ブレイク1位は明るい安村、消える1位はあのコンビ
お笑い芸人人気ランキング2016
ジャンルを問わず、縦横無尽の働きをするお笑い芸人。その人気の実態を知るべく、全国の男女1000人を対象に、「一番好きなお笑い芸人」「一番嫌いなお笑い芸人」「2015年にブレイクしたと思うお笑い芸人」「2016年に消えると思うお笑い芸人」の4項目で調査を実施した。前回の「好きな芸人」と「嫌いな芸人」に続いて、今回は「2015年にブレイクした芸人」と「2016年に消える芸人」をお届けする。
「ブレイク」の1位は、とにかく明るい安村。「テレビや雑誌などメディアでよく見るようになったから」(68%)が理由のトップだ。海パンを指して言う「安心して下さい、はいてますよ」のフレーズは『流行語大賞』でトップ10入りを果たすなど、 2015年は"お笑い界の顔"として大躍進した。
その大ブレイクを受けて全年代・性別で1位と思われたが、25~34歳の間では男性で2位、女性で4位。若い層では昨年後半に攻勢をかけてきた厚切りジェイソンやおかずクラブのほうが上位という結果だった。
好感度が高い安村
安村は「新たなネタが見てみたい」(40歳男性)といった期待や、バラエティーでの振る舞いに対して「とにかく明るい安村のチャレンジは良いと思う」(49歳男性)など、好感度・注目度の高さでは今調査でピカイチ。ただ最近は3月に発覚した不倫疑惑をイジられ、弁明するという流れが続いている。今期は連ドラに出演するなど芸の幅が増えつつあるだけに、"弁明"が新ネタになってしまわないよう、踏ん張りどころといえる。
2位は「Why Japanese People!?」の厚切りジェイソン。25~34歳男性では1位になり、ほかの年代でもまんべんなくトップ3に食い込んだ。ハーフ芸人は多いものの、彼のように純粋な外国人の視点からコメントできる芸人は数少ない。そんな「国際派」という基盤に加え、「IT企業役員」「2児の父」など、仕事につながるスペックをいくつも持っているのが強み。一般人からの悩みに真摯に回答するツイッターも評判。企業人としての核心を突いた発言は就活生を中心に話題になっている。
3位のおかずクラブは、怒りの決めフレーズ「これがお前らのやり方かぁ!」を持つゆいPと、癒やし系宇宙人顔のオカリナのコンビ。2人ともキャラクターが濃い上、バラエティーでは捨て身の働きも多く、今ではテレビの常連に。ドラマ出演が目立つのも特徴。オカリナは3月に放送された『天才バカボン~家族の絆』(日テレ系)でバカボンにふんしたことも大きな話題に。使い勝手の良さから企業PRにもよく呼ばれる2人は、お笑い好き以外にも認知される存在へと成長している。
4位は熱血ひとり芝居のあばれる君、5位は昨年『M‐1グランプリ』で優勝したトレンディエンジェル。上位5組はネタ番組や賞レースなどで持ちネタを頻繁に披露している面々が並んだ。ネタ番組の数自体は減ったものの、ビジュアルや決めフレーズが威力を発揮する状況は続いている。
6位の又吉直樹は、意味合いが違う。著書『火花』が昨年、芥川賞を受賞して一流作家の仲間入りを果たしたためだ。同書は250万部を突破。以降、やわらかめのバラエティーから硬派な報道番組まで、出演番組の幅の広さで他を圧倒、新たなブレイクスルーを見せている。フィーチャーされる機会が増えた相方の綾部祐二も18位に名前が挙がった。
ダンスユニットとのコラボ曲『PERFECT HUMAN』が大ヒット中のオリエンタルラジオを"音楽ユニットキャラ"と考えれば、美声の坊主頭・ナダルを擁するコロコロチキチキペッパーズ、激しい腰振りダンスをする永野など、今年のブレイク芸人には"キャラが濃い"という共通点も浮かび上がる。技やネタで沸いた昨年の歌・リズムネタブームから早くも動きが見える。
8.6秒が去年より"消える"と思われているワケ
「消える」1位は8.6秒バズーカー。2015年も3位に挙がっていたが今年はさらに票数を伸ばした。「テレビや雑誌などメディアであまり見なくなっているから」(68%)が最も多かった理由だ。
「ラッスンゴレライ」のフレーズでテレビ露出のピークを迎えたのは昨年前半。後半は新ギャグ披露のたびに「スベった」と報じられたこともマイナス印象を加速させたと考えられる。2015年の「消える」で独走首位だった日本エレキテル連合も7位に挙がっているが、ともに勢いの反動といえる。
2位のとにかく明るい安村は「ネタがつまらなくなっているから」(83%)がダントツ。登場したらお約束でやらなければならない「安心して下さい」だが、さすがに飽きられてきたようだ。
ほか厚切りジェイソン、コロコロチキチキペッパーズ、永野、おかずクラブなど、ブレイク初登場の面々が10位に入った。
一方、狩野英孝やキンタロー。のように毎回「消える」に選ばれながら、テレビに出続けている面々も。これは彼らがイジられる話題を持っていたり、そういうキャラでいられているせいだろう。
"使い勝手"が寿命を左右
「ブレイク」と「消える」は背中合わせの結果になることが多いが、なかには「消える」だけに入っている面々もいる。今回は、日本エレキテル連合、阿佐ヶ谷姉妹、エド・はるみ、キンタロー。、ピスタチオ、アジアン、江頭2:50、キングコングが該当。そのほとんどは「ネタがつまらなくなっている」という理由だ。
彼らの多くにいえるのは、トーク番組やロケバラエティーでの活躍があまり見られないこと。このところ『ENGEIグランドスラム』(フジ系)や『じわじわチャップリン』(テレ東系)などネタ番組が復活の兆しを見せているものの、トークやロケ企画を通して人気を集める芸人のほうが結果的に息が長い印象なのは否めない。「1年で消えるような芸ではなく、長く見られる芸の幅がほしい」(49歳女性)という声もあるように、「消える」と思われないためにはネタだけでなく芸人自身にも関心を持ってもらう必要がある。パーソナルな部分が支持されるかどうかが「好きな芸人」と「消える芸人」の分かれ道であり、最も難しいところなのかもしれない。
(ライター 遠藤敏文、木村尚恵)
[日経エンタテインメント! 2016年7月号の記事を再構成]
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