SIMより機能が限定されるため、月額料金を安く抑えられるのがメリットだ。
下の表に、それぞれのSIMで使える機能を簡単にまとめてみた。
スマートフォン(スマホ)で、電話としても使うなら音声通話SIMがおすすめだ。ただし、音声通話SIMはデータ通信SIMより月額料金が700円ほど高め。通話用の携帯電話を別に保有しているなど、スマホで音声通話をあまり利用しないなら、安価なデータ通信SIMを選ぶ手もある。タブレットやモバイルルーターなら、料金の安いデータ通信SIMで十分だ。
なお、大手携帯電話会社(キャリア)から格安SIMに乗り換える場合、MNP(番号ポータビリティー)制度を利用すると、電話番号を引き継げる。対応するのは音声通話SIMのみで、データ通信SIMには番号を引き継げない。
【2】ショートメッセージは意外に使う
次は、データ通信SIMで利用できる「SMS(ショートメッセージサービス)」オプションについてだ。
音声通話ができないデータ通信SIMにも、電話番号は割り当てられている。SMSオプションを契約すると、電話番号を指定して短いテキストを送受信するSMS機能が使えるようになる。
SMSオプションは意外と重要だ。例えばLINEでは、アカウントの登録時に入力する4桁のパスコードを、SMSで受信する。SMSオプションを付けていないとアカウントの登録や引き継ぎができず、LINEが使えなくなってしまう。
また、TwitterやDropboxなどのオンラインサービスが採用している2段階認証は、SMSでワンタイムパスワードを受け取る仕組み。SMSオプションを付けていないデータ通信SIMでは、こうしたワンタイムパスワードも受信できず不便だ。
下の表に、主な格安SIMでのSMSオプションの月額料金をまとめた。SMSオプションの月額料金は、高くても150円程度。データ通信SIMを契約するなら、なるべくSMSオプションを付けておこう。
【3】通話料を抑えたいなら「通話定額」もある
最近の格安SIMでは「通話定額オプション」が増えている。
格安SIMの通話料は、30秒当たり20円の従量制での契約が一般的。通話定額プランが一般的な大手キャリアに対し、月の通話時間によっては格安SIMのほうが割高になる場合もある。あまり通話しなかったり、通話する相手が限られている場合は、LINEなどのアプリが備えるIP電話サービスで対応することも可能だが、仕事などで電話を頻繁にかけるなら、通話定額プランの契約がおすすめだ。
下の表に、格安SIMで提供されている主な通話定額オプションをまとめた。参考として、月3GBのデータ容量が使える料金プランと組み合わせた場合の月額料金も併記する。
1回の通話が5分以内で終わることが多ければ、月額料金が安い5分間の通話定額オプションがお得。5分以上の通話発信が多ければ、何分でも定額のオプションがおすすめだ。ただし、毎月の通話発信時間がおおむね20分未満の人は、通常の通話料より通話定額オプションのほうが高くなってしまうので、あえて契約する必要はないだろう。
【4】料金プランの種類は4つ、どんな人に向いているのか?
格安SIMの料金プランは、高速データ通信の容量に上限を設けているものが多い。データ容量を使い果たすと通信速度が低速に制限される。
サービスにより異なるが、高速通信時の速度は下り最大150M~375Mbps、低速通信時は最大200kbpsが一般的。200kbpsでもテキスト中心のウェブサイトやSNSの閲覧、メールの送受信には十分だが、オンライン動画の再生やアプリのダウンロードは厳しい。
データ容量は月ごとに容量が決められているプランが一般的だが、日ごとに容量が決められたプランもある。「毎月1GBまでは○○円、3GBまでは△△円」といったように、実際に使用したデータ容量によって月額料金が変わるプランや、月額料金を割高に設定したデータ通信使い放題のプランもある。
下の表では、格安SIMの料金プランについて、データ容量の割り当て方ごとに特徴と向いている人をまとめてみた。
なお、格安SIMの最適な料金プランを選ぶために、まずは自分が今、毎月どのぐらいのデータ量を使っているか把握しておこう。利用データ量は、通信会社が提供している料金確認サイトなどで確認できる。Androidスマホでは、端末が記録したデータ通信量をグラフで参照できる。iPhoneユーザーは、日々の通信量を記録してグラフ化するアプリなどを使うといいだろう。
【5】高速通信をオフにして容量を節約できる
一部の格安SIMでは、専用アプリやユーザーページから、通信速度を自分で低速に落としたり、高速に戻したりできる。
一般に、通信速度を低速に切り替えると、高速データ通信にはカウントされずデータ容量を消費しなくなる。通信速度を落としておけば、貴重なデータ容量を節約できるというわけだ。例えば、データ通信で毎月4GB使う場合でも、低速通信で1GB分を補えるなら、毎月3GBの料金プランを契約すれば済むことになる。
