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地味な服・複数で行動… 被災時、女性に必要な備え

2016/7/4

被災地で手作りジュースをつくる防災ガールのメンバー(熊本県益城町)
 熊本地震から間もなく3カ月。地震や大雨などの大災害に遭ったときに備え、日ごろから対策は欠かせない。特に女性は避難所で暮らすことになった場合、人には言いづらい悩みや困り事が生じがち。生理用品がない、下着を洗えない、普段の肌の手入れができないなどだ。普段から何を意識して備えればよいか。

 「集団生活になると女性は困ることが多い。熊本の地震直後も、生理中の女性はトイレが使えるか気になり大変そうだった。下着もこまめに洗えない」。4月14日に震度7の地震に見舞われた熊本県益城町。災害対策本部のメンバーである危機管理アドバイザー、国崎信江さんは話す。

 いざ被災し水などが使えなくなると、入浴もままならなくなる。「女性の肌は柔らかく弱いので荒れがち。清潔を保てない不快感がストレスになり、被災時のイライラやつらさも増す」。若い女性の視点から防災情報を発信する一般社団法人「防災ガール」(横浜市)の代表理事、田中美咲さんは指摘する。

 そこで田中さんは「防災ポーチ」を持ち歩くことを提唱する。中身は生理用品やハンドクリーム、体を拭くウエットティッシュなどだ。他にヘアゴムは止血にも使え、ワセリンは全身の乾燥防止に使える。冷え性の人はカイロ、コンタクトレンズをつける人は替えのレンズや眼鏡も加えたい。

 避難所では食中毒防止のため、生ものが出ることは少ない。支給されるのはおにぎりやパンなどが大半で、ビタミンが不足して肌荒れや便秘の原因になりがちだ。危機管理アドバイザーの国崎さんによると、実際に熊本地震の被災地では「食事の偏りから体調を崩している人が多い。女性ではめまいや貧血、足がつるなどの症状が起きている」という。

 防災ガールのメンバーらは5月、熊本の2カ所の避難所を訪れ、生の野菜や果物を使った手作りジュースを振る舞った。ただ支援の手が届くとは限らない。ビタミン剤などを用意しておくと安心できる。

 非常時には肌や髪の手入れもままならない。資生堂の美容技術専門学校講師の生駒広子さんによれば「1枚のウエットシートで全身と頭皮のケアができ、臭いも抑えられる」という。

 まずは片面で顔から首、脇の下など臭いが気になる部分を拭く。「上から下」が基本だ。足まで拭いたらシートを裏返し、指先に巻き付けて頭皮を拭く。

 女性のための防災対策は理美容だけにとどまらない。身を守る備えも重要だ。防災アドバイザーの岡部梨恵子さんは「被災生活が長期化すると、ストレスが増えて暴力的になり、性犯罪やドメスティックバイオレンス(DV)が増える傾向がある」と言う。

 市民団体「東日本大震災女性支援ネットワーク」(東京・文京)の報告書によると、2011年の東日本大震災時、避難所では「夜になると男の人が毛布の中に入ってくる」(20代女性)、「授乳を男性にじっと見られる」(30代女性)などの報告が寄せられた。「避難所で大人の男性からキスしてと言われ、トイレまでついてきた」という少女の報告もあった。

 熊本地震では避難所に性犯罪への注意を促すポスターが掲出された。「避難所・避難先では女性や子どもを狙った性被害・性暴力、DVなどが増加します」との一文と県警や女性相談センターの電話番号を入れた。作ったのは市の「男女共同参画センターはあもにい」。地震後、全国の男女共同参画センターなどから助言の電話があったことが作成のきっかけになった。

 「必ず複数で行動すること、防犯ブザーを持ち歩くこと」と危機管理アドバイザーの国崎さんは言う。防災アドバイザーの岡部さんも「防災服はピンクや赤色を選ばない」「髪はまとめて帽子に入れて」と訴える。一目で女性とわかるのはリスクが高いためだ。

 加えて「非常用に用意する下着はボクサーショーツのタイプで」と岡部さん。色も黒や紺などにして、女性用と悟られないようにするとよいという。

 海外の災害支援では「女性が下着などを洗濯できる専用スペースを設ける」「性暴力を防止するために決然と行動する」などの項目から成る国際基準「スフィア基準」が参照される。

 だが「日本では女性のための防災意識は低い」と、阪神大震災で被災女性を支援したウィメンズネット・こうべ(神戸市)の正井礼子代表理事は指摘する。「地域の防災会議や自治会に女性が参加し、議論して意見を反映させることが重要」と話す。

(関優子)

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