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親子間の住宅資金の貸し借りはトコトン追いかけられる 税理士 内藤 克

2016/7/15

 少し前、相談者の方との間でこんな会話がありました。
「内藤先生、自宅を購入したら、税務署から質問状みたいなのが送られてきたんですが……」
「それは購入資金の確認をするものなので、ありのまま書いて提出していいですよ」
「それがですね、実は説明のつかないお金があって、どう書いていいのかわからないんです」
「説明がつかないって?」

 不動産の購入、売却、相続や贈与による名義変更の情報は法務局と税務署で共有されています。そのため不動産を購入した場合は、半年から1年以内に税務署から上記のような「お尋ね」が送られてきます。回答を記入して郵送で送り返すものがほとんどですが、日時指定で呼び出される場合もあります。

■お尋ねを書いて気づくことは?

 この「お尋ね」は詳しくいうと「お買いになった資産の買い入れ価額などについてのお尋ね」という連絡文書です。これは税務調査の開始を意味しているものではないので、回答義務はありません。しかし、これを書いていくうちに税務上の問題点に気付くだけでなく、登記の変更や取引の見直しもでき余計な課税も避けることができるため、提出することをお勧めします。

 記入すべき内容は

(1)購入金額

(2)預金から支払った場合……銀行名、支店名、預金名義、金額

(3)借り入れて支払った場合……相手先、続柄、借入名義、金額

(4)資産を売却した場合……物件の住所、売却年月日、金額

(5)贈与を受けた場合……相手の住所氏名、贈与年月日、続柄、申告の有無、金額

(6)その他……手元資金など

です。つまり説明のつかないお金があるとすると、それは(1)-((2)+(3)+(4)+(5)+(6))の答えとなります。そしてそのほとんどが「贈与税がかかるとは知らずに親から出してもらったお金」なのです。

■親からの借り入れも契約があればOK

 住宅を購入する際に、頭金を親から出してもらって残りは自ら住宅ローンを組んで返すような場合があるでしょう。問題になるのはこういう場合です。とりあえず頭金を立て替えてもらった段階では贈与は成立していないので、借入金としてのちのち返済していけば問題はありません。お尋ねに対しても、「親からの借入金」として堂々と記入し、金銭消費貸借契約書を添付して回答すればいいのです。金銭消費貸借契約書のひな型は、インターネットを検索すれば無料でダウンロードできるものが複数見つかります。

 金利や返済期間は当事者同士で決めればよいのですが、親子であっても銀行の住宅ローンと同等の金利くらいは支払わないと、利息分について贈与税の対象となります。また、利息を受け取った親は雑所得として申告することになります。(もっとも仮に利息を免除してもらったとしても、年間110万円以内であれば贈与税はかかりませんし、利息を受け取った親も一定要件のもと年間20万円以内であれば所得税はかかりません。)

■親にも追及、逃げ切れると思ったら大間違い

 お尋ねへの回答によって購入時の贈与税の問題はクリアできますが、はじめから返済するつもりのない借入金に関しては途中で返済を忘れてそのままになるケースが多く、事実上の債務免除とみなされ、贈与税の対象になってしまいます。

 まれに税務署から貸主である親あてに「貸付金の回収状況に関する照会」という文書が送られてくることがあり、さらに「いつ、いくらずつ返済を受けたか通帳のコピーを出しなさい」と言われることがあります。この照会の目的は「住宅資金を貸して返済を免除しているのなら、それは贈与なのでしっかり贈与税を課しますよ」ということと、親が子供に貸している金額の残高確認です。こうなると税務署も真剣です。

 一方、この文書がこないからといって税務署が親子間の貸し借りを忘れてくれるわけではありません。仮に贈与税は免れても、住宅資金として借りたお金の残高が親の相続の時に相続財産として課税されることになります。「税務署にはわからないだろう」と逃げ切れると思ったら大間違いで、親であっても、借りたお金はやはり返さなければならないのです。

内藤 克(ないとう・かつみ) 税理士法人アーク&パートナーズ 代表・税理士。1962年生まれ、新潟県長岡市出身。90年に税理士登録、95年に東京・虎ノ門で個人税理士事務所を開業。97年に銀座で税理士・司法書士・社会保険労務士による共同事務所を開業。2010年に税理士法人アーク&パートナーズを設立。弁護士ら専門家と同族会社の事業承継を中心にコンサルティングを行っている。事例中心のわかりやすい講演にも定評あり。「士業はサービス業である」ことを強く意識し、顧客満足度を追求。日本とハワイの税法に精通し、ハワイ税務のコンサルティングも行っている。趣味はロックギター演奏。

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