少しでもデータ容量を節約したい人は、普段は低速のまま通信しよう。動画を視聴したりアプリをダウンロードしたりするときなど、ある程度の速度が必要なときだけ高速通信に切り替えればいい。低速通信を上手に活用してデータ容量を節約しよう。
下の表に、主な格安SIMにおける通信速度切り替え機能の対応状況をまとめた。なお、通信速度は格安SIMの提供事業者が提供する専用アプリか、格安SIMのウェブサイトで切り替えられる。特に、端末上で手軽に速度を変更できるアプリの使用がおすすめだ。
【6】家族は「容量シェア」でお得に使える
スマホやタブレットなどの通信端末では1台につき1枚のSIMカードが必要で、契約枚数分だけ通信料金がかかる。
だが、一部の格安SIMでは、契約したデータ容量を複数のSIMカードでシェアできる料金プランを提供している。スマホとタブレットを複数台保有していたり、家族でデータ容量を分け合う場合などに向くプランだ。
OCN モバイル ONEをはじめ、IIJmioやBIGLOBE SIMでは、1つの契約に対して複数のSIMカードを追加できる。必要な枚数だけ追加でき、追加したSIMカードごとに料金が生じる。
一方、DMM mobileやイオンモバイルのように、あらかじめSIMカードの枚数が決まっているプランもある。この場合、使う枚数が何枚でも月額料金は変わらないが、SIMカードの種類があらかじめ指定されていたり、使わないSIMがあると無駄が生じたりする。
なお、下の表に、主な格安SIMの容量シェア対応プラン(音声通話SIMに対応したもの)をまとめた。
【7】格安SIMのサポートは有料の場合も
大手キャリアとは違い、実店舗を構える格安SIMの提供事業者はごく一部に限られる。家電量販店の店頭に専用の販売・受け付けカウンターを設ける通信会社もあるが、設置されている店舗は大都市が中心だ。
そのため、格安SIMのユーザーがサポートを受ける場合、電話窓口やウェブサイト経由での対応が中心となる。店頭でのサポートが受けにくい現状を補い、遠隔でのサポートを充実させるため、一部の格安SIMでは有料サポートオプションを提供している。
下の表は、主な格安SIMのサポートオプションについてまとめたものだ。
サポートオプションの対象範囲は、提供事業者によって異なる。例えば、BIGLOBE SIMではBIGLOBEのサービス全般はもとより、端末の使い方や、パソコン周辺機器の設定方法などについても質問できるのが大きな特徴だ。一方、イオンモバイルや楽天モバイルでは、自社の格安SIMのみがサポートの対象となる。
【8】大手からの乗り換えは更新月を待たなくていい
最後のポイントは、格安SIMに乗り換えるタイミングについてだ。大手キャリアから格安SIMへ乗り換えるには、一定の費用が必要になる。以下では、これまでの電話番号を引き継いで格安SIMに移行(音声SIMを契約)するケースをみていこう。
前述したように、音声SIMを契約する際にMNP制度を利用すると、これまで使っていた電話番号を引き継げる。この際に転出元の通信会社から「転出手数料」として2000円(NTTドコモ)または3000円(au、ソフトバンク)が請求される。さらに転入先の通信会社では、「新規契約手数料」あるいは「申し込みパッケージの購入代金」が請求される。格安SIMの場合、3000円が一般的だ。つまり、大手キャリアから格安SIMへ乗り換える場合の初期費用は、合計5000~6000円ということになる。
また、大手キャリアでは2年単位で契約が更新される料金プランが主流だ。2年ごとに1~2カ月間設けられている「更新月」に格安SIMへ乗り換えれば5000円で済むのだが、更新月以外に乗り換えると9500円の解約手数料がかかるため、初期費用は3倍近い1万4500~5500円もかかってしまう。
このため、更新月以外で乗り換えると損のようだが、格安SIMなら通信料金が安いので、初期費用を早めに取り戻せる。
格安SIMへの乗り換えを更新月まで待つべきかどうかは、以下の計算式によって簡易的に判断できる。
例えば、NTTドコモの「カケホーダイプラン(スマホ/タブ)」で、データ容量が月2GBのパケットパックを契約している人が、OCN モバイル ONEの月3GBのプランに乗り換える場合を考えてみよう。
NTTドコモの月額料金は6500円、OCN モバイル ONEは1800円なので、その差額は4700円だ。この金額で解約手数料を含めた初期費用の1万4500円を割ると、約3.08となる。
つまり、1万4500円の初期費用がかかったとしても、3カ月あれば取り戻せるということ。この場合、更新月が来月や再来月に迫っているのでない限り、ただちに乗り換えたほうがお得なのだ。
ただ、大手キャリアで契約しているプランの内容や、格安SIMで契約したい料金プランによっては、初期費用を取り戻すまでにかかる期間が異なる。自身の契約状況や検討中の料金プランを上の式に当てはめた上で、乗り換えの判断材料としてほしい。
(ライター 松村武宏)
[日経トレンディネット 2016年6月28日付の記事を再構成]
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