家族や恋人と親密度もアップ?夏の「個性派」寝袋3選
この夏注目のアウトドア用品3
夏のレジャーシーズンを迎え、野外フェスやキャンプの予定を立てている人も多いだろう。アウトドアレジャーの人気は高まる一方で、アウトドア用品の市場も毎年拡大が続いている。そんな中、泊まりがけのレジャーで欠かせないのが寝袋だ。新製品が出ても大きく変わらないイメージがある寝袋だが、近年はその状況を打ち破る一風変わった製品も登場している。今回はその中でも、家族や恋人などの親しい人と行くキャンプでおすすめの寝袋を紹介する。
寝袋選びは「最低温度」に注意
遊び疲れた体を休める寝袋。家族や友人たちと話し込んで夜更かしをするのならともかく、寝袋のせいで眠りたくても眠れないのでは、せっかくのレジャーもだいなしだ。そこで寝袋選びに失敗しないためのコツを、アウトドア用品を取り扱うL-Breath(エルブレス)新宿店の池森啓介さんに教えてもらった。
「まず自分の行く場所の最低気温をよく調べることが大切です。その上で、その場所の最低気温より、メーカーの表示している寝袋の使用可能温度が5度低いものを選びましょう。メーカーが表示しているのは、寝られるか寝られないかギリギリの温度なんです。たとえば最低気温が10度のところへ行くのであれば、5度まで使用可能と表示されている寝袋がおすすめです」(池森さん)
形状や素材も自分に合ったものを選びたい。形状は大きく分けて、頭からつま先まですっぽりと覆う「マミー型」と、布団に近いかたちの「封筒型」の2つ。本格的なキャンプであれば体温を奪われにくいマミー型がおすすめ。一方、封筒型のほうが価格が安く、手軽に購入しやすい。また、マミー型のほうがコンパクトに収納できる。
素材も、羽毛と化学繊維の2通りがある。羽毛のほうがあたたかく、かつ小さく収納できるが、価格が高く水に弱い。逆に化学繊維は価格を抑えられ水にも強いが、羽毛に比べると防寒性は低く、収納時もかさばる。
性能が良いのは羽毛の寝袋だが、登山用品などを扱う石井山専の増田哲朗さんによれば「1~2泊程度のキャンプであれば化学繊維でもまったく問題ない」そうだ。
「最近は化学繊維でも小さく、防寒性に優れたものも多いですし、夏ならそこまで本格的でなくても大丈夫。加えて、化学繊維のほうが手入れが簡単なので、汗をかきやすい夏には便利です」(増田さん)
様々な種類の中から自分の用途に合ったものを選びたい寝袋だが、増田さんによれば近年は「多様化が進んでいる」。基本的な寝袋の知識を身につけたところで、家族や恋人などの親しい人とのキャンプで使いたい寝袋を見ていこう。
着て歩けるおしゃれな寝袋「THE NAPSACK」
POLeR(ポーラー)の「THE NAPSACK」は、なんと着たまま歩ける寝袋だ。足もとが筒状になっているので、ここから足を出して移動する。歩くときの裾の長さはひもで縛って調節可能だ。上半身はパーカーのようなデザインで、左右に空いたファスナーから手を出すことができる。胸、腹部にはポケットがついているので、スマートフォンや音楽プレーヤーを収納でき便利だ。
最低使用温度は10度。実際に着て歩いてみると、寝袋だけあって普通の洋服に比べると重く感じる。ただ、テントや車の近くを散歩したり、遊んだりするには良さそうだ。また、想像していたより便利だったのが左右から腕を出せること。寝る前に本を読んだり、寝袋の中にいながら起きがけにコーヒーを飲んだりできるのは、ほかの寝袋ではなかなかできない。
「着て歩くことができる寝袋はほかにもありますが、ここまで実際に着ることに特化した寝袋は珍しい。サイズ展開やデザインも豊富なので、遊び心のある寝袋がほしい人にぴったりだと思います」(増田さん)
寝袋と防寒着のミックスのようなシルエットは独特で、話題の種になり写真にも映える。恋人や友人たちとおそろいで買えば、キャンプ場だけでなく写真をアップしたSNSでも注目を集めるに違いない。
2人で一緒に入れる「Homestead Twin 4」
着られる寝袋の次に紹介するのは、2人で使える寝袋だ。THE NORTH FACE(ノースフェイス)の「Homestead Twin 4」は通常の寝袋の1.5倍ほどの大きさがあり、子どもや恋人と一緒に使用できる。
「2人で寝られるということを打ち出したものは、数ある寝袋の中でもこれだけ。また、寝袋がゆったりしていると家に近い感覚で眠ることができるので、あえて1人で使うという方もいます」(増田さん)
1人で寝てみると余裕があり、寝返りを打つこともできた。寝袋の手足の窮屈さが苦手な人には、この広々した寝心地は快適だ。だが、1人で使う場合は通常の2倍とは言わないまでも、収納時のサイズが大きいのが気になった。一方、2人で寝る場合は、持っていく寝袋が1つになるので、荷物を減らせる。
肝心の寝心地だが、寝袋の中は大人2人が入っても狭いとは感じないものの、足など体の一部が触れる。標高の低い場所や河川敷など夜でも気温が下がらない場所では寝苦しく感じるかもしれないが、気温の下がる山間部ではそれもかえってあたたかい。
キャンプ中は仲間との距離も自然と近くなる。恋人や子どもなど、親しい人とのレジャーをさらに盛り上げる寝袋だ。
純国産で修理無償の「AURORA light 350DX」
ひと目見ただけなら一般的な1人用寝袋だが、実は個性とこだわりが詰まっている寝袋がNANGA(ナンガ)。知名度は高くないが、純国産にこだわって作り続けている、知る人ぞ知るメーカーだ。
「日本ですべて生産しているからこそできる、カスタマイズと永久保証サービスがナンガの魅力。購入後でも羽毛の量を変えられるほか、修理を無償で行ってくれます」(池森さん)
安い買い物ではない寝袋選び、サポートが充実しているのは安心できる。夏レジャー向きなのは軽さを追求した「AURORA light 350DX」だ。
「表生地には『オーロラテックス』という、自社で独自開発した防水透湿素材を使っています。レインウエアなどに使われる素材を寝袋に応用することで、水に弱い羽毛を保護しています」(ナンガ社長の横田智之さん)
寝袋に防水性能を付加したい場合は別途シュラフカバーをかける必要があるが、この寝袋はオーロラテックスによって最初から保護されているので初心者には扱いやすい。さらに、サイズや色を自由でオーダーできるのも特徴。現在展開しているショート、レギュラー、ロングの3サイズだけでなく、別途オーダーすれば体に合ったものを作ってもらえるほか、色も型によって7~10種類から組み合わせて選べ、自分だけのオリジナル寝袋を作ることができる。家族全員でオーダーしたものを使えば、気分を盛り上げてくれそうだ。
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防寒性を最重視する冬に比べると、夏用の寝袋は遊び心を効かせられる。貴重なキャンプの機会、せっかくなら家族や恋人との仲を深められる寝袋を選んでみてはいかがだろうか。
(文 小沼理=かみゆ)
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